断章139

 「最善を望みつつ、最悪に備えよ」

 ディズレーリ(大英帝国ヴィクトリア女王に最も寵愛された首相)の言葉である。

―― ベストの結果を出せるようにヴィジョンを持ち、そのために全力で努力する。但し、常に最悪のケースを考えてそれに素早く対処できるように備えること。危機を煽(あお)っているわけではない(念のため)。

 

 自宅待機中に「これからの生活の足しなるかもしれない」と思いついたり、今春、定年を迎えて退職金が出たので、「資産運用」を始めてみようと思った、あなた。

 「長期、分散投資で資産形成」という、政府・金融機関の掛け声に踊らされてはいけません。

 

 というのは、金融機関の窓口で、1929年大恐慌以後のアメリ株価指数のグラフで「長期投資」の有利さを説明されても、あなたがそれほど長く生きられる保証はない。あなたが解約するときに儲かっている保証もないからである。

 「分散投資」についても、例えば、「日興アセットの『3倍3分法ファンド』は昨年、売れに売れた。昨年年間の資金流入額は1年決算型と隔月分配型の2コース合計で5276億円と、日本の公募投信の中で実質的にトップだった。ヒットの最大の要因は『増やすための分散』という商品設計のコンセプトが、低金利下で運用先に悩む個人投資家に受け入れられたからだ。(中略)

 そんな順風満帆な運用環境が一気に暗転したのが、コロナの感染拡大で米国株が崩れた2月下旬だった。『3倍3分法ファンド』(1年決算型)の基準価格の最高値は、2月21日の1万3604円。そこから3月19日には8559円まで一気に下落した。ドローダウン(最高値からの最大下落率)は37.1%となり、約1カ月間で運用残高の3分の1以上を失った計算」(日本経済新聞)のようなことが起きる。

 

 金融の世界は、言うなれば、これまでの「異次元緩和」の世界から「異次元カオス」の世界へと移った。

 「イギリスの大手運用会社のキャプラ・インベストメント・マネジメントは、グローバル債券市場では誰もがその名前を知る巨大なヘッジファンドだ。2005年にロンドンで設立。それから15年間で運用総額は208億ドル(約2.2兆円)と世界最大級の金利ヘッジファンドに成長した。

 そのキャプラが運用するファンド群の中に『テール・リスク・マスター・ファンド』という商品がある。テール・リスクとは、確率分布をしめす釣り鐘状のグラフの両端の広がりである『すそ(テール)』から来た言葉。確率計算上はめったに起こらないはずの事象が金融市場では頻発する。こうした『厚いすそ(ファット・テール)』に備えるブラックスワン・ファンドだ。コロナショックで2~3月にプラス30%を超えるホームランを放った。

 キャプラはこの後の市場をどうみているのか。

 先進国でほぼ唯一、1%以上の金利を維持していた米国の政策金利もゼロになり、世界の債券市場が投資先として意味をなさなくなったから、『世界の投資家のお金の振り向け先は株とクレジット(信用)しか残っていない』。そうなればより狭い範囲の市場に大量のお金が激しく出入りするようになる。市場の変動率は今後、構造的に上がらざるをえないというのが、ボラティリティーを知り尽くしたキャプラの読みだ。

 キャプラが予想するように、世界の金融市場の構造がコロナによって大きく変わってしまったのも事実だ。いつ訪れるのか分からなかったブラックスワンがいつもそばに控えているのが、これからの市場の『ニューノーマル(新常態)』なのかもしれない」(「日本経済新聞」を要約・再構成)。

 

 「これまでFRB金利を引き下げ、『市場を支える』政策をおこなってきた。しかし、これらの行動は意図しない結果をもたらし、金融市場で『ブームと破裂』が繰り返し起こる現象につながった。これまでの10年で積みあがった過剰流動性が作り上げたモンスターバブルが、この程度の小さな修正でリセットされることはないだろう」(2020/4/2 石原 順)。

 

【参考】

 中国で新型コロナウイルスによる最初の犠牲者が出てから約3カ月が経過した。この間、世界中で感染が爆発的に広がり、経済は凍結し、日米欧は社会維持のため巨額の財政政策に踏み込む。先の見えない闘いは資本主義の枠組みをも変えようとしている。投資家はいま、経済史のどこにいて、どこに向かうのだろうか――。

 世界大恐慌期の1930年代。米国では名目国内総生産GDP)が33年には572億ドルと29年比で45%も減少した。・・・GDPが29年の水準を回復したのは12年後の41年だった。

 米モルガン・スタンレーはコロナショックで2020年の米実質GDPは前年比5.5%減に落ち込むと予想する。そうなれば1946年以来、実に74年ぶりの減少率を記録することになる。(中略)

 時価総額GDPを大きく上回れば割高、過小であれば割安と考えるバフェット指数によれば、2019年の日本は3.1倍で割高圏だった。

 日本のGDPが5%減り、倍率が過去の中央値(2.4倍)まで下がるとすれば、TOPIXの理論値は1263となる。3月16日に付けた約3年8カ月ぶりの安値(1236.34)はこの水準に近い。仮にGDPが5%減のまま倍率が下限の1.5倍まで低下すれば、下値余地は2012年12月の水準である790まで広がる可能性がある。

 こうした経済の激変に伴う痛みを和らげるため、米国は200兆円、日本は100兆円規模という前代未聞の景気下支え策に乗り出す。政府の資金繰りのため米連邦準備理事会(FRB)や日銀は国債を買い、手を貸す。日米は戦前の金本位制のようなくびきである財政均衡主義を棚上げにする。

 ここでのポイントは2つある。

 第1は、そうして中央銀行が買い入れた国債金利はゼロなので現金と区別がつかないという点だ。政府と中銀を一体とみる統合政府にとっては、国債も現金も同じ負債であることに変わりはないが、現金には返済期限がない。政府が打ち出の小づちを振って紙幣をばらまくように公的債務の際限なき膨張に道が開かれたとみることは可能だ。中銀マネーによる恒久的な財政補填、いわゆるヘリコプターマネーだ。

 第2はコロナ禍が長引けば、追加の財政政策を要求する声が高まるだろうという点だ。(中略)

 米国では経済対策の発表後、人々のインフレ期待が急回復し、通貨の信用力と逆連動すると考えられる金の先物価格が最高値をうかがっている。第1次大戦後のドイツ経済の混乱を描いた『ハイパーインフレの悪夢』(アダム・ファーガソン著)によれば、インフレの初期には通貨や公債の下落とともに株式投機が活発化したという。コロナによって潰されたバブルがコロナによってよみがえる可能性も排除できない。だが、その場合、低インフレとカネ余りによる過去10年の相場とは異質なはずで、楽観視することはできない」(2020/04/13 日本経済新聞永井洋一)。

断章138

《ジム・ロジャースとシンガポール》を考えるための素材。

1.

