断章365

 マルクスの理論(思想)「体系」は、戦艦ヤマトのように無敵に見えたし、旧・ソ連の崩壊までは、実際にある程度はそうであった。

 だが今、〈救国救民〉を志す人、「わたしたちの国を守り前進させるのは、わたしたちの聖なる義務であり、名誉だ!」という〈義〉に立つ人は、マルクスからポル・ポトたちに至る共産主義者のすべての理論と実践が、人類にとって無益なもの ―― 無益というよりもっと悪いものであったことを、重ねて主張しなければならない。

 というのは、私有財産制度に根ざす疎外がなくなれば地上の楽園がこの世に現われる、というマルクス理論(思想)のエッセンスは幻にすぎないことが、またもや忘れられているからである。

 

 人間とは、歴史を忘れ飽くなき欲望をもつ生き物である。だから、ひとたび、ふたたび、「大きな獣を追い払っても、そいつは駆け足で戻ってくる」。大きな獣とは、赤色全体主義であり、黒色全体主義であり、カーキ軍事独裁(例えば、今のビルマ軍政)である。

 大きな犠牲をはらって大きな獣を追い払ったはずなのに、数十年経つと(ひどいのは数年内に)、追い払ったはずの暴政・悪政がよみがえり、権勢享楽のおごりが復活する(注:革命後のスターリンや毛 沢東たちの暮らしぶりを見よ!)。

 

 「今日の政治にかかわる人々の多くは、歴史的文脈の視点を欠き、いま直面している問題が過去に起きた問題といかによく似ているかを理解していない。人類史を通じて、人の本性は変わっていない。〈再世襲化〉、すなわち支配階級が政治制度を私物化し自分の目的のために使おうとするような慣行は、中国の後漢時代や17世紀フランスと同じように、現代でも普通に行われている」と、フランシス・フクヤマは言う。

 

 スターリンの「大粛清」、毛 沢東の「大躍進」「文化大革命」、ポル・ポトの「キリングフィールド」、金 正日の「矯正収容所」、連合赤軍の「同志殺し」などの歴史の血の教訓は、その理論と実践の完全な破産というエビデンス(注:「証拠」「裏付け」「科学的根拠」という意味)を示している。しかし、「左翼」インテリは彼らのイデオロギーである共産主義マルクス主義)にしがみついている。

 

 「共産主義運動は、ユートピアの夢と権力欲の結合からくる魅力によって、人々を迷わせ誘い込む。コミュニズムの主たる手段は、思想的浸透と政治的術策による、陰謀的活動にあり、これによってその目的をはたそうとする」(ニーバー『共産主義との対決』解説から)。

 共産主義とは、赤色全体主義である。「このことは歴史の通観により明らかではないか?! わたしたちは、この危険な敵に対して、勇気をもたねばならぬばかりか、細心の注意もはらわなければならない」(同上)。

断章364

 かつての原始共産制社会では、人間は平和に協同して働き、しかも自然と調和して共に幸せに暮らしていた。しかし、私有財産制の発生にともなって「持てる者」と「持たざる者」に分裂し、「資本主義」の成立は、「文明化作用」を伴いつつも、やがて「窮乏化法則」の貫徹を通じて、火宅無常の悲惨な暮らしを勤労大衆にもたらす。

 「前衛党」は、労働者階級(プロレタリアート)を指導して「プロレタリア社会主義革命」に勝利し、「プロレタリアート独裁」を樹立して、国家が死滅し「資本主義」が止揚され私有財産制が廃絶された、より豊かな共同体としての共産主義社会(地上の楽園)の実現に向かって前進する。このことは、ユートピアやビジョンではなくて、歴史的法則としての必然である。ロシア革命や中国革命の成功が、そのことを証明している。

 

 ソ同盟(ロシア)共産党中国共産党、もちろん日本共産党も、「マルクス正統」を自任する者たちは自信満々そう語っていた。共産党という虎の威を借りて、あるいは流行りの“思想”の尻馬に乗って、進歩的「知識人」たちもまた、粗野な「民族共産主義」でしかない「社会主義国家」を賛美していた。旧・ソ連や中国や日本共産党を批判したり疑問を投げかける人を、「反共・反社会主義の歴史に逆らう反動だ」と、ののしっていたのである。

