断章58

 8月14日、神戸大の木村幹教授とジャーナリストの辺真一氏が、BS日テレの「深層NEWS」に出演した。

 慰安婦問題や韓国人元徴用工訴訟問題などをめぐって対立する日韓の歴史認識について、木村氏は「韓国政府は、日本側が本当に反省しているなら、誠意を見せるために謝罪すればよいという見方だ」と述べた。辺氏は「(韓国の)保守政権も徴用工の問題はこだわっていた。歴史問題については一切譲歩しないのが、保守政権も含めた歴代政権の立場だ」と分析した。

 

 あるブログ主は、「“漢口の奇跡”といった大人の世代なら誰でも知っている事すら、日本人と韓国人の受け止め方が違ってきている。新日鉄三菱重工などの日本企業は韓国企業に技術援助などをして韓国の経済発展を助けたのですが、韓国ではそのようには教えられていない。

 韓国人にとっては事実を事実として受け入れられないから、ファンタジーの世界を作り上げて信じ込んでいるから、日本人との冷静な議論が成り立たない。1960年代から80年代の事ですら解釈の日韓のすれ違いがあるから、日本統治時代の事など事実認識すら一致するはずがない。

 2002年のワールドカップですら、日本の資金で競技場が作られた事を韓国人は知らないのだろう。知っている人は知っていても口に出しては言えないような状況があるのだろう。“漢口の奇跡”にしても当事者は知っているが、一般国民は自力による経済発展であると信じている。

 おかしいのは韓国の学界やマスコミであり、国内だけでしか通用しない歴史観を教え込んでいる。だから韓国の若い学生が海外留学して世界的に認められた歴史を知ると茫然自失してしまう。中には大学教授に猛烈に抗議する留学生もいるようですが、大きな声を出したからと言って史実は曲げられない。歴史の解釈は国によって異なるから歴史観まで統一することは出来ないが、史実はどうにも曲げられない。

 1997年のアジア金融危機においても日本は韓国を最後まで支えたのに、日本が原因で金融危機になったと韓国では教え込まれている。ここまでくれば日本と韓国の議論が噛み合わない事は明らかである」と言ったが、これはわたしの立場でもある。

 

 ナイーブな心優しい善意の人でありたい“日本市民”は、韓国に“加害した”という“贖罪意識”に囚われているから、例えば、姜尚中・東大名誉教授から「日本は歴史の前で謙虚にならなければならないと一喝」(2019/8/7『韓日関係、診断と解法』特別講演  ハンギョレ新聞)されたら、たちまち“謝罪と賠償”を語りだす。

 ところが、ナイーブな心優しい善意の人でありたい“日本市民”の“謝罪と賠償”とは、見返りを求めない“施し”と一緒であるから、むしろ受け取り側の心理の奥深いところに“屈辱感”“恨”を育むものなのである。それは問題を解決するよりは、逆に問題を拗(コジ)らせていくのである(国連やNGOのアフリカや中東での終わりのない援助をみよ)。

 

 韓国で『反日』が燃え上がっている。第一の原因が、韓国がこれまで積み重ねてきた『反日捏造(ネツゾウ)教育』であるとすれば、第二の原因は、ナイーブな善意の人でありたい“日本市民”が韓国人の心理の奥深いところに育んだ“屈辱感”“恨”である(「地獄への道は善意で舗装されている」のである)。

 

 1. 日本と韓国は、1965年、日韓基本条約を締結し、韓国は日本に対する戦争賠償の請求を放棄した。その代わり、日本は総額8億ドル(無償3億ドル、政府借款2億ドル、民間借款3億ドル)の支援をした。この額は当時の韓国の国家予算の2倍以上である(当時の日本の外貨準備高の半分に相当する巨額でもある)。

2. 浦項総合製鉄(ポスコ)創業者のパク・テジュンは、「パク・ジョンヒ大統領の製鉄立国執念と新日本製鉄・稲山会長の全幅的な支援がなければ、今日の浦項製鉄はなかったはずだ。 資金調達は、米国からの借款のために努力した。しかし駄目だった。 韓国の総合製鉄所は成功の可能性がない、ということだった。 それで考え出したのが、日本との国交正常化で受けた対日請求権資金だ。 さらに日本輸出入銀行から5000万ドルを借り、本格的な工事を始めることができた」と過去に語っている。

 ポスコだけではない。ソウル大学病院の子ども病棟は日本が支援した。

 「当時は未だ中小企業レベルであった現代グループも、船舶部門では三菱重工からエンジンの供給や船舶設計などの中核技術の指導を受け、アメリカの排出ガス規制をクリアできなかった自動車部門は、三菱自動車デボネア、デリカ、パジェロなど数多くの車種やプラットフォームを流用して、ポニーエクセル、ソナタ、アトスなどの車種を生産し、最高級車のグレンジャーも、当初はデボネアの韓国版であった。

 一方、サムスンの依頼を受けて伊藤忠からも多くの幹部社員がサムスン本社に派遣され、組織の近代化に協力するなど、日本の大手各社がオールジャパン体制で韓国の重要産業の発展の手助けをした事実は、記録を調べれば直ぐ判る事である」(北村 隆司)。

3. 日本の首相は繰り返し過去のことで頭を下げた。旧日本軍慰安婦に対して初めて謝罪した1993年「河野談話」。村山富市首相は95年に「戦後50周年特別談話」。小渕恵三首相は98年に「痛切な反省と心からお詫び」。小泉純一郎首相は2001年、ソデムン独立公園を訪れて頭を下げた(小泉首相が献花した追悼碑は公園整備名目でなくなった)。安倍晋三首相は2006年に国立顕忠院を参拝した。

4. 文在寅大統領は、「徴用被害者問題は1965年の韓日請求権協定で解決した」という見解を決めた2005年の盧武鉉政権時に、この決定を下した委員会に民政首席秘書官として参加していた。「盧武鉉政府は2005年に日韓協定文書を公開した後、元徴用被害者7万8000人に1人当り2000万ウォンの慰労金を支給した」(韓国紙)。

5. ところが、文政権は韓国大法院判決に対して、「三権分立の司法が決めたことだから」「経済交流と政治は別だから」「国民の権利行使の手続きに対して政府が介入してはならない」と、わざと手をこまねいてきた。日本が反発すれば、韓国内の文在寅支持が増えるのが狙いだ。

6. 韓国政府が認定した元徴用工被害者数は、総数21万8693人である。すでに判決の出た賠償額は、概ね一人当たり約1千万円である。予想される必要総額は、2兆円である。

7. 韓国が日本政府と日本企業を入れた1+1とか1+2の財団形式にこだわるのは、それを突破口として、さらに日本から大金を取ろうと目論んでいるからである。彼らは、金を受け取った後に又、「戦犯に時効は無い。永遠に謝罪しろ。もっと誠意をみせろ」と言うだろう。

 

【参考】(一部省略あり)