 「『少子高齢化で衰退する日本なんて、早く脱出し、中国に見習うべきだ』。世界的に著名な投資家、ジム・ロジャーズ氏が、こうした『日本崩壊論』を主張して10年近くが経つ。

 この間、当のご本人は、中国の覇権を見据え、中国語の重要性やお子さんの教育を考慮に入れながらも、不思議なことに中国ではなく、日本を追い抜くスピードで超少子高齢化に突入しているシンガポールに移住した。

 数百年前、英国植民地官僚のトーマス・ラッフルズが建設した数百人の海賊が住む小さな島だったシンガポール。人口は約560万人で日本の淡路島や東京23区ほどの大きさ。1965年、マレーシアから分離独立。以降、建国の父、リー・クアンユー首相率いる一党独裁の長期政権下で、世界的にも最も裕福な国家の一つに成長した。

 国際通貨基金IMF)によると、2018年のシンガポールの1人当たりの国内総生産購買力平価ベース)は、9万8014米ドル。日本の4万4426米ドルの2倍以上で、アジアでトップだ(注;1人当たりGDPは日本の2倍でも、シンガポールの国民平均給与は日本と変わらない)。一方、様々な規制、政治的統制、能力至上主義社会を反映し、米調査会社ギャラップの日常生活の『幸福度』調査では、シンガポールが148カ国中、最下位だったこともある。『国民の幸せ度』は、必ずしも経済発展と合致しないようだ。

 シンガポール政府は6月の年次報告書で、2018年出生数が8年連続過去最低を更新したと発表。出生率も減少し『1.14』を記録した。一方、日本が今年6月に発表した2018年の出生率は『1.42』だった。高齢化でもシンガポールは日本を抜く。国連統計では、シンガポールは65歳以上の人口が2016年12%、2030年には24%に倍増。さらに、2050年には約47%に達し、国民の2人に1人が、65歳以上に達する超高齢化社会となり、日本より10年近く早いスピードで超高齢化に突き進んでいる。世界の金融先進国は、超少子高齢化の課題を突きつけられているわけだ。しかも、貧困、自殺、ホームレスといった社会問題にも襲われている。

 アジアの華麗な最優等生というステレオタイプのイメージとはかけ離れたシンガポールの真の姿を追った。

 『空港は10年前と比べ、格段便利になって、生活は快適よ』と微笑む初老のシンガポール人女性は、チャンギ国際空港の“住人”になって久しい。陳さん(仮名)は70代の女性で、チャンギ国際空港が“自宅”だ。彼女以外にも、老若男女のシンガポール人が空港で寝起きする生活を送っているという。空港のショッピングカートに、生活必需品の洋服や洗面用具などが入った大きな紙袋をぶら下げている身なりは、フライト待ちで雑魚寝する人がいる空港の『トラベラー』と全く変わらず、違和感はない。そんな彼女が、年間利用者約6600万人(2018年)で毎日何十万人という荷物を抱えた旅行者が行き交う巨大な空港で、まさか10年近くも生活してきたとは誰も想像しないだろう。

 世界のハブ空港で知られるチャンギ空港は、それ自体が小さな都市である。24時間運営で広大な敷地には、エアコン完備の映画館、植物園、遊園地、シャワールーム、ショッピングモール、ホテル、トイレ、クリニックなどが完備されている。ここにいれば『家賃を払わず』に生活できる。ある意味、これほど便利な場所はほかにないかもしれない。陳さんが空港で暮らすようになったきっかけは、物価の高騰などで生活苦に陥ったため。現金収入を得るため、住んでいた2DKのアパートを他人に貸し、自分は家賃のない空港で暮らすことを決意したという。

 食事は格安のフードコートですませ、必要なものは空港内のスーパーで購入。日中は、無料のワイファイで昔の中国語のドラマや映画を見て楽しみ、夜は空港内のシャワーを浴びて、就寝する。空港で生活することで、月に1100ドル(1Sドル=79.3円 、以下文中はシンガポールドル)の家賃収入を得ている。高齢で高血圧のため職はなかなか見つからない。チャンギ空港に1、2年住んだ後、生活資金が貯まれば、自宅に戻るつもりだった。ところが、空港生活の快適さを実感してみると戻る気はなくなった。『当分は空港で暮らすつもり。だけど、当局に保護されれば自宅に返される』と不安げに話す。

 シンガポールは、先進国の中でも、政府が必要最低限の収入(貧困ライン)を設定していない希少な国の一つだ。2017年末に、世銀は『1日21.7米ドル』を高所得国の貧困ラインと定めたが、この評価尺度によると、シンガポールは「国民の約2割が貧困層」に相当し、その格差社会は深刻だ。シンガポール統計局によると、2017年の世帯1人当たりの平均月収は、上位10%が約1万3200ドルに対して、下位20%で約1100ドル、最下位の10%では約555ドルで、この格差は広がり続けている。

 最上位20%と最下位20%の平均所得格差は、日本が約3.4倍に対して、シンガポールは約10倍以上だと指摘されている。80歳前後の後期高齢者が、世界の高級ブランドが並ぶオーチャードロードや地下鉄、屋台街で、少し背中を丸めながらティッシュ販売、段ボール集め、清掃などで小銭を稼ぐ姿は、珍しくなくなった。

 日本人にも人気のチャイナタウンで、ポケットティッシュを売っている80代前後の下流老人(趙さん:仮名)に出会った。少し足を引きずりながら、1ドルのコインとポケットティッシュを交換してくれた。

 『日中暑い中、大変ですね』と言うと、『体が動けなくなるまで、働くよ。生きていくためには、生涯働かないと。子供の世話にもなりたくないしね』と、しわだらけの日焼けした浅黒い顔から笑顔をのぞかせた。開襟の白いシャツの胸元には、NEA(シンガポール国家環境庁)が交付したバッジが光っていた。彼は政府認証のホッカー(露天商)ということらしく、毎日、観光客などにポケットテッィシュを売り、生活の糧にしているという。趙さんは、もともとニュートンサーカスの食堂街で清掃の仕事をしていた。当時は、月々1000ドルほどの稼ぎがあったが、肝臓を悪くして以来、激務には耐えられなくなった。今のポケットティッシュの収入は月に500ドルほど。世界のトップクラスの物価高のシンガポールでは苦しい生活が続く。

 シンガポールでは、生活苦から80歳を超えても就労を余儀なくされているケースも多い。65歳から69歳の就労率は約40%と、日本の約32%を上回る。2006年には約25%だったことを考えると、その数は激増している。

 実は、シンガポールは高齢者勤労“大国”でもある。

 日本では珍しいが、シンガポールでは、マクドナルド国内約140店舗で就労する約9500人のうち約36%が、『50歳以上のスタッフ』だという。国内には70歳以上を超え働ける企業が全体の20%を超えるといわれる。『完全雇用』『生涯現役』と言えば聞こえはいいが、アジアの最富裕国でありながら、多くの高齢者が生きるために就労を余儀なくされている現実がここにある。コー保健省上級相は『高齢化の波はシルバー・ツナミではなく、高齢者は財産』と強調し、60歳を『New 40(新時代の40歳)』と呼ぶなど、政府は逼迫する財政の中で高齢者の就労を奨励することに躍起だ。

 ジム・ロジャースなど世界の富豪を優遇策で招致する一方、シンガポール社会保障が手薄で、医療費などの自己負担も増加し、老後資金不足に陥るケースが目立ってきた。シンガポールの貧富の格差はジニ係数にも表れている。

