断章54

 「香港中心部で7月21日、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする『逃亡犯条例』改正案に反対する大規模デモが行われ、警察は夜、居残っていたデモ隊の強制排除に乗り出した。警官隊とデモ隊が衝突し、警察は多数の催涙弾を使用した。香港政府によると、8人が負傷した。

 若者のデモ隊の一部が、中国政府の出先機関『香港連絡弁公室』に卵を投げたり、国章に黒い液体をかけたりした。習近平指導部は『侮辱行為』でメンツをつぶされた形で、中国政府は『中央政府の権威に公然と挑戦する行為で、絶対に容認できない』と非難するコメントを発表、強く反発した」(2019/7/21 共同通信)。

 既報のとおり、今年の、「5月12日、天安門事件で、失脚した故・趙紫陽元総書記の政治秘書だったパオ・トン氏が、香港の民主派団体『香港市民支援愛国民主運動連合会』が主催した同事件発生30年に関するフォーラムで中国共産党を非難する声明を発表した。

 パオ氏は『天安門事件に関する随筆』と題した声明で『六四(天安門事件)は過去の悪夢ではない。六四以降、あらゆる権限を持つ共産党が軍や警察を率いて、国民に暴力的な抑圧を加えている』と非難し、『中国人は人生を共産党に厳しく支配されているが、香港も同じ事態が避けられないだろう』と訴えた」(5/12 朝日新聞デジタル)。

 

 中国共産党は、親中派を動員して反撃する機会をうかがっている。

 「7月20日親中派の集会には主催者発表で31万6千人(警察発表は10万3千人)が参加した」(日本経済新聞)。

 

 自由を守りたい条例反対派と経済的な混乱を厭う親中派が激突して大きな混乱がおきれば、中国共産党人民解放軍を動かすだろう。

 そして、こう言うに違いない。

 「ここでは、だれもが幸せになり、おまえの自由のもとではどこを見回してもそうであったように、反乱を起こしたり、たがいを滅ぼしあったりする者もいない。・・・われわれに自由を差しだし、われわれに屈服したときに、はじめて自由になれるのだ」(『カラマーゾフの兄弟』)と。

 

【補】

 「香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの盧建霊記者はツイッターで、『香港のデモ参加者が疑問に思っているのはただひとつ、警察はどこだ?』、『Tシャツ姿の男たちはデモ参加者を襲うように命令された暴漢だと伝えられている』と投稿した」(7/22 BBCnews)。

 

【補】

 「香港北東部の大埔区で10月19日午後、民主化デモを呼び掛けるビラを配っていた男性(19)が刃物を持った男に襲われ、首と腹部を負傷した。香港では17日にも、民主化要求デモを主催する市民団体のリーダーが、路上で正体不明の暴漢らにハンマーで襲われたばかり。

 警察によると、被害者の男性は当時、黒の服とフェースマスクを身に着けていた。現場は香港の民主化運動を支持するメッセージを書いた付箋などをはりつけた『レノンウォール』の近くだった。レノンウォールは数か月にわたりデモが続く中で各地に設置されており、現場近くのものは最大級だった。

 地元メディアが公開した写真には、腹部を切られて内臓が露出し、重傷を負った被害者が写っていた」(2019/10/20 AFP)。