断章512

 日本がこれまでに行ったウクライナ支援は、金額的には、北欧諸国と比べて見劣りするものではない。財政支援が総額約1,400億円、防衛装備品が防弾チョッキ・ヘルメット・テント、生活用品が毛布・食料・ブルーマット・睡眠用シート、越冬支援が発電機・太陽光を利用した照明器具。

 直近では、「日本政府は15~20日の日程で、ロシア軍がウクライナ領土に仕掛けた地雷や不発弾処理に当たる同国非常事態庁職員に対し、日本製地雷探知機の研修を実施した。まず4台を試験的に提供し、ウクライナで使用してもらう。需要があれば供与を拡大する方針だ。

 研修は、日本が地雷処理で長年援助してきたカンボジア政府、国際協力機構(JICA)と連携してカンボジアで行った。ウクライナ非常事態庁の職員8人に、金属探知センサーと地中レーダーを備えた最新の探知機の使い方を説明。カンボジア当局が実際の地雷原で処理する様子も視察した」(2023/01/20 時事コム)。

 

 訴求力不足のように思うのは、わたしだけだろうか? あえて言えば、訴求力において、デヴィ夫人にも負けている。

 「タレントのデヴィ夫人は23日、ウクライナの首都キーウや民間人虐殺があった近郊ブチャの病院などを訪れ、国内避難民へ防寒着やおむつなど支援物資を届けた。取材に対し『(市民らは)暖房もなく電話も通じにくい厳しい状況です。日本はもっと積極的に支援しなければと思います』と語った。

 デヴィ夫人は22日にウクライナ入りした。デヴィ夫人が運営に関わる財団が、在日本ウクライナ大使館に集まった支援物資の輸送費用捻出に協力したという。石油ストーブや医療品などが入ったコンテナ4個が2月中にも現地に届く予定だとしている」(2023/01/24 KYODO)。

 

 これまで日本は、国際社会あるいはアメリカの求めに応じて、紛争地やイラクアフガニスタンに多大な財政的物的支援をしてきた。にもかかわらず、世界において日本のプレゼンスが高まったように思えないのはわたしだけ? 「日本はなんでもカネですませようとするよね」と、国際社会とりわけアメリカから足元を見られているのではないのだろうか?

 結果、しぼればミルクをだす“乳牛”のように扱われているのでは?

  しかし、“乳牛”も歳をとれば、乳を搾(しぼ)れなくなる。牛乳を搾らなくなった牛は「廃用牛」といい、食肉にされる。

 

 日本の現状はどうか? 「エネルギー価格の高騰で膨らみ続けているのが日本の貿易赤字額。経済制裁など『対ロシア』対応では先進国と足並みをそろえるが、米国などとは置かれている状況が異なる。資源の産出国である米国や中東、それら地域に権益をもつ欧米メジャーは収益を伸ばしているからだ。エネルギー輸入国の立場から脱却せねば、日本の国富は流出し続ける。(中略)

 みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは『54基の原発が稼働していた東日本大震災以前と比べると増えたコストは年間数兆円。10年で50兆円程度になる。これだけの国富が流出し続けている』と話す」(2022/10/27 日本経済新聞・中山玲子:日経ビジネス10月21日記事)。

 「日本の経常収支が、近い将来に黒字から赤字に転落し、その基調が継続するようになると何が起きるのか。2021年末に日本は411兆1,841億円の対外純資産を保有しており、今の英国が直面している『ポンド危機』のようなことが直ちに起きることはない。(中略)

 だが、岸田首相は現在の貿易赤字膨張の現実を直視し、黒字転換を目指すことで『衰退への道』から離脱することを国民に訴えてほしい。最も恐ろしい展開は、ロンドンで起きている国際収支危機とも言える事態を『対岸の火事』と放置していることだ。

 臨時国会の審議で、貿易赤字が20兆円になるのに『本当に大丈夫ですか』との質問さえ出ない」(2022/10/20 ロイター通信 By 田巻 一彦)惨状である。

 

 これまでの日本は、「カネならある」と言えた。「カネのなくなった」日本は、いったいどう扱われるだろうか?