 シンガポール財務省の調べでは、2007~2017年まででは、0.38から0.35と改善されてはいるもの、日本などに比べても貧富の格差が大きい。2000年代初頭までは0.46で、東南アジアではマレーシアと最悪を競っていた。当然、シンガポールの国民は、貧富の格差が先進国の中でトップレベルであることを認知している。

 シンガポールにはCPF(中央積立基金)という年金を核にした社会保障制度があるものの歴史が浅く、シンガポール人の8割が暮らすHDB(公営集合住宅)の急激な住宅価格上昇に伴うローン返済にCPFを回し、定年資金が底を尽いてしまう人や、潤沢な積立金のないまま退職する高齢者が急増している。

 40代で80代の母親の面倒を見る筆者の知人は『今、一番生活が困窮しているのは、CPFがない時代から働いていて、年金を受け取れない高齢者』とこぼす。シンガポールの発展に貢献したパイオニア世代(1949年以前生まれ)が、生活に困窮するとは、何とも皮肉な話だ。

 ・・・日本より超少子高齢化で先を行くシンガポールでは、『親孝行』が法律で義務化されている。親の扶養を怠った子供には『6か月以下の禁固、または5000ドルの罰金』を科している。要は、『親の面倒を国に頼るな!』ということだ。先の知人は『最近は、親の面倒を見る経済的余裕がない子供に棄てられる“下流親”も急増している』という。

 こうした背景を受け、シンガポールでは昨年、高齢者の自殺者が過去最多になったことが明らかになった。慈善団体の『シンガポールサマリア人(SOS)』が発表したもので、統計開始以来、最多となった。同団体は『一人暮らしの高齢者が増え続けているシンガポールでは、早急に支援システムを強化する必要がある』と高齢者の自殺急増に警笛を鳴らしている。

 急速な高齢化への対応で、シンガポール政府は2017年8月、同国で初めての高齢者専用住宅と医療施設を完備した総合施設『カンポン・アドミラリティ』を完成させた。リー首相が、2018年8月9日の独立記念日の国民向けのビデオメッセージの舞台にあえてここを選んだ背景には、高齢化対策への国民の不満を和らげる意図もあった。

 『国民は生活費の増加にいらだちを増大させている。医療、住宅、教育が主要な支出である以上、政府として、貧富を問わず全国民に高品質のサービスを提供する』『カンポン・アドミラリティは、未来の公団住宅のモデルだ。高齢化のニーズを満たし、住民と家族が集まるコミュニティ作りを進めていきたい』と期待を懸けた。

 しかし、日本貿易振興機構ジェトロ)によると、『同施設はシンガポールの高齢者政策の新たな試みではあるものの、急速な高齢化に対しデイケアや養護施設のインフラは不足している』ようである。

 一方、こうした貧困や生活不安は、高齢者だけにとどまらない。2005年、リー首相の肝煎りで2.5億ドルの資金を基に、低所得者に就労や福祉施設を紹介する生活支援プログラムの「コムケア」が創設された。財政援助を受けたのは(世帯:月収1900ドル、単身:月収650ドル未満)、2012年に2万572世帯、2016年には2万8409世帯へと拡大した。5人に1人が35歳以下の若い世代である。

 職のない若者が、マクドナルドやスターバックスでたむろする“マック難民”“スタバ難民”が話題になっているが、『大卒貧困層』と称される高学歴層の若年層の雇用の問題も浮上している。昨年、シンガポール国立大学の公共政策大学院の調査が明らかにしたのは、大卒で正社員ながら『月給2000ドル未満』の層が、調査したグループの約5%に相当したことだった。いずれも、独身で職務経験が10年から15年の若い世代で、中間年齢層が35歳で、このうち約64%が女性だったという。

 年金や国民皆保険など社会保障の手厚い日本に対し、シンガポールでは強制自動天引き貯蓄のようなシステムで、自己責任で将来の蓄えを貯める仕組みの強制貯蓄『中央積立基金』を政府が管理している。持ち家取得、医療費、老後生活準備のため、雇用主と労働者が毎月、収入から一定額を強制的に積み立てるという制度である。日本の公的年金制度に似ているように思えるが、低所得者の蓄えは少なく、さらに超高齢化が進み、長生きすると目減りする一方で、日本の年金システムとは全く異なる。

 昨年、シンガポールに移住して10数年、永住権も持っている知人夫婦が日本に帰国した。シンガポールでは最近、ステージ4の末期がんの治療に75万ドルを請求されたアラフォーの困窮女性のフェイスブック上での訴えが炎上。国民から多くの支援や激励とともに、シンガポールの医療制度の不備を非難する声が上がった。先の知人は言う。『シンガポールでは一般的に、病院は公立だと50%、私立だと70%負担しないといけない』『日本と比べ、歯科治療は高額。また、公立病院の歯科だと患者が多く、半年待たされるケースもある』『治療や入院費用などを補填する公的制度はあるけど、国民皆保険はなく、もし失業、病気や離婚で問題が発生すると、貧困のスパイラルに陥る危険性は、日本よりはるかに高いと思う』。

 ジム・ロジャーズの『日本脱出論』。一握りの超富裕層には見えない死角がどうやらありそうだ。彼が10年間も言い続けている日本崩壊論だが、日本は崩壊せず、シンガポールだけでなく、ロジャースが勧める中国、韓国への移住は、昨今の情勢を見ていても到底真似できるものではなさそうである」(取材・文 末永 恵)。

 

2.

 「シンガポールは国際的に報道・言論・表現の自由度で極めて低くランキングされているが、10月、自由度をさらに引き下げる新たな規制法を施行した。

 政府が虚偽と判断した記事や情報の削除や訂正を命じ、最大10年の禁錮刑を科すことが可能な『フェイクニュース・情報操作対策法』の適用を始めたのだ。早速11月に、野党政治家のフェイスブックへの投稿が虚偽だとして、フェイクニュース対策法に基づく訂正命令を出した。10月には、人気ユーチューバーで東京や大阪にも店を構える香港の飲食店主のアレックス・ヤン氏が、シンガポールで香港デモをテーマとした政治集会を無届で開催したとして、国外退去処分になっている。仮に、彼が届けを出していたとしても、実際には許可されず、国外退去処分となっていただろう。シンガポールでは、抗議活動に関する規制に違反すれば、最長6カ月間の禁錮刑に科される可能性もあるのだ。

 ちなみに、多くの企業が混在する金融先進国のシンガポールでは、政府公認の組合が唯一スト権を保有し、いわゆる労働組合は事実上存在せず、活動していない。

 さらに、大学入学希望者は『危険思想家でない』という証明書の交付をシンガポール政府から発行してもらう必要がある。反政府や反社会的な学生運動などは存在しないのが実情だ。

