断章288

 「知識階級は、彼らの高い文化こそが人類の最大の業績と最も深遠な古来の知恵、そして最も進んだ近代科学の知識を代表していると信じている。また、これらが人類の福祉と健康に役立ち、それゆえに彼らはこれに応じてより大きな報酬を与えられてしかるべきである、と信じている。知識階級は、世界は優れた能力、知恵を所有するものによって、つまり彼ら自身によって統治されるべきであると信じている。プラトニック・コンプレックス、すなわち、それによって西洋哲学が始まった、哲学者を王に、という夢は、知識階級の最も深層の願望を充足するファンタジーである」(A・W・グールドナー)。

 だが彼らのうちのある者は、周囲を見渡し次のことに気づく。彼らは彼らの上に立つ政財官のエリートは、「結局ただ金だけが目的であり、無教養で、無能である」こと。「超富裕層の巨万の富と下層民の食うや食わずの生活の断絶」に。そして、「生産手段の社会化」を唱える共産主義マルクス主義)に惹かれていく。左翼インテリが誕生する。

 

 旧・ソ連憲法は、「ソ連における生産手段はソビエト市民によって公的に所有される」と定めていた。しかし、そのことは、本当はいったい誰がソ連邦を現実に支配(指揮命令・管理統制)し、誰がそこから私的な利益を得ていたかを隠す“空文句”だったことを、今では誰でも知っている。

 全体主義共産党官僚 ―― ノーメンクラトゥーラ、すなわち共産党単独支配国家におけるエリート層・支配階級や、それを構成する人々 ―― が支配し、彼らだけが“ご馳走”を食べていたのである。

 

 日本の人文系知識人のうちに多くいる、日本共産党に同伴する知識人たち(左翼インテリ)。

 空虚でネガティブな「社会批評」やマルクス主義の「解説本」を書くことしか能のない彼ら(左翼インテリ)は、もしも共産党が権力を握れば、旧・ソ連邦の“御用知識人”のように大切にされ厚遇されるだろうと期待している。

 だから、日本のガラパゴス化した左翼インテリたちが、「共産党とは、優しい声で人をたぶらかして家に上がりこみ、人を取って食う『赤頭巾をかぶったオオカミ』である」ことを認める日は、永遠に来ない。

 

 同伴知識人は、共産党が「自由」とりわけ「言論・表現の自由」に反対する全体主義政党であるということを、保守のデマだと主張する。

 しかし、同伴知識人は、共産党に参加すれば、「民主集中制」に伴う厳しい「規律」(制限)があることを知っている。

 だから、同伴知識人は共産党と全く同じことを主張しつつも共産党には参加せず、市民社会の「言論・表現の自由」を利用してネガティブな「社会批評」を垂れ流し、“自由”に稼ぐという選択をしているのである。

 共産党(幹部)は、現実の党活動に携(たずさ)わる者として、党活動に対する責任と義務を担(にな)わない同伴知識人を内心では軽蔑しつつも、同伴知識人が醸成する「反政府的空気」を利用するために、同伴知識人の“自由”を許容している。持ちつ持たれつなのである。

断章287

 「予想はウソヨ、予測はクソヨ」のとおりになった。

 わたしは予想した。すなわち、2020年3月の株価崩落後の株価上昇は、デット・キャット・バウンス(すなわち「死んだ猫」でも高いところから落とせば地面に当たって跳ね返る。急激な下落相場で、取り立てて買い材料がないにもかかわらず短期的に株価が回復するような場面のこと)だから、株価はふたたび奈落の底に落ちていくだろうと。

 

 ところが、1年後、「11日のニューヨーク株式相場は、米大型経済対策の実現を好感し、5営業日続伸となった。優良株で構成するダウ工業株30種平均は前日終値比188.57ドル高の3万2485.59ドル(暫定値)で終了し、2日連続で史上最高値を更新した。ハイテク株中心のナスダック総合指数は329.84ポイント高の1万3398.67で終わった」(2021/03/12 時事通信)。

 

 「コロナ禍でも株価は上がり、すでに昨年8月末時点で世界の株式市場の時価総額は89兆ドル(9400兆円)と過去最高を更新している。ジェフ・ベゾス(アマゾン)やイーロン・マスク(テスラ)を筆頭に超富裕層の富は拡大し、億万長者の数も増えているにちがいない。なぜこんなことが起きたのか」(橘 玲)。