 

 しかし、インテリから「反知性主義」の愚衆扱いされる庶民は、シベリア抑留(Wikipedia第二次世界大戦終戦後、武装解除され投降した日本軍捕虜らが、ソ連邦によって主にシベリアなどへ労働力として移送隔離され、長期にわたる抑留生活と奴隷的強制労働により多数の人的被害を生じたことに対する、日本側の呼称。ソ連によって戦後に抑留された日本人は約57万5千人に上る)や、旧・ソ連、中国の連続した大気圏内核実験の経験などから、冷めた目で旧・ソ連、中国、それらを賛美する日本共産党を見ていた。生活者としての肌感覚で、「共産主義」とは“新しい言葉で語られる古い夢”にすぎない、と知っていたのである。

 例えば、美々しく宣伝された中国の「人民公社」である。「人民公社には、毛沢東の革命家としての“理想”を見ることもできます。それを象徴しているのが、人民公社に設置された公共食堂です。ここでは人々は無償で食事をすることができました。土地や生産手段を共有し、住居や食事などが無償で提供される共産社会の理想を目指したのです」(楊 海英)。

 古代ギリシアプラトン(BC.427~BC.347)の提案は、こうだった。

 「言論による理想国家の建設、それには、⑴ 妻子の共有、⑵ 共同食事を含む公教育、⑶ 戦時・平時を問わず男女の能力のみによる公平な役割分担、⑷ 財産の共有、という要件が含まれる」(『国家』プラトン)。

 きれいは汚い。汚いはきれい。インテリは愚か。愚衆はかしこい。

断章363

 マルクスの理論(思想)は、「体系」の名にふさわしく、A~Zの全体で構成された「理論体系」である。ところが、昨今、斉藤某や白井某といった「左翼」インテリが、A~Zのうちの一部分(たとえばECOとかAHO)をご都合主義的に抜き出して強調した“著作”を売っている。

 「左翼」インテリや自称「知識人」リベラルたちには、受けが良いらしい。彼らも、スターリン主義的偏向に汚染された「決まり文句」だらけの、新味のない古臭いものには、うんざりしているからだ。スターリン主義的偏向より空想的ユートピア主義的偏向の方が、新鮮でオシャレというわけだ。

 40年以上昔、マルクスがロシアの女性革命家ヴェーラ・ザスーリチと交わした「書簡」がひとしきり話題になったことがあった。あれなんかもマルクスのA~Zにいたる「体系」の一部分を切り取って、“話題”にしたものだった(理論的な成果はゼロ)。

 

 老人特有の「繰り言」みたいで気が進まないが、何度でも言う必要があるから言っておく。マルクス理論(思想)、つまり史的唯物論をAとして始まる「体系」的マルクス理論のXYZ(注:『シティハンター』冴羽獠を呼ぶコールサインもXYZ)、すなわちマルクスの理論(思想)「体系」の結語であり核心であるのは、「プロレタリア社会主義革命」「プロレタリアート独裁」「共産主義」である。

 もちろん、“マルクス読み”を仕事にする斉藤某や白井某が、こうしたことを知らぬはずがない。だが、斉藤某や白井某などのずるがしこいお坊ちゃんたちは、姑息にもこのことに口を閉ざしている。なぜなら、そんなファクトを書けば、“ぶち壊し”になって、たちまち“著作”の売れ行きにも悪影響を及ぼすからである。

断章362

 「1949年10月1日、秋晴れの天安門広場には新国旗が打ち振られ、民衆の歓声と拍手で沸き立った。中華人民共和国、中央人民政府が誕生したのである。この新しい国家は自由主義諸国並みのブルジョワ憲法を掲げた、共産党と民主諸勢力の連合政権(引用者注:民主連合政権ですぞ!)であった。しかし、多元的政治権力並存の期待は次々と裏切られていく。中国社会主義は出発時点ですでに社会主義そのものを変質させる体質を内包し、文化大革命の悲劇へ突き進んだのである」。

 2000年に刊行された中公新書に『中国革命の夢が潰(つい)えたとき ― 毛沢東に裏切られた人々』という本がある(わたしは読んでいない)。上記は、その紹介文である。