 韓国は徴用工の問題について、三権分立を建前に大統領が何もできないというが、ウイーン条約法条約では、国内法を理由に国際法上の義務から逃れることはできないことを規定している。最高裁判所であろうと、韓国の国内裁判所の決定が日本と韓国の間の国際協定を無効にすることはできない。

 日韓請求権協定第2条1項では、「両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、1951年9月8日にサンフランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」と規定されており、日韓での問題は周知の通り、解決済みの話である。これは歴代韓国政府も認めてきたところである。

 また、同協定はこの協定の解釈や実施に関する紛争は外交で解決し、解決しない場合は仲裁委員会の決定に服することが決められているが、仲裁委員会から逃げているのは文在寅政権であり、日本側にWTOでの紛争から逃げていると主張するのは甚だ身勝手だ。

 話を戻せば、日韓間に横たわる経済連携を阻害する要因は、そもそも徴用工裁判の結果を放置し、日本企業の韓国における投資保護が危険に晒されている状況を放置している文在寅政権の不作為である。日本の措置はそもそも経済制裁ではないし、仮に経済制裁であったとしても、韓国に対して「どの口が言うのか」という話である。

 日本の国際法遵守の表れとして、日本は国際司法裁判所強制管轄権受諾宣言を行っている。これは、日本が自国にとって都合が良くても悪くても、相手国が同じ宣言をしている限り、一方に提訴されたら必ず国際司法裁判所の裁判とその判決に従うという宣言だ。この宣言を韓国はしていない。

 一方、こうした日本の考え方と相容れないのが韓国側の「韓国は被害国であり、日本は加害国であるから、韓国は常に道徳的優位に立っている」という道義的、情緒的な正義の話である。「韓国の方が正しいのだから、日本に対しては何をしても許されるという正義が韓国にはある」と主張しているように、日本からは見える。

 しかし、正義とはそのとき、その状況によって移ろうものだ。どんな侵略戦争であっても正義を大義名分としなかった戦争はない。だから日本は正義ではなく法の遵守を旨としているのである。韓国では政権交代によって正義の基準が変わってしまう。法の解釈も政権によって異なってしまっているのが現状だ。

早稲田大学大学院経営管理研究科教授 長内 厚)

断章57

 東京の銀座や六本木の高級クラブには、通り過ぎた後につい振りむいて見てしまうような美人がいる(らしい)。彼女たちには、同伴というルール(というかシステム)が課せられている(らしい)。出勤前に、寿司が回っていない高級寿司店で、お金持ちと待ち合わせて食事をしてから、一緒にクラブに出勤する(らしい)。

 同伴者には、当然、スケベな下心をもつ輩(ヤカラ)もいるが、金と暇を持て余していて、高級車をみせびらかすのと同じように、連れている美人をみせびらかしたいだけの輩も多い(らしい)。クラブ嬢は同伴させることが利益になり、同伴者は同伴することで自己満足を得たのだ。

 

 ひと昔前、社会主義運動にも、多くの“同伴者”がいた。“同伴者文学”なんてものがあったくらいだ。

 この連中(進歩的文化人)は、次々と同伴する相手を変えた。なぜなら、スターリン嬢も、毛沢東嬢も、金日成嬢も、本命だった日本共産党嬢も、昼日中に近くでじっくり見てみたら、ひどい厚化粧の整形顔だったから失望したのである。中越戦争の際の談話で、「がっくりしました。社会主義に幻滅を感じさせる、これほど決定的なものはないでしょう」と言った菊地昌典(後に東京大学名誉教授になった)のように。

 

 その後、この同伴者たちのお仲間である自称「知識人」リベラルのお気に入りになったのが、“躍動する民主主義”を誇る韓国嬢である(とくにハンギョレ嬢とは相性バッチリ)。

 どれほど“躍動”しているかといえば・・・

 「ソウルの日本大使公邸前で8月7日、韓国の市民団体の代表が日本政府の一連の経済報復措置に対する抗議行動を起こした。韓国警察などによると、市民団体『愛国国民運動大連合』のオ・チョンド代表が午前5時20分ごろから1時間以上にわたり、ソウル市城北区にある日本大使公邸の正門前に乗用車を止めた。『われわれの敵国は日本だ、日本大使館と日本企業は出ていけ』と発言した」(2019/8/7 韓国聯合ニュース)。 

 日本の警視庁なら、15分で排除するだろう(ウイーン条約を守りなさい)。

 「韓国与党・共に民主党のチェ・ジェソン議員は8月5日、あるラジオ番組で『最近は東京で放射性物質が基準値の4倍以上検出されている』と発言した」(2019/8/6 朝鮮日報)。

 いつも平気でウソをつく。

 「韓国・警察などでも反日運動が起こっている。京畿道華城の西部警察署発安地区隊所属の警察官たちはこの日、日本製品不買運動のスローガンが書かれたピケットを持って写真を撮影し、この写真を警察内部のネットワークを通じて公開した。世宗地方警察庁生活安全捜査課もこれに参加した」(2019/8/3 朝鮮日報)。

 警察が・・・やれやれである。

 「7月末には、(韓国)革新系与党のシンクタンクが対日関係の悪化は来春の総選挙で与党に『肯定的影響を与える』と分析した文書の存在が判明。責任者は謝罪したが、政権の対日施策が世論を意識して強硬に傾く韓国政治の構造を印象付けた」(西日本新聞)。 

 さもありなんである。

 「韓国の若者に人気の高いインスタグラムでは最近、『#日本旅行』などを見つけ出し、フォローするアカウントが流行っている。アカウントには『日本旅行に行く売国奴をフォローするアカウント』『あなたをフォローします。おめでとうございます! あなたは売国奴です』などの紹介文が書いてあり、自分がフォローするアカウントに載せられた日本旅行の書き込みや写真を持ってきて嘲弄と蔑視を浴びせる。また、日本旅行に関する写真や書き込みを掲載した人へ“売国奴”“土着倭寇”“日本旅行に行って放射能料理をたくさん食べたか”などの嘲りや非難のコメントをぶつけている」。

 すごく躍動している(笑い)。

 

 ひと昔前の“同伴者”たちと同様に、今、韓国嬢と“同伴”している自称「知識人」リベラルも、失望し落胆する日が来るだろう。

断章56

 わたしは、年寄りである。なので、「月光仮面」の主題歌を終わりまで歌える。

 わたしは、貧乏である。だから、日々の食費を切り詰めて500円玉貯金をして、まれに一風堂のラーメン(Aセット付き)を食べに行くのである。

 わたしは、無名である。人目を気にしなくてよいから、お高い服を買わなくてよいのである。「ファッションセンターしまむら」よりお安い服でことたりるのである(但し、安い服は、ほつれたり毛玉ができやすい)。