 それは、「紙幣増刷と財政赤字のドリームチーム『パウエル&イエレン』が指揮をとっているからだ。QEインフィニティ(無制限の量的緩和)とMMT(現代貨幣理論)的なバラマキというバブル延命措置」(石原 順)が功を奏しているというのだ。あの相場の王、レイ・ダリオは、米国株市場にはまだ上昇の余地があると結論づけているらしい。

 

 しかし、「FRBMMTが正しいなら、もはや税金も不要になる。国債をひたすら刷り続ければいいのだから。政府が金をくれて、税金がタダになるなら、こんないいことはない。しかし、この世にタダ飯(フリー・ランチ)というのは存在しない。

 QEインフィニティの量的緩和が再開されたが、量的緩和には『出口』がない。量的緩和を永久に続けられるなら、経済政策で誰も苦労などしない。政府がいくら膨大な予算を組んでも、企業がいくら負債を抱えようと、政府は国債、企業は社債中央銀行に買ってもらえばいいのである。FRBMMTが正しいなら、いま世界で一番経済が好調な国はジンバブエのはずである。しかし、そんなことにはなっていない。

 これからどうなるかは、金利(インフレ)次第である。この過剰流動性相場の終わりのシグナルはインフレだ。株価が暴落するのはインフレになったときである。インフレになれば、中央銀行は利下げも追加緩和もできないからだ。

 『私たちは、中央銀行が経済をコントロールし、危機を好きなように止めることができると信じて自己満足に陥ってきた。これは危険な誤びゅうである。急激なインフレが発生すれば、中央銀行は最終的に利上げを余儀なくされ、過大なレバレッジをかけてゾンビ化した企業や、債務超過でゾンビ化した欧州諸国はほぼ確実に倒されるだろう。金融市場の完全な混乱は、世界が不況か恐慌に陥るのは明らかだ』と、ヌリエル・ルービニは述べているが、われわれが注意すべきは金利の上昇よりも、その上昇スピードであろう。

 【「この株価の長期上昇にトドメを刺しそうなものは?」―― 投資家から、よく尋ねられる質問である。「このような米国株の上昇は前代未聞でお手上げだ」と語っている専門家さえいると聞く。ご存じのように、私は最終的に超弱気である。現在世界中で横行している財政・金融介入によって、債務が前例のない規模に膨れ上がっているからだ。ただし、忘れないでほしい。2008年以降、私は株式空売りの提案を控えている。理由は簡単だ。金融インフレの時代には資産価格が、ほぼ際限なく、つまりシステム全体が破綻するまで上昇し得るからである。超インフレ期に株価がどう動いたか、1919~23年のワイマール共和国や1978~88年のメキシコを例に、すでに何度か説明した。とはいえ、金融インフレに積極的に関与するシステムは、つまるところ破綻する。インフレ期には実質賃金が減少して大衆の生活水準が落ちてしまうからだ。また、状態が急激に悪化している患者(経済)を延命させるため、追加的な資金注入をするたびに、前回よりも効き目があるよう、さらに異次元の投与をする必要にせまられる。この“必要”が最初に投与したときよりも市場構造を、さらに大きく歪めてしまうのだ】(マーク・ファーバー)」(2021/03/11 石原 順を抜粋・再構成)。

断章286

 近現代の国家・企業・個人は、〈市場原理〉すなわち、より安くより良い製品・サービスを提供する競争から逃れることはできない。産業革命から生まれた産業社会は、絶えざるイノベーションを運命づけられている。

 例えば、18世紀の無機化学工業の発達から、さらに有機化学工業の発達へ。ベッセマー法などによる製鉄業の発展へ。そして、大規模な工場で大規模な機械を高速運転する必要から、機械の動力は電力になった。戦後の技術革新の波は、原子力、オートメーション、高分子化学工業の発展をもたらし、そして現在のリーディング産業は、情報通信産業である。

 

 イノベーションに立ち遅れれば、国家は衰退・没落し、企業は倒産・破産し、個人は失業・転落する。かかる競争世界、競争社会を勝ち抜き、生き延びるために、国家は公教育、企業は社内教育、個人は出世競争(受験勉強)にリソースを注いできた。