 

 ちなみに、上記書籍発刊から21年後の2021年4月のアマゾンレビューにこうある。

 「『あとがきに代えて』にある一文、『そうそう香港に行く機会があったら、ぜひ民主派の今後に注目してくれ。共産体制に民主派が吞み込まれるとどうなるか、しっかり監視してくれたまえ』が、20年の時を超えて、現実のものになる。不気味な予言だったと言えよう」。

 

 中国民主諸勢力は、まんまと毛沢東中国共産党に裏切られたが、日本インテリの多くは、毛沢東中国共産党の“俗流マルクス主義”と“人民(農民)戦争論”の厚化粧に惚れこみ、自らすすんで沼に落ちた。

 情けない日本インテリたちだが、ペルーの「センデロ・ルミノソ」(1969年に設立されたペルーの体制転覆を目指す毛沢東主義武装組織で、正式名称は「ペルー共産党」である。「農村が都市を包囲する」という毛沢東思想を掲げて活動。その活動や統治の冷酷さから「南米のポル・ポトクメール・ルージュ)」とも呼ばれるほど恐れられた。2021年9月に服役中だった最高指導者のアビマエル・グスマンが死去)よりは、幾分ましだろうか。

 

 中国には、「易姓革命」論がある。「中国数千年の歴史のなかで繰り返されてきた王朝交替のこと。王朝にはそれぞれ一家の姓があるから、王朝が変われば姓も易(か)わる(易姓)。徳を失って天から見放された前王朝を廃することは、天の命を革(あらた)める行為である(革命)。したがって、このような新王朝を創始する事業は『易姓革命』とよばれた」(コトバンクから)。

 平瀬 己之吉によれば、王朝交代のサイクルとは・・・、

 第一段階「はじめに王朝交代の大戦争がある。戦乱によって農業が荒廃する」。

 第二段階「そこで、新王朝の成立早々には、政権維持のための慈恵政策として、租税の減免がおこなわれるとともに、動乱で荒廃した農業生産力の昂揚が図られる。これで農業危機は一応とにもかくにも救われる」。

 第三段階「しかし、王朝が隆盛期に達する頃には、国家経費(王室の奢侈的消費、天災復興費、防衛または侵略のための対外戦争費)の増大がようやく不可避となる。増税手段がとられる。天災が頻発する。農民の窮乏が増大し、農業危機が切迫する」。

 第四段階「ついで国内が動揺し、ある時は政権争奪のための宮廷闘争が、ある時は農民のバラバラな、効果のない反租税闘争が散発する。王朝の基礎がゆるぎはじめる。かくて、政権維持のために対人民慈恵政策を最も必要とする危機の瞬間に、租税が最高に引き上げられる。大規模の暴動がおこり、これを物質的力として利用する政権争奪戦が爆発する。王朝が倒れ、新王朝に替わる」。そしてまた、再び先の循環が反復されるそうである。

 

 歴史科学の目をもってすれば、毛沢東中国共産党もまた、このサイクルの内にあると見える。

 「中国・革命戦争(農民戦争)が勝利して、土地の平均主義的分配が行われた。約7億華畝の土地が3億人の農民に分配された。これは当初、共産党に対する農民の支持を強めた。しかし分配の結果は、農民1人当たりの耕地は東北部で3華畝(約2反)、南部の水田地帯では1華畝(約0.6反)にすぎず、中・貧農の多くは暮らしに事欠き、自分の土地をまた手放しはじめたのだった。この農村の危機、農民の貧窮化を解決し、同時に工業化を推進しようとして毛沢東中国共産党が発動したのが『大躍進』だったのである」(出所不詳)。

