断章8

 わたしは、無名である。

 無名といえば、普通は中島みゆきさんの『地上の星』を思い浮かべるかもしれない。

わたしにとって、名も無き庶民の人生は、美空ひばりさんの『川の流れのように』なのである。

 「知らず知らず 歩いてきた 細く長い この道 振り返れば 遥か遠く 故郷が見える
でこぼこ道や 曲がりくねった道 地図さえない それもまた人生
ああ 川の流れのように ゆるやかに いくつも 時代は過ぎて
ああ 川の流れのように とめどなく 空が黄昏に 染まるだけ」(作詞・秋元康

 

 そして、黄昏(たそがれ)ていく日本で、わたしの死後、カミさんはどうなるのであろうかと暗い気持ちになるのである。

 「正義」「平等」「平和と民主主義」についての空理空論(幻想)を書き散らかしながら、高級ホテルでシャンパンを飲み大排気量の高級車に乗って排ガスを振り撒く自称「知識人」リベラル(ほら、そこの君だよ)が決して理解できない気持に。

 

 「世の中は個人の死とは無関係に存在し続ける」(不詳氏)

 「ん~ん、なるようにしかならないね」(カミさん)だとしても、わが亡き後が案じられ、もがくのである。無名の凡人だからである。