 国際的に有力な大学が地元大学と共同事業を展開するなど、教育分野でも魅力があるとされるシンガポールだが、こと言論に関しては自由とはほど遠い。

 筆者の取材によると、今年9月、米エール大とシンガポール国立大学(NUS)の共同設置の『エールNUSカレッジ』で、反政府活動を扱うカリュキュラムコース『シンガポールでの反対意見と抵抗』の開講の中止が決まった。このカリキュラムは、シンガポールの唯一与党、人民行動党(PAP)を非難する政治的作品で知られる劇作家、アルフィアン・サアット氏が担当することになっていた。欧米政府の後押しで香港の民主化運動の象徴でもある黄之鋒氏に関するドキュメンタリー映画なども内容に含まれていたという。これに対しオン・イェクン教育相は、『学問の自由が政治的な目的で乱用されるべきではない』として、政府非難のカリキュラムコース開講を中止させた決定を評価した。

 クリーンで開かれたイメージのあるシンガポールだが、報道メディアや反政府活動の自由さや民主主義の度合いにおいて、現在の香港に比べてもえげつなく劣悪な状態にあると言ってもいいだろう。

 選挙で野党候補者が当選した選挙区には、政府による“懲罰”が科され、公共投資や徴税面で冷遇されることでも知られている。形の上では公正な選挙で選ばれたように見えて、その実、選挙区割をはじめ選挙システムなど与党による独裁が守られる『仕かけ』が施されているのだ。また、政府批判勢力には、国内治安法により逮捕令状なしに逮捕が可能で、当局は無期限に拘留することも許される。そして、新聞、テレビなどの主要メディアは政府系持株会社支配下にあり、独裁国家プロパガンダを国民に刷り込むことに一役買っている。

 来年に見込まれる総選挙で政権打倒を目指す野党『ピープル・ヴォイス(人民の声)』の党首で人気ユーチューバーの弁護士、リム・ティーン氏は、『国民の知る権利を剥奪する御用メディアは深刻な問題だ』と現政権を非難する。

 このようにシンガポールでは一党独裁制を崩さない仕組みがきっちり組まれているのだが、一向に収拾に向かわない香港の民主化運動に危機感を抱き、さらなる対策に打って出ようとしている。筆者の取材にシンガポール政府安全危機管理関係者は、『香港の民主化に感化され国内に混乱が発生した場合の“危機管理スキーム”を作成し、暴動クライシスへの対策を取りまとめた』という。来年見込まれる総選挙を控え、シンガポールの“香港化”を防ぐ準備を行っていることを明らかにした。

 これまでシンガポール政府は、困難に直面する香港への配慮から、民主化運動への公の言及を避けてきた。しかし、総選挙を延期決定した10月以降、シンガポールの香港化への危惧を公に露わにするようになってきた。リー・シェンロン首相は、10月中旬に開催された一連の会議で『(我々が注意警戒していなければ)香港で起っていることが、シンガポールでも起こり得るだろう』と初めて公式に憂慮を示した。そのうえで、『香港の民主化勢力は妥協を拒み、自由や民主主義を主張するが、真の狙いは香港政府打倒だ!』と声を荒げて民主化勢力を非難。『香港とシンガポールの状況は違うが、シンガポールで社会的混乱が起きれば、シンガポールの国際的信用は破壊され、シンガポールは壊滅し“終わる”だろう』と危機意識を露わにした。

 なぜシンガポール政府が静観から一転して強い懸念を示すようになったのか――。

 一つには、あえて国民の危機感をあおり、香港のような民主化運動が起こるのを未然に防ぐ狙いがあったと言える。そしてもう一つの大事な点が、国民の自由を剥奪してきた政策が至る所で綻びを見せ始めているという現実だ。

 国営メディアは決して伝えないものの、経済発展を果たしたいま、自由を求めて国民の不満が高まり、じりじりマグマ化してきている実態が明らかになってきた。以前、『金持ちなのに 老化と貧困に悩むシンガポール』で書いたように、シンガポールは日本を上回る超少子高齢化格差社会の課題を突きつけられている。一方で、ホームレスの増加、若者や高齢者の貧困や自殺、インドや中国からの移民急増による国民の雇用不安や失業、CPFという年金を核にした社会保障制度の不備が社会不安をあおっている。

 11月、そんなシンガポールで興味深い全国調査の結果が公表された。『シンガポール初の全国規模のホームレス調査』(シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院)だ。

 人口約570万人のうちホームレスの数が約1000人だったことが明らかになった。シンガポールにもホームレスがいるのは国民も知ってはいたが、その数がここまで多いとは誰も思わなかったのだろう。衝撃的なニュースとして伝わった。

 ホームレスの大多数が、路上生活を余儀なくされているという。内訳は、全体の80%が男性で、6年以上ホームレス状態の人が約30%、1年から5年の人が半数にも及んだ。彼らの多くが、人口の約20%にも達している貧困層で、守衛や清掃員、宅配サービスなどの低賃金の仕事で生計を立てている。(中略)

 シンガポール建国の父、リー・クアンユー元首相の長男、シェンロン氏は現首相。次男のリー・シェンヤン氏は、かつてはシンガポール最大の通信企業シングテルの最高経営責任者。さらには大手銀行のDBS銀行シンガポール航空を傘下に収めるテマセク・ホールディングス最高経営責任者は、現首相シェンロン氏の妻、ホー・チン氏だ。

 シンガポール一党独裁でありながら経済成長を果たした背景から、『明るい北朝鮮』とも呼ばれる。リー・ファミリーが政治権力だけでなく、富も独占的に保有してきたからだ。 香港の民主化運動は、シンガポールのこうした政治体制をも揺るがしかねないパワーを秘めている。政府が必死に飛び火を食い止めようとするのも分かる。しかし、国民の間にマグマのようにたまった不満を強硬な政策で抑え続けることは難しくなりつつある。

 2015年3月に建国の父、リー・クアンユー氏が亡くなった時、旧知の間柄だった台湾の李登輝元総統はこう言い放った。『我々、台湾は自由と民主主義を優先させたが、シンガポールは経済発展を優先させた』。

 この時すでに李登輝氏はシンガポールの現在の悩みを予知していたのかもしれない。 そして、それは改革開放以来、鄧小平の理想理念のもと、シンガポールを“先生”に選んだ中国の行く末でもある。香港の民主化運動が本格的にシンガポールに飛び火するかどうかは、中国の一党独裁を永続させることができるのかという問いでもある」(2019/12/10 末永 恵)。

 

【補】

 「シンガポール保健省は4月23日、新たに1037人のコロナ感染を確認したと発表した。1日の新規感染者は4日連続で1000人を超え、国内の累計の感染者数は1万1000人を突破した。

 そもそもシンガポールは早くから感染者が確認され、他の東南アジア諸国と比べても、迅速な対応を講じてきた。外国人の入国制限や入国後の隔離措置も迅速かつ厳格に実施し、感染が判明すれば、スマートフォンの位置情報を使って感染経路や濃厚接触者を割り出し、検査や厳しい隔離措置をおこなって、感染拡大の防止を図ってきた。その結果、3月下旬には、1日の新規感染者数は数十人に抑えられていた。しかし、状況が変わったのは、4月に入ってからだ。インドやバングラデシュなどの建設作業員が暮らす相部屋の宿泊施設で、相次いで集団感染が発生した。一気に感染者数が急増している。

 シンガポール人材開発省によると、給与水準が高いシンガポールでは、およそ140万人の外国人労働者が暮らす。このうち低賃金の肉体労働と言われる建設業界では、およそ30万人が働いている。主にインドやバングラデシュなどの南アジア出身者が多い。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、こうした外国人の建設作業員は、2段ベッドが並ぶ相部屋で、不衛生なトイレや洗面台を共有する宿泊施設で寝泊まりしているという」(2020/04/24 FNN)。

