断章312
孫 正義は、ばくち打ちになった。本人自ら、そう認めている。
ソフトバンクグループ(SBG)は、アメリカのアップルに次ぐ世界第2位の巨額利益を得た。だが目下のところ、マーケットの答えは、ソフトバンクグループの株価“急落”である。
「ソフトバンクグループは12日、2021年3月期の連結純利益が4兆9879億円になったと発表した。韓国ネット通販大手クーパンの上場などがけん引し、日本企業として過去最大の純利益を計上。世界的にも米アップルに次ぐ2位の巨額利益を得たことになる。
会見した孫 正義会長は、巨額の利益を得たことに『たまたま』を3度繰り返して、上場した投資先企業が人気を集めたことなどが偶然重なったためだと結論づけた。
しかし同時に、自身は『5兆円や6兆円で満足する男ではない。反省点が分かっていれば成長余地はある。製造業のように上場企業を生み出していく』と、成長加速へ貪欲な姿を強調した。
前期のファンド事業の投資利益は7兆5290億円。3月にニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場したクーパンの評価益が2兆5978億円と巨額になり、外部投資家の持ち分増減額を控除した投資利益も4兆268億円と、前期の1兆4125億円の赤字から一転大幅に黒字化した。
会長は業績の大きな振れについて『この先も株価の上下で(業績は)上がったり下がったりする。ソフトバンクグループにとって、1~2兆円の利益や赤字はニューノーマルだ』と解説。『〈孫はばくち打ちになった〉と思う人もいるだろう。ひとつの正しい見方で否定はしないが、AI革命に強い関心を持ち、先端技術の学習を継続している』と主張した。
同社は今期業績見通しを『未確定な要素が多い』として開示していないが、会長は21年中に投資先の上場企業数が『昨年を大きく上回ると見込んでいる。すでに準備中だ』と明らかにした」(2021/05/12 ロイター通信)。
「4月の米消費者物価指数(CPI)の総合指数が前年比で約12年半ぶりの大幅な伸びとなったことを受けて、アメリカで“インフレ”懸念が台頭し、予想よりも早期に利上げが実施される可能性があるとの懸念から、米国株式市場は主要3指数が大幅続落した」(2021/05/13 ロイター通信)。SBGの主な投資先企業は、IT企業や新興企業なので、マーケットの先行きに不安が出れば、SBGの業績見通しは疑問視される。それでなくとも、大借金を抱えているので、1株利益が2,600円あっても1株あたりの配当は44円(配当利回り0.52%)という「しぶちん」である ―― 傘下の通信会社ソフトバンクは1株利益100円ほどだが、1株あたりの配当は大盤振る舞いの86円(配当利回り6.1%)という親孝行ぶりである。
「世界は人為的につくられた流動性で溢れている。この流動性の恩恵(引用者注:すべての資産価格の上昇)を受けることができた人たちは笑いが止まらない状態だ。各国中央銀行は、経済をコントロールし、危機を『好きなように』止めることができると信じて自己満足に陥っている。しかし、急激なインフレが発生すれば、中央銀行は最終的に利上げを余儀なくされ、過大なレバレッジをかけてゾンビ化した企業や債務超過でゾンビ化した欧州諸国は連鎖的に倒れるだろう。金融市場の完全な混乱によって世界が不況か恐慌に陥るのは明らかだ」(3/4 石原 順から抜粋・再構成)。
SBGの主戦場であるアメリカのマーケットが崩落すれば、ばくち打ち・孫 正義のSBGは、バブル崩壊後の日本の金融機関のように国民の税金による救済措置(なにしろ「大きすぎて潰せない」)を与えられることになるのだろうか・・・。