 そして、今日のテクノクラシー的な産業社会は、高等教育と知識階級を大量に必要とする。知識階級とは、テクノロジスト、エンジニア、経営管理者、官僚、学者などである。但し、今日の「テクノクラシー的な産業社会における人文系知識人の社会的立場は、技術系知識人のそれに比べれば、より周辺的で疎外されたものになっている」(A・W・グールドナー)。さらにネット空間の発達が、これまで彼らだけの特殊な既得権益だった「言論空間」を狭めている。

 人文系知識人は、この「言論空間」の狭まりにいらだっている。それが、ネット民に対する「反知性主義」の大合唱であり、菅政権による「日本学術会議への任命拒否」という彼らの“ギルド的特権”への介入に対する、「知識階級への宣戦布告だ」(内田 樹)という大仰な反応に現れたのである。

断章285

 成功した人間は(国家、政党も)、周囲が見えなくなり、歴史の教訓を忘れがちである。

 ヒトラーは、ナポレオンのロシア遠征の教訓を忘れた。アメリカは、アレキサンダー大王や大英帝国アフガニスタン侵攻の教訓を忘れた。太閤秀吉は、白村江の戦いの教訓を忘れた。

 

 中国共産党は、現在(全体主義支配)の成功に酔っている。

 なので、「中国の栗 戦書全国人民代表大会全人代、国会に相当)常務委員長は8日、常務委の活動報告を公表した。報告は、沖縄県尖閣諸島周辺で頻繁に活動する海警局の武器使用権限を定めた海警法を制定した目的として『習 近平強軍思想を貫徹し、新時代の国防と軍隊建設の必要に応えるため』と明記。中央軍事委員会の指揮下にある海警局が、習近平国家主席(中央軍事委主席)が主導する事実上の『第2海軍』であることが鮮明となった。

 海警局は中国の海上法執行機関。活動報告は、海警法をはじめとする安全保障関連法により『国家の領土安全のための法的保護を提供する』と強調した。2月に施行された海警法には『習近平強軍思想』の表現はない。

 一方、活動報告は昨年6月に施行された香港国家安全維持法(国安法)に関して『香港の長期にわたる無防備で深刻な状況を転換した』と指摘。民主派を排除する選挙制度変更などにより『愛国者による香港統治の確保』を図ると主張した」(2020/03/08 時事通信)と、バリバリの強気である。

 

 なるほど、1978年以降の中国は驚異的な経済発展を遂げ、今や先端技術開発や軍事力においてもアメリカを猛追中である。しかし、思い出すべきである。あの旧・ソ連邦 ―― 今では、強制収容所群のあった貧しい軍事大国としか記憶されていないけれども ―― は、表向きの経済統計では、工業部門の成長率(年平均)は第1次5ヵ年計画のときには19.1%、第2次5ヵ年計画のときには14.5%、1950年~1958年には10.9% (国民総生産では7.1%)と急速に成長し、1957年にはアメリカに先んじて世界初の人工衛星スプートニク1号を打ち上げ、アメリカを「スプートニク・ショック」で震撼させた。軍事面でも、1955年には実戦向きの水爆実験をした。ソ連共産党が成功に酔っていた時代だった。全体主義支配は、さらに35年以上続いたが、ある日あっさり瓦解した。

 

 中国(共産党)はどうか? 

 「すでに『人口ボーナス』期は終息を迎え、労働コストは上昇、貯蓄率も減少した。米中貿易摩擦が示すように、過度に輸出に依存した経済成長を続けることも国際環境から困難となった。

 中国の1人当たりGDPはまだ1万ドル。アメリカの6万ドル、日本の4万ドルとの差は大きい。高齢化が急速に進行する中で『豊かになる前に老いる』リスクに直面している。人口増加が見込めない中では生産性を高めるしかないが、生産性(全要素生産性TFP)上昇率は1996年から2004年の6.1%から、2005年から2015年は2.5%に減少したとの推計もある」(2020/09/28 東洋経済/API大矢伸)。

断章284

 「日本共産党は、2020年1月28日、第28回党大会で党綱領を改訂した。党綱領改定は実に16年ぶりの出来事であった。この中で、従来日本共産党は中国を『社会主義をめざす新しい探究が開始された国』としていたがこの部分を削除し、『いくつかの大国で強まっている大国主義・覇権主義は、世界の平和と進歩への逆流となっている』と挿入して中国共産党への批判を強めた。

