断章169

 2日前、チェシャ猫が小さな声でわたしに言いました。「香港を見てごらん」。

 そこでは、不機嫌そうに眉間にしわをよせた「紅の女王」が、「すべてを検閲し、逆らう奴らは収容所に入れておしまい!」と怒鳴っておりました。

 

 「中国政府が国家安全維持法を導入して数日を経た香港で、著名な民主派活動家らの著書が図書館から撤去され始めていることが、オンライン上の記録で明らかとなった。利用不可となった書籍の著者には、香港で最も有名な若者世代の活動家の一人黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏や、著名な民主派議員の陳淑莊(Tanya Chan)氏らが含まれる。先月30日に施行された国家安全維持法は、香港が1997年に英国から中国に返還されて以降、半自治権を有する香港にとって最も劇的な変化となる。

 黄氏は書籍の撤去について、同法がきっかけとなったと考えていると指摘。フェイスブックへの投稿で、政治的迫害を示す言葉を用いながら、『白色テロの拡大が続いており、国家安全維持法は根本的に、言論に罪を負わせるための道具だ』と主張した。

 公立図書館のウェブサイトでの検索では、黄氏や陳氏、香港の学者である陳雲(Chin Wan)氏らの著書少なくとも3冊が、香港各地の図書館数十か所で貸し出し不可になっている。AFP記者は4日午後、黄大仙区の公立図書館でこれらの書籍を探したが、探し出せなかった」(2020/07/05 AFPBB News)。

 

 全体主義中国共産党は、情勢を管理・コントロールしようとして、検閲や抑圧を強化している。

 しかし、「実際のところ、私たちが他の人間を管理し、コントロールすることができるという考え方は誤りだ。非常に成功したアクティブ・ペアレンティング・プログラム(よりよい親子関係を築くための親教育講座)の創始者である心理学者、マイケル・ポプキンは、そのことを『コントロールパラドックス』と呼んでいる。『10代の子供をコントロールしようとすればするほど、その子どもに及ぼす影響は小さくなる』ということだ。

 なぜか? それは『コントロールする事は抵抗につながり、最終的にその抵抗は反抗に変わっていく』からだ。これは10代の子どもだけでなく、あらゆる人間に当てはまる。ボイドの有名な表現の1つが、『人を管理しようとすればするほど、得るものはますます小さくなる』だ。

 この点についてもう少し考えてみよう。もし明示的管理が本当に機能するならば、東欧諸国は共産主義を投げ出すことなく、西側諸国の独裁的な企業経営者が憧れる、好き放題のコントロールを行ってきたソ連は生き残っていたはずだ。そして私たち全員が『ソ連型マネジメントの秘訣』といった本をありがたく読んでいたことだろう」(『OODA LOOP』)。

 ところが、そうはならなかった。全体主義政党(共産党)の繰り出す管理・抑圧は、「コントロールパラドックス」によって、結局、破綻してしまったからである。

 

 『鏡の国のアリス』に出てくる「赤の女王」は、「その場にとどまるためには、全力で走り続けなければならない」と言った。中国の「紅の女王」は、「自由であるためには、お前の自由を差し出す必要がある」と言うのだ。

 管理抑圧に失敗すれば、次は、「首をハネよ!」と言うだろうか・・・。