断章137

 「海の中で、大きくゆっくりと泳ぐクジラ。夢占いではクジラが夢に出てくることは環境や人間関係の大きな変化を暗示する」という。新型コロナ以後の金融の世界も大きな変化を迎えるのだろうか。

 金融の世界にもクジラがいる。例えば、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)もそのひとつである。

 4月1日付けで、「約160兆円におよぶ国民の厚生年金と国民年金の積立を管理運用する世界最大規模の年金ファンド『年金積立金管理運用独立行政法人』(GPIF)の新理事長に宮園雅敬氏が就任した。

 『GPIFは2019年10月、当時理事長だった高橋則広氏を、女性職員との特別な関係を疑われかねない行為があったと懲戒処分にした。その件を巡り怪文書が出るなど、内部対立があり、高橋氏や他の2人の理事が2020年3月末に退任する事態に発展しました』(金融機関幹部)。前理事長である高橋氏も、宮園氏も農中の専務理事経験者で、2代続けて農中出身者がトップに就いた。(中略)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界的に株価は乱高下を繰り返している。GPIFの1月から3月の運用損失は最大で20兆円を超える可能性がある。

 宮園氏は、ガバナンスの立て直しと混乱する市場への対応という2つの難題にいきなり直面する。新理事長の手腕が問われる」(2020/04/07 文春オンライン・森岡 英樹)。

 

 「大手シンクタンクが相次いで、新型コロナウイルス感染拡大による世界同時株安の影響を受けて公的年金を運用するGPIFが2020年1~3月期に運用資産を17兆円以上減らした可能性が高いことを報じている。

 GPIFが失った17兆円というのは2018年10~12月の14.8兆円を上回る過去最大規模であるのと同時に、1年間の公的年金給付額の3分の1程度に相当する大規模なものだ。

 大和総研は4月3日に公表した特別レポート『コロナ・ショックと世界経済』の中でメインシナリオ(新型肺炎の流行期が日本で5月、欧米で6月、中国で4月に収束)として新型コロナによって2020年の日本の実質GDPが21.7兆円押し下げられるという予測を示しているので、GPIFは2020年1年間のGDPの減少とほぼ同規模の年金資産減少に見舞われたことになる。

 GPIFの運用資産が17兆円減少したことに対して『GPIFは市場運用を開始した2001年度以降これまで75兆円もの収益を上げており、長期的に見れば17兆円程度の資産の減少など問題ではない』という意見も根強くある。

 しかし、GPIFがこれまで上げてきた収益は現金として貯められているわけではない。実際に昨年末時点でGPIFが保有している『短期資産』は5兆7334億円に過ぎない。それは、GPIFの収益は年金特別会計に納付されるほか、運用効率を上げるために株式や債券に再投資されているからだ。これまで累計で75兆円ほどの収益は既に年金特別会計を通して年金として給付されているか、リスク資産に再投資されている。

 つまり、GPIFがこれまで獲得してきた収益のほとんどは、既に年金給付に使われたか、今現在リスクにさらされているかのどちらかであるため、これまで75兆円もの累計収益を上げてきたといっても今後の年金給付が大丈夫ということにはならない。

 GPIFの運用資産が増えた、減ったという話題はメディア等で報じられている。

 しかし、『年金財政を概ね100年間で均衡させるため、当初は年金給付の一部に積立金の運用収入を充て、一定期間後からは運用収入に加えて、積立金を少しずつ取り崩し、最終的には概ね100 年後に年金給付の1年分程度の積立金が残るよう、積立金を活用していく財政計画が定められています』(2018年度GPIF『業務概要書』)ということが報じられることはほとんどない。

 ポイントは、2019年末時点で約169兆円に及ぶGPIFが運用する年金の積立金は『一定期間後』から少しずつ取り崩されることが決まっていることと、『運用収入に加えて『積立金を少しずつ取り崩す』というところ。

 問題は『一定期間後』というのがいつになるのかという点である。そのヒントが昨年発表された5年ごとに行われ『財政検証』で示された163通りものシミュレーション中の慎重な経済見通しに基づいたケース(ケースV)に基づいた『公的年金の財源と給付の割合』に見て取れる。

 この『ケースV』の前提となっている『物価上昇率0.8%、賃金上昇率(実質<対物価>)0.8%、運用利回り(スプレッド<対賃金>)1.2%』という当時としての『慎重な経済前提』は、現状あるいは2020年の経済見通しと比較すれば『夢のような経済前提』だ。

 今となっては『夢のような経済前提』でも2020年度から年金給付の財源として『積立金から得られる財源』が使われ始める見通しになっている点には要注目である。

 年金給付の財源はその年の保険料収入と税金で9割程度が賄われており、GPIFの積立金運用に伴う短期的な市場変動は年金給付に影響することはない。しかし、新型コロナウイルス感染拡大による経済低迷によって、経済に連動する保険料収入と税金が減少することは、ほぼ確実である。

 こうした環境で問題になって来るのが『運用収入に加えて』という部分である。

 コロナウイルス感染拡大による市場の混乱によってGPIFの保有資産が17兆円以上目減りしたということは『運用収入』が失われたということである。

 仮に保険料収入と税金に加えて運用収入も想定額に届かなかった場合、所定の年金給付財源を確保するためにはGPIFの積立金を取り崩して不足分を補うということになる。それは、経済と金融市場が混乱する中で株式や債券を売りに出すということである。

 株式市場が大幅に下落する中で資産の売却に迫られる構図は、1990年のバブル崩壊局面で投資信託運用会社が経験した。大量解約に対応するために株価が大幅に下落するなかで株式売却を迫られ、その売りがさらなる株価下落と基準価額の下落を招き、さらなる解約を生むという地獄絵図の再現である。

 GPIFは2019年末時点で5.7兆円の『短期資産』を持っているので、年金給付の財源として必要になる資金がこの範囲内であれば世界同時株安という状況の中で無理に保有株式を売却する必要はない。しかし、それは『短期資産』で大きく値下がりした株式を購入することを放棄することであるから、株価が元の水準に戻らない限りGPIFの資産が元に戻れないということでもある。

 新型コロナウイルス感染拡大によって経済と金融市場が混乱をきたしても、GPIFの積立金の取崩しをすれば、『株価の下落が年金給付に直ちに影響を及ぼすことはない』。しかし、想定より早くGPIFの積立金を年金給付の財源として使い始めるということは、想定より早くGPIFの積立金が枯渇するということでもある。

 つまり、足もとの株価下落による悪影響を受けるのは『現在の年金世代』ではなく『将来の年金世代』だということである。こうした状況でも『年金は長期運用だから目先の損失などで騒ぐ必要はない』といっていられるのだろうか。(中略)

 確かに、日本の新型コロナウイルス感染者数は、感染患者の増加のスピードを抑え感染者数のピークを先送りするという基本方針が功を奏しているのか欧米に比較すれば低く抑えられている。日本のこのような基本方針によって医療崩壊もギリギリのところで避けられた格好になっているが、金融市場にとってそれが必ずしも好結果をもたらすとは限らない点には注意が必要だ。(中略)