 この中国認識の転換の理由として、日本共産党は東・南シナ海における中国の覇権主義的行動のエスカレート、香港における人権侵害およびウイグル自治区における人権弾圧をあげた。(中略)

 ―― 我が党は1960年代以降、ソ連と中国という『社会主義』を名乗る2つの国からの激しい覇権主義的な干渉攻撃を受け、それを断固として拒否し、自主独立の路線を守り、発展させてきました。ソ連によるチェコスロバキアアフガニスタン侵略などを厳しく批判する闘いを展開した。中国指導部による『文化大革命』や『天安門事件』などの民主主義抑圧の暴圧に対しても、最も厳しい批判を行ってきました。今回の綱領一部改定案は、中国に現れた大国主義、覇権主義、人権侵害を深く分析し、『社会主義を目指す新しい探求を開始』した国とみなす根拠はもはやない、という判断を行いました。

 中国の党は『社会主義』『共産党』を名乗っていますが、その大国主義、覇権主義、人権侵害の行動は『社会主義』とは無縁であり、『共産党』の名に値しません。中国に現れた大国主義・覇権主義は世界にとってもはや座視するわけにはいかない重大性を持っています。にも拘らず、その誤りに対する国際的な批判が全体として弱い。特に日本政府は全く弱く、追従的である ―― 日本共産党・志位委員長」。

 

 上記を、「徹底的な中国共産党批判」だと評価する者は、共産党の“言葉”に眩惑(ゲンワク)されてカモられた者たちであるか、あるいは共産党にすり寄る者たちである ―― 眩惑とは、「目がくらんで、まどうこと。目をくらまし、まどわすこと」。

 

 なぜなら、それは上記の一部を見るだけでも明らかである。例えば、上記中にある「天安門事件」である。それは、1989年に中華人民共和国北京市にある天安門広場民主化を求めて集結していたデモ隊に対し、軍隊が武力行使して多数の死傷者を出したことである。

 「天安門」当時、中国共産党の表向きトップ(本当のボスは、鄧 小平)だった趙 紫陽は、事件後すべての職を解任され、以降16年間にわたって自宅軟禁され、2005年に死去した。

 自宅軟禁中に思索を重ねた趙紫陽は、以下を語ったと伝わっている。

 「現在の社会に現れているあらゆる悪弊は、鄧 小平が経済分野では改革・開放を主張しながら、政治分野では高度集権を堅持しようとしたところに端を発している」。

 「中国で現在発展しているのは、まさに官僚資本主義だ。政府が土地を囲い込み、民衆から土地を取り上げ・・・地価を安く設定してディベロッパーに大量に払い下げ、今度は高値で売る。被害にあった庶民が、焼身自殺する事件が何件も起きている。株も操作され、買い占められている」。

 「工場のマネジャーと(党)書記が利益を得る一方、国営企業は株式を売り、大量の富が彼ら権威者の懐に入る。かつては・・・土地も値打ちがなかった。だが、市場化されると土地の価格は高騰し、その利益は少数の人間に持っていかれる」。

 「中国における腐敗は・・・制度的な問題だ。資本主義国家でも腐敗は起きているものの、私有制のもとでは好き放題に財産を掠め取ることなどできないし、言論の自由のもとでオープンな監視にさらすことができる。中国では手中の権力を利用し・・・公然と国有財産を横領している」(『趙 紫陽』ビジネス社刊・2008年)。

 

 肝心なことは、日本共産党は、この恐るべき「人権弾圧・侵害」の「天安門」後でも、中国を「社会主義をめざす新しい探究が開始された国」と党綱領で賞賛し続けてきたという“事実”である。

 

 そもそも、中国共産党日本共産党は、共に、人民を幸せにする ―― 共産主義という地上の楽園を実現する ―― という甘い言葉で“赤頭巾ちゃん”(人民)をだまして、お家に入るや赤頭巾ちゃんを食ってしまう、赤頭巾をかぶった“人食いオオカミ”(全体主義)である。

 日本共産党は、これまでもしばしば中国共産党と“対立”した。しかし、日本共産党中国共産党は、同じマルクス主義スターリン主義)教会のドクトリンの下に生まれ、かつては兄弟党だと言っていた仲である。だから双方の“対立”は、結局、なしくずしに修復され、揉めても揉めてもヨリを戻してきた。例えば、大事な「党綱領」で、「社会主義をめざす新しい探究が開始された国」と、中国を高く評価してきたのである。

 

 では、なぜ、今になっての「綱領改定」であり、改めましての“中国批判”なのか?