 それは、完全な失敗に終わり、毛 沢東派と劉 少奇派との暗闘(宮廷闘争)は、次には大衆を動員した「文化大革命」という政権争奪戦になったのである。

断章361

 「東西南北およびその中心も一切を党が支配する」と言う習 近平 ―― 中華人民共和国の第5代最高指導者。第5代党中央委員会総書記、第6代党中央軍事委員会主席、第4代国家軍事委員会主席、第7代国家主席 ―― と中国共産党が掲げる看板、すなわち「毛沢東思想」や「社会主義市場経済」なるものは、羊頭狗肉(注:良品に見せかけたり、宣伝は立派だが、実際には粗悪な品を売るたとえ。 羊の頭を看板にかけながら、実際は犬の肉を売ること)である。それらは、“スターリン主義”という俗流マルクス主義の中華的変異種(なれのはて)である。言葉や宣伝を信じないで、現実を見よ。

 

 すると、「大手国有企業『中国華融資産管理』の頼小民・元会長が、収賄汚職・重婚の罪で起訴され、その腐敗ぶりが中国で大きな衝撃を与えている。(中略)

 頼被告は今年で58歳。中国・天津市第2中級人民法院(地裁)で11日に開かれた初公判によると、頼被告は2008年から2018年にかけて、中国の金融当局・中国銀行業監督管理委員会弁公庁主任や中国華融資産管理の会長兼共産党書記などを歴任。その地位や職権を利用して、企業や個人から不正に金品を受け取ったという。頼被告は公判で罪を認め、判決は後日に言い渡される。

 頼被告の自宅からは2億7000万元(約41億5441万円)の現金がロッカーなどから見つかった。重さにすると3トンに上る。当局の摘発を避けるための資金で、これも贈賄側に要求して手にした金だった。頼被告はこの場所を暗号で『スーパーマーケット』と呼んでいた。自宅からはさらに、数台の高級外車や高級腕時計、絵画、黄金なども見つかった。

 『中国華融資産管理』は不良債権を処理することが主業務だが、頼被告は証券、信託、投資、銀行、先物取引などの子会社を次々と設立し、業務を拡大。会社の幹部は『元会長はとにかく短期の業績を求め続け、3年後や5年後のリスクもお構いなしだった。実際、すぐに資金が焦げ付き始め、不良債権を処理する会社が不良債権を生み出す事態となった。それでも元会長は追加投資をしてその場しのぎをしようとした』と証言する。

 中国メディアによると、頼被告は広東省の不動産開発プロジェクトで、120件の住宅物件のうち100件余りを不正に取得し、100人の愛人を住まわせていたという。かつての中国王朝の皇帝が妃(きさき)や女官を住まわせていた『後宮』のような状態だった。さらにこの愛人たちを、31社に膨れ上がった子会社の幹部ポストに就任させていた。また、自分の出身地の江西省瑞金市出身者を多く登用し、中国華融の幹部は『経営陣から食堂のスタッフまで元会長の同郷人ばかりだった』と証言している。(中略)

 頼被告の事件は、中国でたびたび起きる汚職の典型的要素が詰め込まれている。まずは『権力の一極集中』。頼被告は国営中国中央テレビCCTV)の反腐敗キャンペーン番組で、『私は会社の会長、法人代表、党書記を務めていた。(社内の監査部門の)規律検査委員会書記は私の部下にあたる。だから、誰も私を監督することはできなかった』と自ら語っている。

 さらに、『権色交易(権力と色欲の取引)』の問題。企業側が権力者に女性をあてがい、特別な便宜を図ってもらおうとする行為が今も横行している。汚職で逮捕された役人のうち95%は愛人がいたという調査もある。権力者が自ら愛人を囲う場合も多いが、企業側が『取引』として女性を提供するケースも多い。また、自分の身内として周囲を同郷人で固め、それ以外の人間を排除し、異論を封じ込める手法も目立つ」(2020/08/16 東方新報/AFPBB News)ことがわかる。

 

 しかも、紅色全体主義においては、こうした不正の摘発も、習 近平派に対抗する党内反対派を圧迫し弱体化させる手段のひとつなのである。それでも暗闘は続く。

 「中国の温家宝前首相が新聞に寄稿した亡母の追悼文がネット上で閲覧しづらくなり、『現指導部を批判する内容のため制限を受けている』との見方が出ている。首相経験者に対する言論統制の可能性があり話題となっている。

 温氏はこの3~4月、マカオ紙に4回に分けて寄稿。この中で『中国は公平で正義に満ち、自由の気質がなければならない』と訴えた。また、毛沢東が発動し多くの人が迫害を受けた文化大革命で、父が激しい暴力を受けたことなども記した」(2021/04/21 時事通信)。