 わたしは、ネトウヨである。なので、自称「知識人」リベラル(進歩的文化人)が嫌いである。彼らの「論法の特徴は、正面切っては反対しにくい事柄をふりかざして、それに少しでも異議を唱える者を居丈高に断罪することだ。断罪の言葉は、かつては『平和の敵』であったが、今は『人道の敵』『人権侵害者』となっている。そこには事実に基づいた冷静で客観的な議論など望むべくもない」(『悪魔祓いの戦後史』 副題・進歩的文化人の言論と責任)のである。そして、韓国の文在寅大統領は、彼らと瓜二つである。

 

 日本が貿易管理Aグループから韓国を除外したので、韓国・文在寅大統領は、「加害者である日本が居直って大口を叩く状況を決して座視しない」「盗人猛々しい」と言った。

 これに対して、日本の佐藤正久外務副大臣が8月2日のBSフジで、「『盗人たけだけしい』という品のない言葉まで使っているのは異常だ。日本に対して無礼だ」と述べたという。

 すると、「韓国外交部は3日、外交ルートを通じて日本側に強い遺憾を伝えるとともに抗議した。(中略)韓国外交部当局者は佐藤氏の発言について、『日本政府高官の発言とは思えないほど、国際的な礼儀と常識に合致しない』と批判した」(韓国・聯合ニュース)のである。

 しかしながら、このように日本語に訳されている文在寅発言のハングル「賊反荷杖」の意味は、実はもっとエグい、「悪事を働いた賊が、開き直って杖を振り上げ抵抗する」らしいのである(韓国の文国会議長がかつて謝罪を拒否した文脈でもこの言葉を使っていたということだ)。

 外交上の言葉としては、前例のない“欠礼”に間違いないのである。

 この言葉に、日本人を憎んでいることが透けて見える。

 

 黄 文雄は、『岡田 英弘 著作集』(2015年初版・藤原書店刊)の「月報・6」に書いた。

 「中華の史料、史説、史観からのみ中華世界、東亜世界を語るのは中国の文人だけでなく、日本の朱子学者、中国学者、東洋学者も変わりはない。

 江戸中期以来の国学者があれほど“漢意唐心”と“和魂和心”を分別する鋭い洞察力をもっていたのに、朱子学者が幻想を抱いていたのと同様に、戦後の中国学者が中華世界を“聖人の国”“道徳の国”“仁の国”そして“地上の楽園”と流布してきたことは、空想や妄想を超えて“犯罪”であり、罪を問うべきである。

 中華を中心とする世界観の中にあって、非漢字世界から中華・東亜世界を直視する岡田先生は、アジアにとってだけでなく、世界にとっても特別な存在である」(前後を省略)。

 

 この『岡田 英弘 著作集』第6巻に収載されている「韓国と台湾の対日感情」(1994年)から引用する。

 「韓国人が、日本を目の敵にして攻撃するのには、重大な理由がある。それは、韓国文化というものの実体がないからである。今の韓国文化と言われるものは、日本の文化の模倣にすぎない。だから、今でも韓国では日本語の歌をそのまま放送することや、日本の映画を放映することに、断固として反対している。日本からの文化の流入を自由化したとたんに、韓国文化が跡形もなく崩れ去ってしまう、という恐怖感にかられているからである(引用者注  ――韓国のテレビ放送において日本語の歌詞を放送することの禁止、日本のテレビ番組を放送することの禁止等がある。近年、徐々に制限を緩和しつつある )。そのことを韓国人に言うと、烈火のごとく怒るが、本当のことである。そういう点を、われわれは理解しなければならない。韓国人のアイデンティティというのは、日本人を憎むことしかないのである」。

 

【参考】

 「文在寅政権発足以降、日本政府に対する韓国政府の“外交的非礼”は目に余るほど頻繁ではないか。だが、それは今に始まったことではない。1995年には韓国政府との事前のすり合わせを経てアジア女性基金が設立され、内閣総理大臣の手紙と償い金が元慰安婦に送られた。韓国政府は当初はこれに『協力する』と評価していたが、慰安婦支援団体や韓国メディアからの反対があり、後にそれを覆す事態となった。

 日本に対してだけではない。韓国の外交的非礼といえば、『台湾との断交』を忘れるわけにはいかないだろう。韓国と台湾の国交が途絶えたのは、1992年8月のことだった。そのことを『外交的に非礼を極めている』と回想する人物A氏に、かつて台北で話を聞いたことがある。A氏には、政府の関係機関でそれなりの職位であったこと以外は身分を一切明かさないという条件で、インタビューに応じてもらった。

 A氏によると、そもそもかつての台韓関係は蜜月状態だった。両国はアメリカの同盟国のなかで共産主義国家に対峙する最前線であり、朝鮮戦争でも台湾は相応の犠牲を払ったこともあり、『両国は血で結ばれた兄弟のような存在だった』という。

 それが暗転したのは、韓国の一方的な断交による。通常、断交の通知は非公式には半年以上前に送られてくるもので、それが外交的な礼儀というものだと前置きしたうえで、『韓国だけは全く違った』と断言する。

 『韓国が大陸の中国と国交を結ぶかもしれないという報告を受けた台湾政府は、韓国政府に対して何度も確認をしましたが、韓国政府はその都度、断交を否定していました。そして突然、断交すると非公式に言い出すと、そのわずか5日後の23日には公式的に断交を通知してきたのです。それだけではない。韓国政府が私たちに命じたのは、台湾大使館員の24時間以内での国外退去と、72時間以内での物品・設備の撤収でした。断交通知の翌日、韓国は中国と国交を結んで、かつての台湾大使館を中国大使館にしてしまいます。こんなやり方をしたのは韓国だけです』(A氏)

 断交すらも直前までひた隠しにしていた過去のある韓国。これから日本に対してどんな“非礼”があったとしても、驚いてはいけない」(2019/7/20  藤原 修平)。

断章55

 韓国は、年初から強烈で深刻なPM2.5スモッグに悩まされた。季節が移るか、良い風が吹いて、なんとかならぬかと苦悩した。余りの酷さに、韓国メディアが「責任は中国にある」と叫んだら、中国メディアから一蹴された。

 「ソウルなどで発生しているスモッグが中国と全く関係ないとは言えない。しかし、韓国メディアが言うような50%以上、75%以上が中国からという話は、常識の域を逸脱している。だいいち、中国北部のスモッグはここ数年改善傾向にある。それなのにどうして韓国のスモッグはますます深刻化しているのか。まさか、北京のスモッグをみんなビニール袋に詰め込んで、ソウルの上空にバラまいているとでも言うつもりなのか」

 「韓国人は『アジアでもとりわけ民族感情の強い』国民で衝動的なところもあるので、世論がマスコミの情報に踊らされやすい傾向にある」と、論駁されたのである。

 

