断章511

 「武器を使用するのを厭(いと)う者は、それを厭わぬ者によって必ず征服される」(クラウゼヴィッツ)。

 

 1月20日、注目されていたウクライナへの武器供与をめぐる支援国会合が、ドイツ西部ラムシュタイン米空軍基地で開かれた。しかし結局、ドイツは、ウクライナが求めていたドイツ製主力戦車「レオパルト」の供与を明言するには至らなかった。

 「ロシア政府は、西側諸国がレオパルトを供与すれば『非常に危険』な紛争激化につながると警告している。レオパルトはフィンランドポーランドなども保有しているが、ウクライナへの供与にはドイツの承認が必要。供与を躊躇(ちゅうちょ)するドイツ政府は、他国からの厳しい批判にさらされている。

 ボリス・ピストリウス独国防相は記者会見で、『レオパルトについては、決定の時期や内容はまだ分からない』とした上で、供与の障害となっているのはドイツだけだとの見方を否定した。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は、戦車の『代わりとなるものはない』として、西側諸国による供与を改めて求めていく意向を表明した」(2023/01/21 AFPBB News)。

 ちなみに、侵略者・ロシアの「西側諸国がレオパルトを供与すれば『非常に危険』な紛争激化につながる」という理屈は、「死にたくなければ逆らうな」と言う武装銀行強盗の警告と同じものである。

 

 問題は、ドイツである。北欧諸国やポーランドには、苛立(いらだ)ちが見える。

 たとえば、「ポーランドのモラビエツキ首相は19日、ポーランドウクライナにドイツ製戦車を供与する許可を得るか、『我々単独で正しいことをするか』のどちらかだとの認識を示した。レオパルド戦車はドイツで製造されているため、供与には通常ドイツ政府の許可が必要になる。

 モラビエツキ氏はドイツの供与許可が遅れていることについて聞かれ、ポーランドは既にウクライナに戦車14両の供与を申し出たと明らかにした。そのうえで『他国もこうしたニーズを満たすようにしなければならない。他国の中でこれまで最も積極性に欠けているのはドイツだ』と指摘した」(2023/01/20 CNN.jp)。

 ドイツは、ロシア・ベラルーシと国境を接する諸国で、評価を下げ信頼を失いつつあるに違いない。

 

 かつてアメリカのネオコン新保守主義者)は、「お前ら(注:ヨーロッパ)を俺様(注:アメリカ)が、汗をかき血を流して守ってやってんのに、俺様のやることにぶつぶつ文句を言うな! 綺麗ごとだけを言うな! 自分の手を汚してから文句を言え! 国防予算ぐらい増額せんかい!」と啖呵(たんか)を切った。

 現下のドイツの積極性に欠ける頼りないふるまい(対ロシア、対中国)をつぶさに見るとき、当時のアメリカのネオコン新保守主義者)の“苛立ち”も無理からぬように思うのは、わたしだけだろうか?

 省(かえり)みるに、日本は、世界から、そしてアメリカから、どう見られているのだろうか?