断章360

 日本の知識人たち、とりわけ「左翼」知識人は、日本(自国)をおとしめるための材料として、「学問の自由」を声高に叫ぶ。しかし、忘れてならないことは、ダブルスタンダードの彼らは旧・共産圏諸国の「学問の自由」の圧殺には口を閉ざし続けていたことである。さて、引き続きランダムに、中国の今を記録しておこう。

 

 「中国共産党はこのほど大学の研究や教育の場で党の社会主義思想や歴史観を徹底し、教員や学生の思想監視を強化する規則を通知した。一党支配の下でこれまでも制約を受けていた『学問の自由』は監視強化により完全に否定された形だ。

 規則は高等教育機関における『党組織工作条例』の改定版で、4月16日に通知された。改定前も『毛沢東思想』や『愛国主義』などの教育をすると規定していたが、改定版は思想教育を『最優先する』と強調し『習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想』を徹底するよう要求。巡視活動を定期的に実施し、不十分な場合は警告処分などもあり得るとしている」(2021/05/16 共同通信)。

 

 「中国の習 近平指導部が格差是正のためとして掲げる『共同富裕』の理念に対し、北京大学の教授が異議を唱える文章をインターネットに投稿しました。教授は『政府の介入に依存すれば、共同貧困につながる』としています。

 香港の『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』紙によりますと、文章を投稿したのは北京大学の張維迎教授です。張氏は『市場の力を信頼せず政府の介入に依存すれば、共同貧困につながるだろう』と論じる内容を、1日、学術組織『経済50人論壇』のホームページに公開しました。

 習 近平指導部が今年、格差の是正を進める理念『共同富裕』を繰り返し強調する中、当局は独占禁止法違反で大手IT企業を摘発したり、芸能人を脱税で摘発したりするなどしていますが、張氏は『富裕層や起業家を標的にすれば、雇用や消費が打撃を受ける』とも指摘したということです。

 現在、文章はホームページ上から削除されている上、中国の通信アプリ『We Chat』では、張氏の文章を送ることもできなくなっているということです」(2021/09/06 TBS NEWS)。

 

 「中国でメディアを管理する国家ラジオテレビ総局は2日、『低俗で下品な』娯楽作品を排除するとして、アイドル育成番組などの放送を禁じる通知を出した。『道徳の欠落』した芸能人を取り締まり、共産党や国を愛する人物を重視するよう指示。業界への規制や思想統制を強める方針を示している。

 通知は全国の地方当局に向けて出された。オーディション番組の投票システムを厳しく管理し、人気ランキングなどでファンの消費をあおる行為を禁じるよう要求。番組出演者を選ぶ際は『政治素養』をチェックし、党や国から『心が離れている』人物は起用しないよう指示した」(2021/09/02 共同通信)。

 

 「中国本土では今後1年間に社債絡みの支払い約1兆3000億ドル(約141兆円)相当を控えている。クレジット市場は世界的なブームに沸くが、際立つ多さだ。

 この額は米企業を30%上回り、欧州全体と比べると63%も多い。しかも中国企業は本土債が記録的ペースでデフォルト(債務不履行)に陥っている時期に支払いを迫られることになる。

 こうした状況を背景に、投資家は世界2位の規模を持つ中国の債券市場が再び混乱に見舞われることを覚悟している。中国当局も、デフォルト容認でモラルハザード(倫理観の欠如)を減らしたい一方で長期資金の調達源として本土債市場の信頼性を高めようとしており、かじ取りが難しい。

 社債の平均償還期間は米国と欧州、日本では長くなっているが、中国では短期化。デフォルトが投資家にリスク軽減を促しているためだ。格付け会社フィッチ・レーティングスによると、今年1-3月に発行された中国本土債の平均年限は3.02年。昨年は年間ベースで3.22年だった。このままなら、同社が2016年にデータ集計を開始してから最短となる。