 3月、「中国が在韓米軍のTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)配備に反発して出した“禁韓令”の一環で韓国への団体旅行を禁じてから2年が経過した。一部で再開されたものの、中国人観光客は戻っておらず、不振が続く。『中国人観光客が戻ってくれば道が開けそうだが、中国がこんな偏狭な国とは知らなかった』とソウル市内で観光客向けにアクセサリーを売る商人が販売減を嘆いた」と、韓国・中央日報が伝えた。

 

 5月、「最低賃金を2年間で29%も引き上げたことで、庶民層の雇用である臨時職、日雇いの働き口が19万5000人分も消えた。台所が苦しくなった庶民が借金をしたことで、家計債務はさらに膨らんだ。貯蓄銀行などノンバンク(第2金融圏)から借金をして、年20%以上の高金利に苦しむ債務者が2200万人を超えた。国民2-3人に1人の割合で“危険な債務者”がいる計算だ。うち貸金業者にまで手を伸ばした人は412万人に達する。昨年廃業した零細自営業者は100万人に達し、自営業者の金融債務はムン・ジェイン政権発足以降に14%増えた」と、新聞は書いていた。

 

 韓国の新聞も、さすがに暗い話題だけでは良くないので、元気の出そうな旧聞を探し出してみた。

 「最悪に突き進むような韓日関係を見てイ・ゴンヒ・サムスン会長が説破した“克日論”が思い出される。S級の若い人材を日本のB級電子メーカーだった三洋電機に産業研修生として送りあらゆる蔑視の中で半導体製造技術を学ばせた李会長が口癖のようにした話がある。『面積で見ようと人口で見ようと蓄積された国力で見ようと韓国が国対国として日本を跳び超えるのは容易ではない。しかし企業としてサムスンはどんな日本企業にも勝つことができ、そうしなくてはならない。』 

  彼の話通りにサムスン半導体と家電、スマートフォンなどで日本企業を確実に押さえて世界の最頂上に上った。三洋電機だけでなくかつては世界市場を制したソニーパナソニック東芝などがサムスンに押され半導体や家電などの事業を放棄した」と。

 

 だが、わたしたちは知っていた。「漢江の奇跡」(これも日本の援助があってこそ)に続く韓国経済の躍進は、日本の経済高度成長をなぞった加工型輸出貿易の賜物であって、いずれは同じ発展パターンを真似た後進国にキャッチアップされるだろうことを。

 果せるかな、「サムスン電子の中国スマートフォン市場のシェアは2013年の19.7%から下がり続け昨年は0.8%まで落ち込んだ。同じ期間にファーウェイ、VIVO、オッポ、シャオミの中国携帯電話大手4社のシェアは23.1%から85.1%と3倍以上に拡大した。テレビ、冷蔵庫、洗濯機など家電産業で世界最高の競争力を持つLGエレクトロニクスも中国では振るわなくなっている。LGエレクトロニクスの中国売り上げは2009年の4兆7594億ウォンから昨年は2兆3768億ウォンと9年間で半減した」(2019/6/05 韓国経済新聞)のである。

 

 ぼんやりとした不安、高止まりする青年失業率。そこで、気晴らしに「親日積弊清算」に力を入れてみた。

 「韓国・京畿道教育庁は6月、道内の小・中・高校およそ2300校の児童・生徒および教師を対象に『学校生活の中の日帝残滓(ザンシ)発掘調査』を行い、“修学旅行”“ファイティング”といった日常用語を清算対象の『日帝残滓』に挙げたという。修学旅行は日本統治時代、朝鮮の生徒に日本を見学させた行事から始まったとして、修学旅行という言葉まで『親日』と決め付けたのだ。『親日残滓清算プロジェクト・タスクフォース』を立ち上げたイ・ジェジョン京畿道教育監(教育庁のトップ)は、東西南北が入っている校名も『日帝残滓』とする立場だという」(2019/7/9 朝鮮日報オンライン)。

 ところが、これもなかなか思うに任せない。たちまち、「京畿道教育庁が管内の初等学校(小学校)、中学校、高校に文書を送り、『日帝残滓清算』との立場から“修学旅行、ファイティング、訓話”などの単語は日本から来たので『日帝残滓』と指摘した。児童・生徒たちに『本人が考える日帝残滓の概念はどういうもので、それらはどうやって清算すべきか』と問い掛けた。しかしこの言葉の中にある“本人”“概念”“清算”は日本から来た言葉だ。“単語”もそうだ」と指摘される始末である。

  

 韓国にとっては、うつうつと楽しくない日々だった。

 「韓国企業が所有・管理していた北京・長安街のサムスン現代自動車の広告板が、6月29日深夜に事前通知や補償の約束もないまま北京市当局によって全て奇襲撤去された。大阪の主要20カ国・地域(G20)首脳会議で、習近平国家主席は各国首脳に『海外企業に対する公平な待遇』を約束し、米国に向けて『平等で相互尊重に基づいた貿易交渉』を要求したが、現実は外国企業との契約を一方的に無視する中国の素顔をありのまま見せつけた」(2019/7/1 朝鮮日報オンライン)時も、じっと我慢の子であった。

 

 ときあたかも、これまでおとなしかった日本、公館前にいやがらせの偶像を置いても耐えた日本、憎い日本、本音では仮想敵国である日本(ウソだと思うなら、韓国海軍主力艦の名前を見てみたまえ)が、対韓国輸出管理を強化すると言いだしたのである。

 「なんてこった、あのクソ日本野郎が!」である(桃太郎侍でもないのに、「許さん!」となったのである)。

 

 「韓国与党・共に民主党は7月17日、日本政府による輸出管理強化措置発動を受けて党内に設置した『日本の経済報復対策特別委員会』の名称を、『日本の経済侵略対策特別委員会』に変更したと発表した」(2019/7/18 時事通信)。

 「日本の経済報復に憤怒した日本製品不買運動が韓国全土に広がっている。不買リストが出回るかと思えば、日本旅行キャンセルも続出する。日本車への給油を拒否するガソリンスタンド、日本製品の販売拒否をする店舗網も登場した。ソーシャルメディアには『行きません、買いません』というオンラインポスターが広まっている。日本製品を買ったり日本に旅行に行ったりすれば『売国奴』扱いを受ける状況だ。与党議員は『義兵を起こそう』と加勢した。さらにアイドルグループの日本人メンバー退出要求まで佳境に入っている」(2019/7/10 中央日報)。

 日本旅行不買運動には、とりわけ熱心である。

 「日本の松山大学に勤務するチャン・ジョンウク教授は7月15日に韓国のラジオ番組に出演して、『日本旅行不買運動が非常に(日本に)大きな打撃を与えるものと承知している』と明らかにした。チャン氏は『特に観光客の30%が韓国人である別府、福岡など中小地方都市の商人、宿泊業は直ちに被害を感じる』とし『そのために道知事が、景気が突然悪化すれば(日本与党の)自民党に圧力を加えることができる。そうした点で(打撃)効果がある』と話した」(2019/7/17 中央日報)そうである。