 金融市場にとっての問題は『時間軸』である。欧米諸国で感染者数が拡大している現在の局面での日本の立ち位置は『比較的安全な国』だ。

 しかし、欧米の感染者数がピークを越し減少し始めた局面を迎えると、日本の立ち位置はこのまま感染者数を医療崩壊の起きないギリギリのところで維持できたとしても、『感染者数がピークに達していない国』『新型コロナウイルスのリスクが残る国』に変わってしまう。こうした見方が世界に蔓延することは、・・・日本の株式市場に逆風を吹き付ける要因になりかねない。(中略)それは、GPIFの運用成績が回復しないことであり、将来世代の年金給付に支障をきたすということだ」(2020/04/07 現代ビジネス・近藤 駿介)。

 

 「『年金運用は、短期的な損益ではなく長期的な損益で見るべきだ』とGPIFは言う。長期的に収益を獲得することを目的に運用している資金だし、資金サイズ的に身軽に動くことができる運用条件ではないので、短期の損益で良し悪しを評価されてはたまらないという意識があるのだろう。

 しかし、短期的な損であっても、『損は損』であり、その後に必ずそれが取り戻せるという保証はないのであって、『長期、長期…』と言い募(つの)るのは、不適切だ」(山崎 元)。

 さらに、今春、GPIFは資産運用の割合を示す「基本ポートフォリオ」を5年半ぶりに見直し、投資収益が低迷している国内債を減らし、その分、外国債券の比率を10%引き上げる。「国内債、国内株、外国債、外国株の運用比率がいずれも25%となり、外国資産の割合が半分になります。これで、為替変動を含めたリスク度は一段と高まる」(市場関係者)。「本当にこんなにハイリスクな運用が必要なのか」(山崎 元)。

 

 リーマンショックやチャイナショックによる巨額損失のたびにGPIFの運用は批判されてきた。しかし、それらの批判は、単四半期や単年度の運用損失のみをあげつらい、自公政権を批判できそうな材料なら何でも投げつけるという政治的な思惑から生じたものであったから、その後の運用成績の盛り返しによって、いつのまにか“終息”したのである。

 

 だが今、こうした政治的な思惑でない真剣な議論をすべき時が来たのではないか?

 なぜなら、新型コロナ後の世界は、これまでの常識(例えば、運用の世界では、「長期、分散投資が有利」)が通用しないかもしれないからである。

 なるほど、「過去1000年間、ロンドンでの不動産投資は成功を収めている。しかし、アメリカのネイティブアメリカン、メキシコのアズテック族、ペルーのインカ族や、それらの地域の住民は土地を失い、多くは命も失った。すべてが変わってしまった」ことや、「1918年のロシア市場、1945年以降の東ヨーロッパ諸国、1949年の上海市場のように、株式市場そのものが無くなる」ことが、この世には起きるからである。

断章136

 次は何か? すでに警告は出されている。

 「スイスの製薬会社ノバルティスのバス・ナラシムハン最高経営責任者(CEO)は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大について、第1波は数カ月以内に収束する可能性が高いが、世界は第2波に備える必要があると、スイス紙のインタビューで語った。

 同CEOは『パンデミック(世界的大流行)には波がある。従って、試験やデータ収集を続けることが重要だ』と述べた」(2020/3/30 ブルームバーグ)のである。

 不吉な前例もある。

 「アメリカのウイルス学者で生物兵器の第一人者とされるスティーブン・ハットフィル博士によれば、世界の3大パンデミックとは①6世紀に東ローマ帝国を襲った『ユスティニアヌスのペスト』 ②14世紀の『黒死病』、そして③20世紀になっての『スペイン風邪』とのことである。(中略)

 元々は鳥インフルエンザスペイン風邪には3段階があったという。最初のフェーズ(段階)はカンザス州でアウトブレイク(集団発生)が始まり、高齢者を中心にアメリカ内で拡大した時期。驚いたことに、この頃は比較的症状は軽く、致死率は低かったという。

 そしてセカンドフェーズ。ここで致死率が一気に上がった。ウッドロー・ウィルソン大統領が第1次世界大戦への参戦を決め、南北戦争以来、50年以上も徴兵がなかったアメリカでは、欧州戦線へ送られる大勢の兵士が国内の数カ所に集まって集中軍事訓練を受けた。その際兵士の間で感染が広まり、米兵はウイルスといっしょに欧州へ派遣された。

 博士によると、その時のメカニズムはまだ解明されていないが、そこからスペイン風邪のウイルスは激変したという。致死率が高まったウイルスは世界に広まり、皮肉だがそれが戦争を終わらせるのに役立った。そして最後のフェーズでは、帰還した兵士が強くなったウイルスをアメリカ内にまき散らした。結果、ボストンからフィラデルフィアで50万人を超える死者をだした。同博士は、今回のコロナウイルスが、スペイン風邪のパターンになることを最も警戒しているという。」(2020/02/03 東洋経済・滝澤 伯文)

 

 滝澤 伯文が言うように、「3大パンデミック(疫病の世界的な大流行)は、『ユスティニアヌスのペスト』ではアフリカからの商品がコンスタンチノープルになだれ込んで商売が盛んになった後。『黒死病』ではマルコポーロの見聞録が口述で広まり、シルクロードが活況を呈した後。そして『スペイン風邪』はアメリカへの移民が拡大した時期と重なる。つまり、3大パンデミックはグローバリゼーションの避けられない副産物である」なら、新型コロナウイルスが一段落しても、グローバリゼーションが従前どおりに回復・継続する限り、また恐ろしい感染症(例えば、エボラ出血熱ウイルスとか)が広がることは、ありうることである」(注:中国はハクビシンなどを食べることを禁じたが、禁じられれば余計に食べたくなるのも人のサガであろう)。

 

 だとすれば・・・、

 第一に、教育現場で幼児・生徒・学生に対して、感染症の危険について、より周知徹底を図らなければならない。感染症拡大中の外国に安易に旅行したりしないように。

 第二に、マスクのような安価な用品は主に中国で生産されていたので、サプライチェーンの寸断によって、日本国内で一気にマスクが払底したことの教訓を生かして、自治体や大病院は、感染症対策のマスク、ゴーグル、手袋、シューズカバー、防護服を便利なパッケージ形式にした感染症対策キットを備蓄しなければならない。

 第三に、医師会は、医師・看護師に感染症対応の訓練を定期的に施さなければならない。

 第四に、国は、国立感染症研究所(附属病院)を圧倒的に強化拡充し、自衛隊の防疫除染能力を拡大強化し、「病院船」を建造・運用しなければならない。

 

【補】

 「世界最大の病院船である米海軍のマーシー級だが、自衛隊医官による病院船に関する論文の中で、マーシー級について『病院船における戦艦大和か』と医官が発言し、少なからぬ艦艇部隊関係者から賛同を得たという話がある(『防衛衛生』2000年4月)。大きすぎる、遅すぎる、費用対効果が悪すぎる、という観点からだ。