 ING銀行の大中華圏担当チーフエコノミスト、彭藹嬈(アイリス・パン)氏は『信用リスクが高まるにつれ、誰もが償還期間の短い証券だけに投資することでエクスポージャーを制限しようとしている』と指摘。 『デフォルト増加につれ、長めの社債の借り入れコストが一段と上がっており、発行体も償還までが短い債券を選好している』と述べた。

 中国本土債のデフォルトは、2016年には取るに足らない水準だったが、その後は4年連続で1000億元(約1兆6900億円)を突破。今年は先月時点ですでに1000億元に達した」

(2021/05/27 ブルームバーグ)。

 

 「中国共産党は2021年5月31日の政治局会議で、1組の夫婦に3人目の出産を認める方針を示した。2020年の出生数は1949年の中国建国後最大の落ち込みとなった。中国にとって巨大な人口は国際的な影響力の源泉だ。少子高齢化による経済成長鈍化などへの危機感は強く、産児制限の緩和に動く。中国は1980年ごろから夫婦に1人の出産しか認めない一人っ子政策を始めた。強制的な出産抑制で出生率は下がり、2016年にすべての夫婦に2人目の出産を認めたが、産児制限をさらに緩める。

 2020年の国勢調査によると、14億人超の人口はなお増加したが、減少への転換は間近だ。中国共産党系メディアの環球時報は人口統計学者の見方として『2022年にも総人口は減少に転じる』と伝えた。従来の見通しより5年ほど前倒しになる可能性がある。

 少子高齢化は急速に進んでいる。65歳以上の高齢者は20年までの10年間で6割増えた。人口に占める割合も13.5%に達し、国際基準で同14%超と定める『高齢社会』に間もなく突入する。対照的に、働き手や子どもの数は減少に歯止めがかかっていない。生産年齢人口は2013年のピークから4%落ち込んだ。1人の高齢者を支える現役世代の数は減り続ける。(中略)

 2016年の二人っ子政策は効果が長続きしなかった。出生数は17年以降4年連続で減った。とくに20年は1200万人と前年比18%の大幅減だった。人数も多数の餓死者を出した大躍進政策の影響が残っていた1961年以来の少なさとなった。

子育て支援策として、都市部で不足する預かり保育のサービスを充実させるほか、高騰する教育コストの削減にも取り組む。女性が出産しやすい環境をつくるため、出産休暇や関連の保険制度を整備するとした。

 中国では婚姻の減少も少子化に拍車をかけてきた。2020年まで7年連続で減少した。政治局会議は『結婚適齢期の青年が持つ結婚観、恋愛観、家庭観に対する教育指導を強める』と強調した。過剰な結納(ゆいのう)など行き過ぎた社会風習を是正するとした」(2021/05/31 日本経済新聞)。

 

 「東西南北およびその中心も一切を党が支配する」。これは、中国共産党・習 近平が好きなスローガンの一つだ。伝統的マルクス主義や「中国の特色ある社会主義」を常に強調し、一切を支配する中国共産党は、紅色全体主義の党である。

断章359

 700万年~600万年前という遙かな太古から、21世紀の世界に帰還中であるが、旅に寄り道はつきものである。ということで、中国に寄り道。

 共産党は赤色(紅色)全体主義であり、ナチスは黒色全体主義で、かつてのスペイン・フランコやチリ・ピノチェトなどはカーキ軍事独裁(注:カーキとは「土埃」を意味する言葉で、主として軍服に用いられる淡い茶系色)だと、わたしは考えている。もっとも悪質なのは、共産主義を看板にしている(そのため、世間知らずの「左翼」学者や自称「知識人」リベラルが同伴する)、共産党である。とりわけ悪辣(注:自分の目的を達するためには、どんなひどい事も平気でする、たちが悪い仕方・性質のこと)なのは、朝鮮労働党である。

 この朝鮮労働党の頼れる友党が、中国共産党である。

 

 おなじみのE・トッドの談話から。

 「中国共産党の成功には多くの理由があり、共産党の正統性というのが、第2次世界大戦後の中国国家の独立と関係していることなどが挙げられる。今日まで共産党という名称は変わっていないものの、その意味は変遷してきた。そもそも共産党は、中国の家族文化そして社会文化に内包されている平等という価値観に基づいていた。やがて官僚制度的な側面を強め、指導者グループを選択するマシンとなっていった。今日では共産党に入党するというのは、革命的な思想からではなく、あくまで社会階層を上り詰めるためである。