 李承晩政権時代から連綿と続いてきた「反日」教育の”成果”がフルに発揮され、かつ極端な国民性があり、さらに大衆運動の論理の然らしめるところ、行きつくところまで行くに違いない。なにしろ、同盟国の駐韓アメリカ大使を切りつけ、同盟国のアメリカ大使館を反米デモで包囲してアメリカ大使館側から「外交公館保護義務を規定したウイーン協約違反だ」と抗議された国なのだから。

 

 韓国は日本に対して、「世界貿易機関WTO)に提訴する」といきり立った。ところが、なんと、藪(ヤブ)をつついたら蛇がでた。

 世界貿易機関WTO)は、“発展途上国”に対して、「特別かつ異なる待遇」(S&D)を与えている(この「特別かつ異なる待遇」が認定されれば、関税や補助金などで優遇措置を受け、自国産業を保護することができる)。

 「韓国は1996年に経済協力開発機構OECD)に加入した当時、先進国入りを宣言するよう要請されたが、農業分野への打撃を懸念し、農業を除く分野で開発途上国への優遇を主張しないことで合意し、開発途上国にとどまった」(ロイター通信)。

 かねて先進国入りをしたと鼻高々だった韓国だが、実は、いまだに“発展途上国”として、この「特別かつ異なる待遇」(S&D)を受けていることが明らかになったのである。ズルをして“自由貿易”(?)の利益を満喫していたのである。

 

【参考】

 「世界貿易機関WTO)ルールがもはや時代錯誤なのは、中国のような自由貿易を阻害している国を加盟させてしまったこと。また、今回の問題を招いた発展途上国の優遇措置、いわゆる『S&D』(特別のかつ異なる待遇)があることだ。これは、世界貿易の発展のためには必要な措置だが、発展途上国か先進国かを決めるのが“自己申告”という点がトンデモナイのである。

 そのため、中国や韓国のように、いつまでも自国を発展途上国と言い張る国が出てくる。とくに、中国は、加盟時に約束した市場の自由化や透明性を高める努力を明らかに怠ってきた。

 韓国は、昨年、台湾がもはやこれ以上発展途上国と言い続けるのは恥ずかしいと自ら優遇措置を放棄したのにもかかわらず、知らん顔を通した。

 すでに、トランプが言うようにWTOは壊れている。アメリカは何度もWTO改革を訴えたのに聞き入れられなかったため、2016年から、WTOの紛争処理機関で最高裁の判事に当たる上級委員会の委員の任命(任期は4年、再選は1回限り)を拒否してきている。

 WTOの上級委員会は、7人の定員から3人が選ばれて審理を行うことになっている。ところが、現在、アメリカの拒否が続いているため、上級委員が3人しかいない。このうち2人の任期は、今年の12月に切れる。

 となると、上級委員会は実質的に機能停止に陥る。つまり、WTOは紛争裁定ができなくなる。トランプが発展途上国優遇への不満をぶちまけなくとも、壊れるのは必至である。

 韓国はWTO加盟国だから、このような状況をわかっているはずだ。それなのに、7月24日にジュネーブで開かれたWTO一般理事会で、日本の輸出管理強化を不当だと訴えた。もはや、審理さえされないはずなのに、時間の無駄である。

 しかも、日本の措置は“徴用工問題”に対する報復だとしたのだから、その外交センス、時代錯誤ぶり、いや国家そのもののあり方を疑うしかない。

 いまや世界は、ファーウェイに象徴されるように、中国排除に向かっている。とくに、世界貿易からは、今後、中国は排除されていくだろう。脱中国のサイプライチェーンが形成されようとしている。

 そんななか、韓国は、どうしようというのだろうか?

 “ホワイト国”外しでは、反日を旗幟鮮明にしたが、今回の“発展途上国”外しでは、相手がアメリカだけに沈黙している。本来なら、台湾同様、自主返上だろう」(山田 順)。

 

【参考】

  韓国銀行は2018年1人当たりの国民総所得(GNI)が3万1349ドルで前年(2万9745ドル)より5.4%増えたと2019年3月5日、発表した。ドル基準で2006年2万ドルを突破してから12年ぶりに3万ドルの高地に上がった。これで韓国は1人当たりGNIが3万ドル以上であり人口は5000万人以上の「30-50クラブ」に世界で7番目に名乗りを上げることになった。

 

【参考】

 韓国・国民が大気汚染問題を憂慮し、深刻に受け止めている状況で、大企業が大気汚染物質の排出を隠蔽していた事実が発覚した。化学大手のLG化学とハンファケミカルが微粒子物質の生成物質の排出量を捏造し、虚偽で報告した。サムスン電子を含めてGSカルテックス、錦湖(クムホ)石油化学、ロッテケミカルなど大手企業6社も大気汚染物質の排出量を捏造した疑いを受けている。これらの中には特定の大気有害物質排出基準値を173倍も超過したにもかかわらず、「異常なし」と捏造した事例もあった。

 

【参考】

 ブルームバーグ・インテリジェンスによれば、世界造船市場における中国のシェアは2021年までに52%に達する。08年は24%だった。一方、08年に38%のシェアを誇った韓国は21年までに22%に低下する見通し。中国はまた中国船舶重工集団と中国船舶工業集団の合併を計画しており、現代重工をはるかにしのぐ巨大造船会社を誕生させようとしている。

 多くの業界で成長が鈍化している韓国では、財閥(チェボル)による産業モデルの有効性に疑問を抱く国民が増えている。

 

【参考】

 「日本経済新聞社がまとめた2018年の『主要商品・サービスシェア調査』では、薄型テレビのシェアで中国勢の躍進が続いている。3位のTCL集団、4位の海信集団(ハイセンス)がシェアを1ポイント前後伸ばした。世界2強であるサムスン電子LG電子の韓国勢はいずれもシェアを低下。シェアを3ポイント伸ばした6位の中国・小米(シャオミ)も含めた中国勢の追い上げが鮮明だ」(2019/7/30 日本経済新聞)。

 

【補】

 「韓国の潜在成長率は2%台と、約20年で半分になった。出生率は1を下回り、労働人口の減少が見込まれる。生産性まで落ちると潜在成長率が徐々にゼロに向かうという懸念がくすぶっている」(2019/9/19 日本経済新聞)。

 

【補】

 「韓国のホン・ナムギ経済副首相兼企画財政部長官は9月20日、対外経済閣僚会議の冒頭で、世界貿易機関WTO)で韓国が発展途上国として優遇措置を受けていることについて、『WTOでほかの途上国が韓国の優遇を問題視するケースが増えて』いると発言した」(2019/9/20 韓国・聯合ニュース)。

 

【補】

 「7月26日にトランプ米大統領は韓国・中国・メキシコなどに対し『世界貿易機関WTO)で発展途上国の地位を放棄すべきだ』と圧力を加えた。韓国などが決定する期間を90日と定めた。その期限が10月23日だ。

