断章203
自由な国では、人は欲するところを考え、述べることができ、為すこともできる。
古典的な型の独裁制においては、人は欲するところを考え、述べることはできるが、為すことはできない。
軍国主義独裁では、述べることも、為すこともできない。
そして、全体主義独裁では、己が支配する国民にイデオロギー的集中砲火を浴びせて、考えまでも支配する。言論の自由は、ない。
現代中国は、さしあたり成功している全体主義である。当然、自由な言論は、許されない。
例えば・・・、
「経済学の『ロックスター』こと、トマ・ピケティ氏は8月31日、最新刊『資本とイデオロギー』の中国語版はおそらく出版されないだろうと述べた。現地出版社に多数の箇所の削除を求められ、それを拒否したとしている。『資本とイデオロギー』は世界全体における急速な格差拡大を研究したもので、欧米諸国を追い抜いたとピケティ氏が評する中国の『金権政治』に対する痛烈な批判を含んでいる。
ピケティ氏はAFPの取材にメールで答え、『要するに彼ら(中国の出版社)は現代中国に関するすべての記述、とりわけ中国における不平等や不透明性に関する記述を削除したがっている。私はこうした条件を拒否し、いかなる種類の削除もない、完全な翻訳以外は受け付けない意思を示してきた』と述べた。2013年に発表した『21世紀の資本』でピケティ氏は一躍、経済界の世界的スターとなった。同書は中国でも数十万部を売り上げ、習 近平・国家主席は、ピケティ氏が指摘した欧米諸国の格差拡大を中国式共産主義モデルの優位性を示す証拠として引き合いに出した。
ピケティ氏は香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの報道を認める形で、『私のフランスの出版社に接触している他の複数の中国の出版社も、やはり削除を求めてくるだろう。よって現時点では、中国本土でこの本が出版される見込みはない』と述べた。
中国が問題視している箇所は共産主義およびポスト共産主義社会を扱った章で、その中でピケティ氏はロシアの『少数独裁による収奪政治の吹きだまり』と中国の『金権政治』を批判している。
例えば中国の出版社から削除を求められたという一節でピケティ氏は、欧米と中国を比較した場合、『1980年代初めには3地域の中で最も平等主義だった中国は、2010年代後半には米国よりもわずかに不平等、欧州と比べれば著しく不平等な状態となっている』と述べている。また他の箇所ではロシア、中国、一部の東欧諸国は『ハイパー資本主義』の『頑強な同盟国』になったとも指摘。『これはスターリン主義と毛沢東主義、その結果として、すべての国際的な平等主義の志を拒絶した直接的な帰結である』と批判している」(2020/09/01 AFPBB News)。
あるいは・・・、
「中国の北京市第2中級人民法院(地裁)は22日、『物言う企業家』として知られ、習近平指導部を繰り返し批判してきた任 志強氏(69)に対し、収賄罪や公金横領罪などで懲役18年、罰金420万元(約6,400万円)の判決を言い渡した。任氏は上訴しない意向で刑が確定する。
任氏は今年3月、新型コロナウイルス対策に関連し、『裸のまま皇帝を続ける道化師』 ―― 『新型コロナウイルス問題で中国共産党の『支配構造危機』が現れた。報道機関と表現の自由がなく新型コロナウイルス流行初期にウイルス感染拡大を防ぐことができず状況が悪化した』 ―― と習氏を批判する文章を発表し、当局に拘束された。7月には共産党から『党と国家のイメージをおとしめた』と党籍剥奪処分を受け、その後起訴されていた。
任氏は習氏と同じ革命指導者の子息『紅二代』に属し、王 岐山国家副主席とも近い。それだけに、『口封じ』とも言える今回の厳罰で、批判を一切容認しない習氏の姿勢が鮮明になった」(2020/09/22 CNN)のである。