 このような意味において、今の中国における共産党の根本的な価値、またその唯一の正統性はナショナリズムだ。中国共産党は中国ナショナリズム党ともいえる。

 家族構造の専門家として、これまで中国の民主化をまったく信じてこなかった。中国の家族構造は、強い権威に基づいた共同体家族構造であり、同時に強い平等の価値観も持っている。同じ家族構造カテゴリーに属するほかの国などと比べても、中国はその特徴を強く備えている。また、権威と平等の価値観は共産主義の基本的な価値観でもある。そのため、中国で共産主義が成功した。この家族構造があるからこそ、中国では権威主義と、『ネオ・全体主義』と私が呼ぶものが生き延びたと考えられる。

 中国が世界を支配するというのはありえないと思っている。また、中国の高齢化はさらに深刻化していくだとか、それに伴って生産年齢人口が減少する、成長にもブレーキがかかる、などというのは一般論としては簡単に言える。

 しかしそれを超えたところでの予見となると、中国にはまだまだ不確実な側面が多すぎる。中国が直面している、少子高齢化という人口危機が、いったいどれほど深刻なものになるのかはまだわからないというのが正直なところだ。日本やドイツなどが人口減少という危機に直面したとき、日本は生産の一部を中国などに移したり、ドイツは移民を受け入れたりしてきた。しかし中国のとてつもない人口規模を踏まえると、同じような解決策は通用しない。

 不確実にしている要素として、中国の社会システムの硬直化、権威主義的な側面の台頭、そしてある種の愚かさが挙げられる。あるイギリスの経済学者がロシア(引用者注:旧ソ連)の社会システムについて、『構造的に導き出される愚かさ』と表現したことがある。中国を脅かすものは人口の落ち込みに加え、全体主義的で権威主義的な官僚システムという構造自体がもたらす、規模の大きな愚かさでもある。

 しかし、この点を数値化するのは非常に難しい。だから今は謙虚な態度ではっきりと、『中国の将来についてはわからない』と言うべきだと思っている」(2021/07/19 東洋経済オンライン)。

 

 以下、“中国社会主義市場経済”なるものの本質の一端をうかがわせるレポートを無断転載(おもさげながんす)。

 「2021年7月19日、香港に隣接する中国広東省経済特区・深圳で、『中国で初めて』というケースが起こった。35歳の梁氏が、裁判所から『個人破産申請裁定書』を受け取ったのだ。今年3月1日、中国で初めて深圳で、『深圳経済特区個人破産条例』が施行された。そこにはこう記されている。

 <深圳経済特区に居住し、深圳の社会保険に続けて満3年加入している市民で、経営や生活上の返済能力が喪失した者、もしくは資金不足ですべてを返済できなくなった者は、人民法院(裁判所)に破産を申請することができる。それらは破産清算、再編、和解の申請を含む>

 この新たな規定が適用され、梁氏は晴れて、中国の『個人破産者第1号』に認定されたのだ。梁氏は2018年、ブルートゥース・イヤホン関連の会社を興した。だが昨年からの新型コロナウイルスの影響もあって、銀行への債務がかさみ、返済不能に陥った。負債総額は75万元(約1275万円)。銀行の預金は、3万6120元(約61万4000円)しか残っていない。あとは4719元(約8万円)の住宅積立金だ。

 梁氏は現在、ある会社でエンジニアとして働いていて、毎月の収入は、約2万元(約34万円)。不動産も車も所有していない。梁氏は、3月から『深圳経済特区個人破産条例』が施行されたことを知った。そこで3月10日、深圳市中級人民法院に出向いて、破産申請を行ったというわけだ。

 結局、裁判所の裁定はこうだ。梁氏と夫人は、毎月の基本的な生活に必要な7700元(約13万1000円)を除いて、収入をすべて借金の元本返済にあて、3年以内に完済すること。その代わり、あらゆる利息は免除する。梁氏は地元記者に、こう述べた。『破産申請前、多い時で、1日7~8時間も債権者から電話がかかってきていた。そのため精神的なプレッシャーは、尋常でないものがあった。だがいまは、きちんと働いて、借金を返していくことだけを考えればよくなった』。