 期限前日の22日に韓国のユ・ミョンヒ通商交渉本部長は米ワシントンでロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表、ラリー・クドロー国家経済会議(NEC)委員長に会い、この問題を議論した。(中略)

 韓国は農業と水産業の分野で途上国の地位を主張しながら、低い関税と補助金許容などの特恵を受けている。途上国の地位の放棄はこの分野に打撃を与えると予想される。(中略)

 米国はトランプ政権に入ってWTO改革問題を重要課題に設定した。加盟国のうち経済発展段階がかなり高い国が途上国の恩恵を受けるのは正当でなく、これを管理できないWTOを改革すべきだという問題を提起してきた。ユ本部長は途上国地位放棄に対する政府の立場は決まっていないと明らかにした。(中略)

 トランプ大統領は7月26日、ツイッターを通じて『裕福な国が途上国だと主張して特恵を受ける現在のWTO体制は故障している。これ以上は許されない』とし『米国の犠牲の上で不正行為をする国が特恵を受けないようにすべきだという指示をUSTRに出した』と明らかにした。(中略)

 (その後)シンガポールとブラジルは途上国地位の放棄を宣言した。中国は途上国地位を放棄できないという立場を明らかにした」(2019/10/23 中央日報)。

断章54

 「香港中心部で7月21日、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする『逃亡犯条例』改正案に反対する大規模デモが行われ、警察は夜、居残っていたデモ隊の強制排除に乗り出した。警官隊とデモ隊が衝突し、警察は多数の催涙弾を使用した。香港政府によると、8人が負傷した。

 若者のデモ隊の一部が、中国政府の出先機関『香港連絡弁公室』に卵を投げたり、国章に黒い液体をかけたりした。習近平指導部は『侮辱行為』でメンツをつぶされた形で、中国政府は『中央政府の権威に公然と挑戦する行為で、絶対に容認できない』と非難するコメントを発表、強く反発した」(2019/7/21 共同通信)。

 既報のとおり、今年の、「5月12日、天安門事件で、失脚した故・趙紫陽元総書記の政治秘書だったパオ・トン氏が、香港の民主派団体『香港市民支援愛国民主運動連合会』が主催した同事件発生30年に関するフォーラムで中国共産党を非難する声明を発表した。

 パオ氏は『天安門事件に関する随筆』と題した声明で『六四(天安門事件)は過去の悪夢ではない。六四以降、あらゆる権限を持つ共産党が軍や警察を率いて、国民に暴力的な抑圧を加えている』と非難し、『中国人は人生を共産党に厳しく支配されているが、香港も同じ事態が避けられないだろう』と訴えた」(5/12 朝日新聞デジタル)。

 

 中国共産党は、親中派を動員して反撃する機会をうかがっている。

 「7月20日親中派の集会には主催者発表で31万6千人(警察発表は10万3千人)が参加した」(日本経済新聞)。

 

 自由を守りたい条例反対派と経済的な混乱を厭う親中派が激突して大きな混乱がおきれば、中国共産党人民解放軍を動かすだろう。

 そして、こう言うに違いない。

 「ここでは、だれもが幸せになり、おまえの自由のもとではどこを見回してもそうであったように、反乱を起こしたり、たがいを滅ぼしあったりする者もいない。・・・われわれに自由を差しだし、われわれに屈服したときに、はじめて自由になれるのだ」(『カラマーゾフの兄弟』)と。

 

【補】

 「香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの盧建霊記者はツイッターで、『香港のデモ参加者が疑問に思っているのはただひとつ、警察はどこだ?』、『Tシャツ姿の男たちはデモ参加者を襲うように命令された暴漢だと伝えられている』と投稿した」(7/22 BBCnews)。

 

【補】

 「香港北東部の大埔区で10月19日午後、民主化デモを呼び掛けるビラを配っていた男性(19)が刃物を持った男に襲われ、首と腹部を負傷した。香港では17日にも、民主化要求デモを主催する市民団体のリーダーが、路上で正体不明の暴漢らにハンマーで襲われたばかり。

 警察によると、被害者の男性は当時、黒の服とフェースマスクを身に着けていた。現場は香港の民主化運動を支持するメッセージを書いた付箋などをはりつけた『レノンウォール』の近くだった。レノンウォールは数か月にわたりデモが続く中で各地に設置されており、現場近くのものは最大級だった。

 地元メディアが公開した写真には、腹部を切られて内臓が露出し、重傷を負った被害者が写っていた」(2019/10/20 AFP)。

断章53

 またまたルトワックである(おもさげながんす)。

 

 戦後日本の「進歩的」文化人、自称「知識人」リベラルたちが書いたものは、時を経ればほとんど読むに堪えない、時代に耐えないものばかりである。

 しかし、ルトワックが書くものは、・・・

 第一に、戦略(の逆説的論理)を解き明かして、時を経ても読むに堪え、時代に耐えるものである。

 第二に、時代の要請に答えている。ここでいう時代とは、「日本は、政府も国民も、過去70年間、『リスクを取ること』そのものを頑(カタク)なに避けてきた。リスクを避け、戦わず、死者を出さないこと、これこそが真の平和だと思っていたのだ。しかし、それは錯覚だった。このような“空想的平和主義”が通用した古き良き時代は終わった」(宮家 邦彦)後の、今である。

 

 「戦略とは、一般的には特定の目的を達成するために、長期的視野と複合思考で力や資源を総合的に運用する技術・応用科学である」(Wiki)。

 

 『自滅する中国』(原題は、「戦略的論理から見る中国の台頭」 日本語版2013年刊)の第16章から、韓国に関連するところの《要約紹介》をする。

 

 「あらゆる独立国家は、必ず絶対的な主権を主張するものだ。しかしすべての国家が、外国への従属に抵抗するような政治文化に動かされているわけではない。中には言いなりになる国家もある。そしてたいていの場合、言いなりになる国家の動機は『恐怖』にあるものだ。しかし、韓国の場合、中国にたいする『恐怖』­­­は、二次的かつ間接的な要因でしかない。むしろそれよりも大きな動機は、中国と中国人への文化面での深い敬意--------この敬意は(一般国民ではなく)エリート層のアメリカと米国人への反感に見ることができる-------であり、そして結局のところは、韓国が『中国市場の相対的な重要性が益々増している』と痛感していることにある。(中略)

 13世紀に新儒教宋明理学朱子学陽明学など)が紹介されると、その熱狂的な信者となった朝鮮人は、自らを『小中華』・・・と位置づけたのである。その結果、朝鮮では中国よりも日本からの文化の押しつけの方が怒りを残すことになってしまった。(中略)

 北朝鮮からの攻撃にたいして即座に確固とした態度で相応の報復をしようとしていないことからもわかるように、実際のところ韓国政府は、米国と中国に依存する従属者となってしまっている。(中略)

