断章502

 スターリン主義とは、「社会主義とは、『共産党』の指導下で、大企業を国有化し、農業を集団化し、近代化(工業化)した経済を“計画経済”で運営することだ」という特権的党官僚階級の、特権的党官僚階級による、特権的党官僚階級のための、悪質な“赤色全体主義イデオロギーであり、系譜的には、マルクス・レーニン主義の長男である。

 「旧・ソ連では、土地も建物もアパートも国有となり、勤める企業も団体も全て国営になってしまった。こういう状況でどうやって、『個人の尊厳』や『思想・表現の自由』を主張して共産党政権や、残虐なスターリン主義官僚体制を敵に回して戦うことができるだろうか。反抗すればすぐに職場をクビになりアパートから追い出され」(副島 隆彦)て、すべてを失うのだ。

 

 たとえば、コンスタンチン・サイミスは、次のような例をあげている(また長い引用になるが、具体的事実にソ連の真実を見よ)。

 「私が法律実務の関係でかかわりあった小さな地方都市でのことである。私は権力と法律との関係を反映する一つの物語を知る機会をもった。その小さな町では、党の地区党員会第一書記の娘と、下級官僚の息子が同じ学校に通っていた。2人は卒業して、結婚しようとした。

 ところが、第一書記、とりわけその妻が、そのような身分違いの結婚に断固として反対したのである。だが、娘はきつい性格で、両親の言うことを聞かなかった。そこで彼女の父親は、自分の法律感覚に従って公然たる行動に出た。彼はZAGS(ソ連の法務局で、結婚登録の権限を持つ唯一の機関)の地方支局長を呼び出し、彼の娘と、問題の下級官僚 ―― 郵便局長の息子の結婚を登録することを禁じた。若いカップルはどうすることができただろう。その地区を出て、よそで彼らの結婚を登録しただろうか? そんなことは不可能だった。ソ連では、2人のうち少なくとも1人が、結婚を登録する地区の住民でなければなならないのだ。

 では、このような正当な権利の臆面もない侵害について、彼らは不服を申し立てるべきだろうか? 彼らは実際に地方当局に不服申し立てをした。しかし、ZAGS責任者の違法な措置に関する彼らの不服申し立ての件は、ソ連で幅をきかす不文律によって、党の地区委員会、つまり花嫁の父親のところに移管されたのである。

 こうして結婚を登録できなかったカップルは、同棲することにし、青年の母親のところに移った。そこでも、彼らは第一書記の権力に追及された。青年の母親は職を追われた(またしても労働法のすべての規定の侵犯である)。その上、母親は郵便局の建物の中の小さな2部屋のアパートを追い立てられた。郵便局長が使うことになったという理由だった。

 若いカップルは、どうしようもない状況に置かれた。彼らは自分たちの町で住むところがなくなった。彼らは娘の父親が権力を振っている地区の外へ出ることもできなかった。彼らはよその町で落ち着くための金も、特別の職ももっていなかったからだ。こうして、まだ結婚していないカップルは、お手上げになった。娘は両親のもとに帰り、青年の母親は新しい職に就いて息子とともに町の外へ去った」(『権力と腐敗』)。

 日本共産党は、こんな旧・ソ連を“労働者の楽園”と絶賛していたのである。