 新型コロナウイルスの世界的流行は未収束であり、その対応も各国とも手探りの状態で、マーシー級ら病院船活用の教訓も出ていない。本当に感染症対策に活用できる病院船を建造したいなら、今は研究と知見の集積を待つべきではないか。

 現在、専用の病院船を持つ国は、筆者が知る限り空母を運用する国よりも少ない(離島を巡る非軍用の小型の病院船を除く)。現在の海上自衛隊もそうだが、大型艦や支援艦艇に手術室を備えるなど、病院機能を併設するか増設可能な形で済ます国が多い。空母以上に希少な船を保有するのなら、もっと慎重であるべきだろう。

 なにより、感染症対策を謳うなら、平時からの感染症情報の収集・研究の要である、国立感染症研究所の機能強化が先に来るのが筋と考えるが、病院船に関しては超党派議連が2つも立ち上がっている反面、こちらの動きは明らかに鈍い。病院船1隻の建造費は規模にもよるが数百億はかかるが、現在の感染症研究所の年間予算は100億にも満たない。感染症対策を名目にするなら、やるべきことは別にあるだろう。

 仮に自衛隊が将来遭遇する可能性のある有事を想定するなら、病院船導入よりも搬送システムの高度化、各地の自衛隊病院の能力拡充といった施策の方が、自衛隊にとり費用対効果が大きいと考える。感染症対策に限っても、今回のコロナ禍において、武漢からのチャーター便帰国者や、ダイヤモンド・プリンセス号の患者約260名を受け入れた自衛隊中央病院が高く評価されたことからも、そちらの方が効果は高いだろう」(2020/5/15 文春オンライン・石動 竜仁から抜粋・再構成)。

 

【参考】

 「日本は海に囲まれた島国で地震大国だ。大地震や大津波で多数の犠牲を出してきたし、これからも必ず起きる。それに備えるために『災害時多目的支援船』つまり病院船が必要だ。東日本大震災などで経験したように、大災害時には鉄道や道路などの陸上交通は寸断される。どうしても海からの支援を考えなければならない。その時に内科、外科などの診療科目を備えた『海に浮かぶ総合病院』が役に立つ。

 今回の新型コロナウイルスのような感染症にも対応できる。トイレなどを備えた個室を完備し患者の隔離を可能にする。はじめから隔離を前提に造られ、医療スタッフが完備した病院船があれば、たとえば今後、クルーズ船などで感染症患者が発生した際にも移乗させて隔離できるし、患者も安心できる。

 さらに原発事故などの場合の除染機能も必要になるだろう。日本の原発はすべて海沿いにある。これからも大地震や大津波に伴う原発事故が起きないとは断言できない。その備えも必要だ。

 米海軍が所有している病院船を視察したことがある。約7万トンで1000床ある。強力な自家発電設備があり、医療廃棄物を処理するための焼却炉もあった。海水を淡水化して生活用水を確保する設備まであった」(2020/3 毎日新聞での衛藤征士郎氏・談による)。

 

【参考】

 「新型コロナウイルスの集団感染が発生したクルーズ船『ダイヤモンド・プリンセス』の対応に、防衛省は延べ約2700人の自衛隊員を投入したが、感染者を一人も出さずに約1カ月の活動を終えた。多数の陽性患者を受け入れた各地の自衛隊病院でも院内感染は確認されず、自衛隊幹部は『最高レベルの防疫態勢をとった。他省庁よりもウイルスへの警戒は徹底していた』と説明する。自衛隊は2月6日からクルーズ船で医療支援や船内の消毒、患者輸送などの支援を開始。乗客乗員の下船が完了した3月1日まで活動を続けた」(2020/3/21 KYODO)。

断章135

 政府の新型コロナに対する対応は、規模が小さすぎる、あるいはスピードが遅すぎる、つまり「too little, too late」との厳しい批判が出ている。

 1億2千万人の民主制国家が方向転換をするのは全体主義国家ほど容易ではないし、「すべてこの世の出来事は、一つの具合の悪いことを除くと、必ずといってよいほど、別の都合の悪いことが生じてくるものだ。・・・。したがって、われわれがなんとしても深く考えておかなければならない点は、どうすればより実害が少なくて済むかということである。(これを)金科玉条と心得て、事にあたるべきなのだ。というのは、完全無欠で何ひとつ不安がないというようなものは、この世の中にはありえない」(マキャベリ)のだから、熟考が必要だろう。しかし、そうだとしても、「too little, too late」である。

 

 思うに、これは新型コロナ生活危機への切実感が、政治家たちに不足しているからであろう(パチンコに行っている庶民を咎めないで欲しい。彼らは、欺瞞的な“戦後教育”の犠牲者なのだ。“責任のない自由”を教えられ、“金銭教育の欠如”のまま、「二宮尊徳」も教わらずに育てられたのだ)。

 

 なぜ、政治家たちには、生活危機への切実感が無いのか? それは、彼らが、「食うに困ったことがなく、口が干上がっていない」からである。

 「国会議員資産公開法」のカラクリを見てみれば、わかる。この「資産公開法」は、《株式》を含んでいない。

 事の深層を知るために、若干の不適切を承知で、あえて鳩山由紀夫氏の亡母・安子様にご登場いただこう。彼女は、ブリヂストン創業家一族出身で、ブリヂストンの株を1240万株も保有していたという。戦前からの保有だから、インフレもあって取得コストはゼロだったはずだ。さらに深層を知るために、深窓の令嬢であった安倍昭恵氏にも登場していただこう(蛇足:昭恵様が時々ブッ飛ぶのは、おじゃる丸様と同様のご愛嬌である)。彼女の生家である松崎家は、森永製菓創業家の森永家と繋がりが深い。となれば、上級国民一族の常として、松崎家の娘である彼女が、時価4,300円の森永製菓の株を100万株程度所有していても不思議ではない。閨閥・縁戚・家族として彼女たちと結びついている政治家たちが、完全な資産公開に後ろ向きなのは当然であろう。

 

 新型コロナによる庶民生活危機に際して、今一度繰り返す。

 「国家の統治を預かる人は、国家が逆境に立たされるのはどのような時か、そしてそのような非常時にはどんな人物が要請されるのか、ということを前もって考えておかなければならない。さらに、どんな辛苦にあおうとも、それに耐えぬくことが自分たちのつとめだという気持ちを人びとに持たせるように、ふだんから人民と苦楽を共にしていなければならない」(マキャベリ)。

 

【補】

 例えば、これが生活危機である。

 「長崎県佐世保市のテーマパークが先月中旬、派遣として働く従業員の契約を一斉に打ち切っていたことが分かりました。その数は数十人に上るということで、会社は、『新型コロナウイルスの影響で業務が減り、本意ではないが打ち切らざるをえなかった』と説明しています。このテーマパークは、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2月末から先月15日までの2週間余りにわたって休園し、それ以降は利用できる施設を屋外のアトラクションなどに限定して営業しています。

 こうした中、営業を再開した先月16日、派遣として働く従業員の契約を一斉に打ち切っていたことが分かりました。

 突然の休業を余儀なくされた派遣労働者は数十人規模におよび、このうち、2月下旬から今月中旬まで働く契約だった20代の男性は、先月16日の退勤後、派遣会社から電話で『きょうで契約終了だ』と伝えられ、住んでいる寮も先月いっぱいで退去するよう求められたということです」(2020/4/2 NHKnews)。

断章134

 「普通、人間は、隣人の危機を見て賢くなるものである。それなのにあなた方は、自ら直面している危機からも学ばず、あなた方自身に対する信ももたず、失った、または現に失いつつある時間さえも認識しようとはしない。あなた方の考えを変えないかぎり、いたずらに涙を流すことになるだけであろう。」(マキャベリ

 

 『わが友マキアヴェッリ』で塩野七生は、「低血圧の人は血糖値が低くなると、やたらとペシミストになる」と書いている。わたしは、おそらく低血圧である。なので、「新型肺炎」について、あまり書かないように“自粛”してきた(つもり)。

 ところが、先週末の東京のお花見名所や繁華街の混雑ぶりをTVで見て驚いた。もう「新型コロナ」感染は、終息したと思っているのか!?