 中国への見苦しい媚び方の中でもとくに注目すべきなのは、韓国政府がダライ・ラマへの訪問ビザ発給をいつまでも拒否していることだ。(中略)

 現在の政策を保ったままの韓国は、いわゆる『小中華』の属国として、しかも米韓同盟を続けたまま、中国による『天下』体制の一員となることを模索しているのかもしれない。(中略)

 このような韓国の安全保障の責任逃れをしようとする姿勢は、『日本との争いを欲する熱意』という歪んだ形であらわれている。ところが日本との争いには戦略的に何の意味もないし、日本へ無理やり懲罰を加えても、韓国側はリスクを背負わなくてもすむのだ。2010年に韓国は北朝鮮から深刻な攻撃を二度受けたが、それにたいして抑止行動も懲罰も行っていない。ところがその攻撃の間ですら、37名の韓国の国会議員は公開討論会を開催し、日本の対馬に対する韓国の領有権の宣伝に努めていたのだ。(中略)

 2011年12月14日には『従軍慰安婦』を表現する上品ぶった韓国人少女の像が日本大使館の向かい側で除幕された。これは毎週開かれる賠償請求デモが一千回を迎えたことを記念したものだった。当然のことだが、これは韓国に全く脅威をもたらさない国を最もいらだたせるような行為であった」。

 

【参考1】

 「イギリスや日本など国連人権理事会加盟の22カ国は、中国・新疆(ウイグル自治区)におけるウイグル族の処遇について、中国政府を批判する共同書簡に署名した。

 共同書簡は国連人権高等弁務官あてのもので、10日に公開された。『新疆のウイグル族などの少数派を特別に対象とした、大規模な収容所や監視、制限の拡大』に関する報告書を引用し、新疆の現状を非難している。

 その上で中国政府に対し、国連や独立した国際組織の査察団へ、『新疆への実質的なアクセスを認める』よう強く促している。」(2019/7/12  BBC news)

 7月12日現在、韓国は署名していない。

 

【参考2】

 2018年、韓国の中国に対する部品貿易黒字は459億ドル。日本に対する部品貿易赤字は151億ドルである。

 

【参考3】

 「韓国軍が、垂直離着陸(VTOL)型のF35Bステルス戦闘機およそ10機を搭載できる3万トン級の軽空母の建造を推進する。今回の決定は、このところ韓日関係が最悪へと向かう中、日本の軽空母保有の動きに対応しており、注目される」(2019/7/23 朝鮮日報)。

断章52

 「7月15日午後、韓国の文大統領は、大統領府で主宰した首席・補佐官会議で、『日本経済に大きな被害が及ぶだろうと警告しておく』と語った」(2019/7/15 中央日報)。

 

 日本に対してつねに上から目線の「文 在寅・韓国大統領は、“北朝鮮”からの避難民の息子として生まれた。弁護士や人権運動に参加した後、ノ・ムヒョン政権で大統領側近として活躍した後、国会議員に当選し、2017年5月に大統領に当選した」(Wiki)。

 

 韓国の新聞によれば、文大統領の世評は、「正しくていい人物だ」「清く正しい印象を与える」そうである。

 「清廉の人」と呼ばれ、「人権派」弁護士として評判が良く、やがて国のトップになった人物といえば、わたしが思い出すのは、バラク・オバマではなくてマクシミリアン・ロベスピエールである(韓国でこんなことを書くと名誉棄損で訴えられる)。

 

 ロベスピエールは弁護士として、「なぜこんなにも貧しい人がいるのか。なぜ格差はなくならないのか。どうすれば、この社会を変えられるのか」と悩みながら活動していた。

 「『弱い立場、抑圧された人々、貧しい人たちを擁護する以上の崇高な仕事があるだろうか?』という言葉を残す程に、ロベスピエールという人は真っ直ぐで清廉潔白の人だった。

 ロベスピエールは、1789年に三部会議員選挙に当選する。後の恐怖政治からは想像しにくいかもしれませんが、当時の彼はギロチンによる死刑の廃止を訴えたり、自由・生命・家族の“法による保護”などを唱えていたのです。

 1793年、ロベスピエールは革命の最高責任者となります。

 政治腐敗を嫌ったロベスピエールは、そのストイックな姿勢から“腐敗しない男”とも呼ばれました。

 その後、彼は、現実から目を背け、理想だけを見つめ、脇目もふらず奔走します。その結果は、ギロチンによる恐怖政治でした」(注:神野 正史の記事を部分的に省略)。

 

 「キム・ジョンイン氏も年頭インタビューで、『(文 在寅大統領の第一印象は)正直で率直な人に見えた。ところが、最近は話の前後で言葉が変わり、自分の言葉を他人の言葉のように言う。私が文在寅大統領のことを見誤ったのか、でなければ人が変わったのか、それは分からない』と言った。

 『清く正しいという第一印象』に裏切られ、衝撃を受けたという話ばかりだ。みんな何かに取り憑かれて幻を見たのだろうか、それとも権力の味を知った歳月が人を変えたのだろうか」(朝鮮日報 2019/5/19)。

 

 「正義感と真理に対する確信が妄想と結び付き、政府の政策として執行されるとき、それは、最悪の結果を招く」(2019/5/19 ユン・ピョンジュン韓神大学教授)。

 

 ある人によれば、「日光東照宮の陽明門は、わざと1つだけ柱をさかさまにしている」そうである。「なんでも完璧すぎると魔が入りこむから」だそうな。

 

【補】

 伝聞を含んでおり、また自著を出版できない悔しさがバイアスを与えているとしても、傾聴すべきである(以下:2019/10/29 NEWSポストセブンからの要約紹介)。

 

 「文 在寅大統領は政治的目的のためなら人命をも犠牲にする人物だということを知って欲しく、日本メディアの取材を受けました」。こう語るのは脱北者で作家の李朱星(イジュソン)氏だ。

 かつて人権派弁護士として活躍した文 在寅氏は、大統領に就任してからも“公正と正義”という価値観を標榜する韓国リベラルの旗手として大統領まで上り詰めた。日韓の懸案となっている歴史問題でも、“被害者中心主義”を唱え、人権派として振る舞っている。

 そんな大統領が人命に対して冷淡であるとは、いったいどういうことなのか──。

 平壌で生を受けた李氏は貿易の仕事に就いていたが、友人の脱北を助けたために逮捕されかけ、自らも2006年に脱北。NKデザイン協会という脱北者支援団体での活動を続けながら、小説を多数発表してきた。

 「私は北朝鮮の過酷な現実を知ってもらうために小説を書き始めました。デビュー作の『ソンヒ』は脱北者の女性が中国に売られ性奴隷にされてしまう実話をもとにした小説。この作品は韓国芸術文化団体総連合会の文学大賞を受賞しました」(李氏)。

