断章436

 日本共産党は、骨の髄(徹底して、身体の最も中心のところ)まで“スターリン主義”の政党である。スターリン主義の核心は、レーニンが唾をつけ、スターリンが乗っかり、ソ連の赤色特権党官僚階級が抱きしめた、ソ連社会主義国という“ドグマ”である。

 マルクスの思想(理論) ―― ここでは、マルクスの思想(理論)が共産主義=地上の楽園というユートピア思想であることは、脇に置く ―― からすれば、社会主義国という、まるで半神半獣(上半身は神だが、下半身はイチモツ丸出しのケダモノ)のような存在を認めることは、ありえないことだ。

 しかし、ロシア共産党プロパガンダは世界を席巻し、数多のインテリを魅了した。世界中に続々と生まれた共産党は、ロシア共産党の権威とプロパガンダ(とカネ)に従った。

 

 日本共産党は、スターリン主義の党として、ソ連や中国や「北朝鮮」が“社会主義国”であるという“ドグマ”を振り撒きつづけた。しかし、それらの国々の実情(問題群)が広く世界に知られるようになったとき、“ドグマ”を固守し、ソ連・中国などの“社会主義国”を弁護するために日本共産党が持ち出したのが、あの「社会主義生成期論(しゃかいしゅぎせいせいきろん)」という“珍説”である。

 “社会主義国”にはいろいろ問題・限界があるけれども、世界史的に見ればまだ生成期にある社会主義ゆえの問題・限界だから、それをもって社会主義を否定してはならない。また、毛 沢東「文化大革命」後の中国の経済発展に見られるように、社会主義には大きな“復元力”が備わっている、という“珍説”である(1977年10月の日本共産党第14回大会で定式化されたらしい)。

 ぶっちゃけ。“社会主義国”には、自由がなく貧しくても、「粛清」「強制収容所」「他国への侵攻」をしても、まだ子どもなんだから大目に見てやろうよ、という理屈である。

 

 これは噴飯ものの“珍説”だった。というのは、この論理は、そのまま資本主義の“弁護論”に転用できるものだったからである。

 すなわち、資本主義にはいろいろ問題・限界があるけれども、人類史700万年から見ればまだ生まれてから200年ほどの赤ちゃんだから守ってやろうよ。数々の恐慌や戦争をも乗り越えて発展してきた“復元力”もあるよね、と言えるのである。

 

 旧・ソ連の崩壊後、欧米の共産党の多くは、スターリン主義から社会民主主義などに乗り替えた。しかし、日本共産党は、既得権益層がはびこる日本の歪んだ現状と、まるで鎖国下のようなガラパゴス化した思想・言論界とに助けられて、スターリン主義政党として存続している。