 なるほど、そこは密室ではない。だが、密集しているし密接しているではないか。そもそも、この人数では、そこに向かう交通手段において、すでに感染拡大の「3密」になっているのではないか、と。

 

 怖がりの小心者、低血圧のペシミストだから言うのではない。リアルに死の淵を覗(のぞ)いた時、形容しがたい感情から、涙が流れ歯の根が合わない震えに襲われた経験者としてお願いする。外出は、自粛すべきである。

 

 「感染症対策に詳しい東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は、(中略)『外出自粛といっても、1歩も外に出てはいけないということではなく、外に出ただけ、人とすれ違っただけでは感染しないので、食料などの買い物や気分転換のための散歩はしてもよい。外出の際に最も大切なのは、換気の悪い密閉空間、人が密集する場所、密接した近距離での会話の《3つの密》を徹底的に避けることだ』と話しています。

 そして、『イタリアでみられるような重症者を救えなくなる医療崩壊を起こさないことが目的であり、私たちができるのは、手洗いやマスクなどの感染対策をして、《3つの密》を避けることだ。自分を守り、感染のリスクが高い人たちも守るという意識を強く持ってほしい』と訴えています」(2020/3/28 NHKニュース)。

断章133

 「17日放送の日本テレビ系『情報ライブ ミヤネ屋』では、新型コロナウイルスの感染拡大について特集した。

 各イベントの自粛などで冷え込む一方の景気について、経済評論家の森永卓郎氏は『自粛、自粛でどこに行っても閑古鳥じゃ本当にダメになっちゃう。景気が失速すると、失業者が出て自殺者が増える。戦後最悪のマイナス成長になる可能性あるし、相当、(政府が)本気を出さないとあぶない』と問題提起。

 対策として、『国民1人1人に10万円ずつ配る。とりあえず一家4人で40万円あれば、ローンとかもどうにかなる。12兆円くらい(の予算)でできる。こういうのは細かいヤツを小出しにしてもダメ。ドーンとやらないと』と話していた」(2020/3/18 スポーツ報知)そうである。

 

 第1に、「小出しにしてはダメでドーンとやる」「現金給付」に賛同する。

 すでに、「政府は、国民1人ずつに現金を配る『現金給付』を盛り込む調整に入った。リーマン・ショックを受けた景気刺激策として、2009年に1人当たり1万2000円の『定額給付金』を配布したケースがあるが、今回は低迷する消費の底上げに向け、それを上回る金額の給付を検討する」(2020/3/18 毎日新聞)とアドバルーンが上がっているが、毎度毎度、ちびちび少額であるから、景気浮揚には(経済学でいうアナウンス効果を含め)期待できないのである。

 

 というのは、「2025年頃には50%を超えるだろう」と予想されていた国民負担率。

 まだ2020年だというのに、「国民の所得に占める税金や社会保険料などの負担の割合を示す『国民負担率』は、消費税率が引き上げられた影響などで2020年度には44.6%となり、過去最高となる見通しです。(中略)

 これは、消費税率の引き上げによる税金の負担の増加が年間を通じて影響するほか、所得税を計算する際の『給与所得控除』などの金額がことしから見直され、所得が高い会社員などの負担が増えることが要因です。

 国民負担率は1970年度には24.3%でしたが、年金や健康保険などの社会保険料の増加や消費税率の引き上げなどを背景に上昇が続いていて、40%を超えるのは7年連続です。(後略)」(2020年2月27日・NHKニュース)。

 これは、昔風に言えば“五公五民”で、十分に重いものである。

 だとすれば、仮にアドバルーンにあるような「1万2000円」では、庶民生活にとって「干天の慈雨(じう)」にも、なりようがないのである。

 

 第2に、「国民1人1人、全員に配る」ことに反対する。

 というのは、これでは、富裕な国民にもばらまくことになるからである。

 「20世紀の終わり頃の家計金融資産は、1200兆円余だった。ところが、アベノミクス以降に家計金融資産はグングン増えて1860兆円になった。

 一方、20世紀の終わり頃の国の借金は総計500兆円だった。その後グングン増えて、国と地方を合わせると借金総額は約1100兆円になった」。

 上記から透けて見えることは、上級国民はすでに資産価格の高騰や公共事業・補助金のバラマキを通じて十分に報われているということである。なので、所得制限を行い、低所得者(下級国民?)にのみ給付すべきである。

 

 低所得者ひとりあたり10万円「現金給付」して、総額が8兆円になったとする。当然、国の借金は増える(注:高橋洋一のように、国の借金総額と国が保有する資産とのバランスという観点からは、政府の実質的な借金総額は約120兆円なので、心配はいらないという意見もある)。しかし、先手先手かつ大々的に“増援”することは、戦いの定石である。後手後手かつチビチビでは、成果をあげることはできない。

 

 とはいえ、これは守りの策であって、攻めの策ではない。状況に応じているだけでは、じり貧になることはまぬかれない。「反転攻勢」に打って出る必要がある。

 幸い、日本には、まだ「反転攻勢」に転ずる若干の余力が残っている。

 

 今、必要なことは、平成時代、大いに語られたにもかかわらずないがしろにされている“成長戦略”に本気で取り組むことである。

 新型コロナの蔓延危機により、リモートワーク(在籍する会社のオフィスに出社せず、自宅やレンタルオフィスなどで業務を遂行する勤務形態)やオンライン学習が一部で行われている。植民地化の危機を目前に維新改革をなしとげ、敗戦の荒廃から不死鳥のような復活を遂げたように、この強いられた状況をむしろ奇貨として、産業構造・社会システムの全国的全面的なIT・AI情報化を推進し、さらに諸規制を撤廃して、活力に満ちた日本を再生しよう。

 

【参考】

 「インターネット掲示板2ちゃんねる』開設者・西村博之氏が17日、自身のツイッターを更新した。

 新型コロナウイルス対策の国民1人当たり10万円の現金給付について、麻生太郎財務相(79)が『富裕層から事後回収は困難』などと話したことに見解を示した。

 麻生氏の発言について、ひろゆき氏は『1,000万以上収入のある人からの所得税を1%上げれば、来年の確定申告のときに自動的に10万円以上回収出来ますよ』と私案を提示した」(2020/04/17 スポーツ報知)。