 2作目である『紫色の湖』は、韓国民主化の原点ともいえる光州事件を題材とした作品だ。李氏は光州事件北朝鮮の関連を小説で描き、同書は約1万部という韓国では異例のヒット作となった。だが、光州事件の英雄である金 大中元大統領を信奉する韓国左派陣営からは、不買運動刑事告訴を起こされるなど激しいバッシングを受けた。彼らが現在、文政権を支える勢力となっている。

 「作家として韓国で一定の評価を得ながら、現在、私の作品は出版すらままならない状況にあります。特に新しい小説では、文在寅の“ある過去”に焦点を当てたことを、出版社から問題視されたのです」(同前)。

 李氏の最新作である『殺人の品格 宿命の沼』は、実際に起きた「脱北者強制送還事件」を題材としている。

 時は2008年の盧 武鉉政権まで遡る。盧政権末期に当たるこの時期、文在寅氏は大統領秘書室長の職にあり、「盧武鉉の影法師」という異名を持つ実力者と評されていた。

 事件が起きたのは2月8日早朝だった。西海(黄海)にある延坪島付近をゴムボートで漂流していた北朝鮮住民22人が、韓国海軍に救助された。彼らは15~17歳の未成年3人を含む、親子、夫婦、叔父などのグループで、水産事業所や共同農場で働いていたとされる。

 韓国政府は救出された北朝鮮住民を、その日に板門店を通じて北朝鮮に送還する。国情院は後に「彼らはカキ漁中に遭難したもので、脱北者ではない」と明かした。

 同事件については報道が少なく、韓国内では救助や送還の事実すら知られていない状況にあった。李氏は独自に調査を進め、ある疑惑に辿りついたという。

 「私はこの事実を、文 在寅が大統領選に出馬したときに知りました。北朝鮮情報筋から、22人は漁をしていたのではなく、何らかの方法でゴムボートを入手し北朝鮮から逃げようとした脱北者だったとの情報を得たのです。ゴムボートは北朝鮮では軍しか使用できないよう規制されている。なぜかというと、軽くてスピードが出るため脱北に使われ易いからです。ゴムボートに乗っている時点で漁民ではなく、韓国軍は脱北者だと理解していたはずです」。

 この事件については、同年2月18日放送のVOAボイス・オブ・アメリカ、米政府運営の放送局)でも、次のような疑義が呈されていた。

 〈一家親戚や隣人など22人もの少なからぬ人数が一緒に船に乗っていたこと、旧正月に漁労作業に乗り出したこと、未成年が含まれたことなどから、ただの漂流ではないとの疑惑が相次いで提起されている。国情院はこれらの住民に亡命する意思をきちんと確認したのか。彼らが板門店に送られるまでに、調査時間がわずか8時間しかなかった。22人に対する調査時間としては納得しがたい〉(VOA要約)

 李氏は語気を強めて語る。

 「脱北者北朝鮮に送還するのは“殺人”に等しい行為です。実際に1か月後に、北に戻された22人は黄海・海州公設運動場で公開処刑された。銃殺刑です。私が確認したところでは、北朝鮮内の講演でも『反逆者は処刑する』と22人の処刑について語られている」。

 『殺人の品格』では、22人の処遇をめぐり、青瓦台内で交わされたという生々しいやり取りが描かれている。

 〈盧 武鉉「彼らを北に送ったら殺されるのではないか」
 文 在寅「22人の脱北は韓国政府にとって負担になる。南北関係を良くするために、それは甘受しなければいけない」〉

 左派政権の奥の院に切り込んだ同作だが、前述のように韓国内では“発禁本”として封印されてしまった。李氏が言う。

 「脱北者を北に追い返すという冷酷な決断を下したのが、当時大統領秘書室長の文在寅だった。小説で書いた文在寅の言動は、政府要職にいた人物から聞いた話であり、限りなく真実に近いやり取りです。この小説は文在寅の正体を広く知ってもらうために執筆しました。しかし、10社以上の出版社から『本を出版すると政府から制裁、弾圧を受ける』と言われ、刊行を断わられてしまいました」。

 李氏は北朝鮮で40年近く生活していた中で、人権を抑圧する政治体制に強い疑問を持った。多くの脱北者同様に“希望”を求めて韓国に渡ったものの、2017年に誕生した文政権を見ていま、絶望を覚えているという。

 「文 在寅の対北政策は、実現性のない絵空事を並べたものばかりです。南北融和というだけの空疎な考えだけで北朝鮮側に民主化や人権改善を求めるでもなく、ただ金正恩に擦り寄るだけなのです」。

 事実、文政権になってから北朝鮮の人権問題を改善させる取り組みは急速に冷え込んだ。政権発足後、韓国外交部では北朝鮮人権大使のポストの空席が続き、設立予定だった「北朝鮮人権財団」も宙に浮いたまま。韓国メディアからも「今後財団を設立する作業に真剣に取り組むとは思えない」(2018年6月15日付 朝鮮日報)と酷評されているほどだ。

 『殺人の品格』で描かれたような、脱北民に対する冷淡な仕打ちは、文 在寅政権下で現実に起きている。4月にはベトナム経由で韓国への亡命を目指していた3人の脱北者が、ベトナムで身柄を拘束され、(入国元の)中国に追い返される事件が起きた。

 「脱北者団体が韓国政府に3人の受け入れを要請したものの、韓国外交部は『待て』と言うだけで、動かなかった。今年、米国務省が公表した人権報告書でも『韓国政府は脱北者団体を抑圧している』と指摘された」(韓国人ジャーナリスト)。

 もし3人が北朝鮮に送り返されたとしたら、刑務所送りになるのは確実。最悪、『殺人の品格』で描かれたように処刑される(されている)こともあり得るだろう。

 そして今年の7月、ソウル市内で母子が餓死していることが水道検針員によって発見された。死亡していたのは脱北者のハン・ソンオク氏(42)と、キム・ドンジン(6)の親子だった。

 「脱北してきた母子は何度も役所に支援の申請をしたものの、手続きが進まず餓死したものと見られています。9月に光化門近くで開かれた追悼集会では『命懸けで脱北してきたのに餓死するなんて。統一部は誰のために存在するのか』と糾弾する声があがっていました」(ソウル特派員)。

 10月19日、餓死事件について韓国政府に対する抗議集会が開かれた。何十万人という韓国人が集まったチョ国前法相に対する抗議デモに比べると、人数こそ僅かであったが、その声は切実なものだった。自身も集会に参加していた李氏はこう訴える。

 「韓国社会のなかでも、私たちは外国人労働者以下の存在として扱われ、援助されるどころか排斥されている。政府も脱北者に対して極めて冷淡で、時には犯罪者のように扱います。母子が餓死した事件は、脱北者の過酷な現状を端的に示しているのです。同族が命をかけて亡命してきたのに、政治目的のために北に送り返す。または餓死させる。文政権の下、いかに脱北者の命が軽んじられてきたのかを、私は国際社会に訴えたい」。

 脱北者たちの悲痛な声訴を、文政権はどう聞くのか──。