断章531

 日本共産党とは何か? ふたりの人生から見えてくるもの(その1)。

 ひとり目は、鈴木 元(すずき はじめ)である。

 Wikipediaによれば、鈴木 元とは、「日本のジャーナリスト。元学校法人立命館職員、元日本共産党京都府委常任委員、かもがわ出版取締役。78歳である。1962年に日本共産党に入党。立命館大学一部学生党委員長に就任。大学卒業後は日本共産党京都府委員会の京都北地区委員会・府委員会常任委員を経て、52歳で学校法人立命館に転職し総長理事長室室長に就任する(2009年3月末まで)。……2010年3月末で立命館を定年退職。その後はかもがわ出版取締役、中国の同済大学アジア太平洋研究センター顧問教授、国際環境整備協会理事長、日本モンゴル政治経済懇話会理事等を務めている。

 京都府内で最大規模の共産党単位後援会の会長を務めていたが、2023年1月に出版した『志位 和夫委員長への手紙』の中で志位委員長の辞任や党首公選制の導入を主張した」。

 ところが、「共産党が、志位 和夫委員長の辞任を求める著書を出版した古参党員、鈴木 元氏(78)を党規約上最も重い除名処分にしていたことが分かった。鈴木氏が16日、毎日新聞の取材に明らかにした。党は2月にも党首公選制を主張したジャーナリストの松竹伸幸氏を除名処分としている。鈴木氏は1月に『志位 和夫委員長への手紙』(かもがわ出版)を出版。著書の中で『新しい指導部に党の改革を委ねるべきだ』などとして、志位氏の辞任や党首公選制の導入などを主張。鈴木氏によると、処分は3月15日に党京都府委員会が決定し、16日に党中央委員会が承認。松竹氏と同時期に著書を刊行したことなどを『分派活動』と認定したことが処分の理由だという。鈴木氏は『全くもって不当な処分だ。国民から批判を浴びるだろう』とし、近く記者会見を開き、党側に撤回を求める意向だ」(2023/03/16 毎日新聞)そうである。

 

 日本共産党は、スターリン主義コミンテルン)の子供として出生し、スターリン主義の乳を吸って大きくなったスターリン主義の党である。

 たしかに、日本共産党は、旧・ソ連共産党の崩壊に際して、「大国主義・覇権主義の歴史的巨悪の党の終焉を歓迎する」と言った。それまで“同志”と呼び合っていたにもかかわらず。

 実は、かようにあっさり、機会主義的行動 ―― 自分たちに有利なように立ち回るためには、情報(の開示)を操作し、場合によっては裏切ったりする ―― に走るのが、まさにスターリン主義の特徴でもある。

 

 スターリン主義の党で“分派活動”の烙印を押されることは、致命傷である ―― スターリン時代のソ連では、ほとんどが銃殺されたのである。

 “分派活動”の烙印を押された党員は、昨日までは“同志”と呼んでくれた人からも、「今夜、鶏が鳴く前に、三度、あなたのことは知らない」と言われるだろう。

 

 鈴木 元は、党歴60年の古参党員である。けれども今回、志位委員長の辞任や党首公選制の導入を主張しただけ(!)で、ギロチンが落とされたのである。しかも、どうあがいても、鈴木 元に勝ち目はない。

 なぜなら、スターリン主義の党は、「われわれは、手をさしのべあい、党の委員会(引用者注:党中央と読め!)のまわりに団結しよう。党の委員会だけがわれわれを立派に指導できること、党の委員会だけが社会主義の世界と呼ばれる“約束の国”にゆくわれわれの道を照らしだすことができることを一瞬も忘れてはならない」(スターリン)という“ドグマ”に囚われた党だからである。