 この条例の制定は、『4中全会』(2019年10月28日~31日に開かれた中国共産党第19期中央委員会第4回全体会議)で、「社会主義市場経済体制を速やかに改善し、健全な破産制度を作る」とした方針に沿ったものだ。すでに同様の法律がある台湾と香港を参考にしたと思われる。

 昨日から中国では、この『梁氏のケース』を大々的に報じている。まるで、『困った人は梁氏のように破産申請をしましょう』と呼びかけているかのようだ。それだけ破産者が急増中だということだ。そもそも破産条例を制定したのは、『4中全会』も示唆しているように、中国では不健全なことが続発しているからだ。

 例えば、私が北京に住んでいた10年前にも、事実上の破産に陥る経営者はゴマンといた。その場合、よくあるケースは、ある日忽然と消える。いわゆる夜逃げである。その際、借りている部屋の台所用具や便器、シャワー器具まで、カネになりそうなものはすべて取り外して持ち去るため、家主たちは頭を悩ませていた。彼らはどこへ逃げるかと言えば、大まかに分けて二つである。一つは自分の生まれ育った故郷の村。もう一つは、他の大都市である。

 中国は日本の26倍もの国土があるので、北京で夜逃げした人が、四川省成都で知らぬ顔して生きていくなどということが、普通に起こっていた。ということは、その逆もある。北京へ突然やって来た中国人の中には、『この人何だか訳ありっぽいな』と思う人士もいた。少し親しくなると、自分の『暗い過去』をさりげなく語ってくれたりもした。

 だがあれから10年経った現在は、アリババとテンセントのAIシステムによって『中国は一つ』になったので、中国国内にもはや逃げ場所はなくなった。中国は『夜逃げできない社会』になったのだ。

 そこで最近増えているのが、自殺である。昔は『中国人は自殺しない』という俗説があったが、いまや自殺大国だ。少し古いが、2007年に北京心理危機研究関与センターが出した『わが国の自殺状況及びその対策』という報告書によれば、中国では年間200万人が自殺未遂を起こし、28万7000人が自殺によって死亡しているという。自殺は中国で死因の第5位に数えられ、15歳~34歳までの死因ではトップだ。現在では、統計は発表していないが、ものすごい数の自殺者を出している気がする。私の北京の知人の中にも、過去5年で自殺した経営者が2人いる。最悪なのは、事業が破綻した経営者が、犯罪に走るケースである。横領、詐欺の類から傷害、殺人まで。これも発表された統計はないが、かなりの数に上っているものと思われる。

 李克強首相は一時期、『中国では日々、1万6000社もの会社が生まれている』と誇り、安倍晋三首相にも自慢げにこの話を吹聴していた。中国の市場経済は活性化していると言いたいわけだ。だが私は、『その1万6000社は、その後どうなったの?』と突っ込みたくなったものだ。おそらくは、死屍累々であろう。中国で起業数が一番多いのは深圳で、2019年には50万5127社も生まれた(個人事業主登録も含む)。私は2018年に深圳で、一攫千金を求めて蝟集(いしゅう)する中国の若き起業家の卵たちの実態を取材したが、そこではおそらく世界で最も熾烈な弱肉強食の戦いが繰り広げられていた。3カ月経っても芽が出ない者は、容赦なく切り捨てられていくのだ。

 ある深圳の大物投資家は、『成功者は1万人に一人』と言っていた。『でもその一人が従業員1万人の会社を作れば全員救われる』という論理なのだそうだ。今回の破産条例の制定は、こうした『敗残者』たちに初めて、救いの手を差し伸べたものだ。だが、今月大学を卒業した中国の若者は、909万人! 昨年からのコロナ禍の影響が祟って、就職率は最悪だ。就職できないから親のスネを齧(かじ)って起業するという若者も多く、そのうち少なからずが『敗残者』となっていく。昨今話題の『寝そべり族』などは可愛いもので、その裏には多くの『破産族』が存在しているのである」(2021/07/21 YAHOOニュース・近藤 大介)。