 

 その理由のひとつ目は、まだこれから甘く優しい“言葉”で赤頭巾ちゃん(日本の民草)をだまして、お家に入れてもらう(権力が欲しい)立場にある日本共産党にとって、中国共産党が、鄧 小平の教えである「韜光養晦(とうこうようかい)」(才能・爪を隠して、内に力を蓄える)を守っているうちは好都合だったが、ここ最近の、習 近平・中国共産党の尊大であつかましく、目をぎらつかせ、赤い舌で舌なめずりをし、牙をむき出しに行動する “人食いオオカミ”まるだしの振る舞いは、大迷惑で腹立たしいものになったからである。日本共産党は、「そんなやり方では、共産党とは、赤頭巾をかぶった“人食いオオカミ”だという正体がばれてしまう。いい加減にしろ」と怒っているのである。

 

 その理由のふたつ目は、「文化大革命」の頃のように中国共産党と口汚くののしる関係に陥って、昔のこと ―― 例えば、「1951年1月には中国共産党中央対外連絡部が、急ぎ創建された。初代部長には初代駐ソ大使を務めた王稼祥が任命された。王はソ連に長く留学した知識人で、『毛沢東思想』の最初の提唱者でもあり、毛沢東の党内主導権の確立に大きな貢献があった。

 中連部の設立には日本が深く関わっている。この頃日本共産党では、中ソ両共産党が推す武装闘争路線の採用の是非をめぐって内部闘争が起き、書記長の徳田球一を含む親中派幹部が中国共産党に介入を要請し、極秘訪中を決めた。中連部は彼らの受け入れにあたる組織としてまず設立され、その敷地内に日本共産党幹部の宿舎も建設される。ほどなく、日本共産党武装闘争を唱える『51年綱領』を採択し、農村部を中心に火炎瓶闘争を始め、日本の国会で議席の多くを失った」(『中国の行動原理』益尾 知佐子) ―― を持ち出されても、「そんな昔のこと、もう“時効”だよね」と言えると思ったからである。

 

 これが、今になっての、日本共産党による中国共産党“批判”の《本質》であり《真実》である。

断章283

 「ロイターの集計によると、新型コロナウイルスの感染者は世界全体で1億1278万人を超え、死者は260万5848人となった。

2019年12月に中国で最初の症例が確認されて以来、210を超える国・地域で感染が報告されている」(2021/02/25 ロイター通信)。

 

 さらに厄介なこともある。

 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に猛威を振るうなか、あらゆる薬剤に耐性を持つこともあるスーパー(超多剤)耐性菌『カンジダ・アウリス(カンジダ・オーリスとも)』の感染が一部で拡大していると、医師たちが警鐘を鳴らしている。カンジダ・アウリスは特に院内感染で広がりやすく、今年(2020年)はコロナ患者であふれる医療現場に大きな負担がかかっているためだ。

 カンジダ・アウリスは、シーツ、ベッドの手すり、ドア、医療器具などに付着して長時間生存し、そこに人の手が触れると感染が広がる。また、カテーテルや人工呼吸器、流動食など、体内へ管を挿入するときに感染するリスクが高い。コロナで入院した患者は、呼吸器系がやられるため、こうした措置を受ける機会も多い。

 『残念なことに、一部の地域でカンジダ・アウリスが拡大しています』と、米疾病対策センター(CDC)の真菌症部長トム・チラー氏は言う。『救急病院やコロナ病棟にまで広がっているところもあります。いったん感染が発覚すると、完全に取り除くのが難しいので、非常に心配です』。

 カンジダ属の真菌は、もともと舌や性器に白い斑点ができる程度の軽い症状を引き起こすことで知られていた。ところが、カンジダ・アウリスは09年に帝京大学の槇村浩一教授らが初めて報告してから、少なくとも40カ国で報告され、数千人の感染者が出ている。日本型の病原性は低いものの、致死率が30~60%に上るタイプもある。

 薬剤に耐性を持つ菌は、カンジダ・アウリスだけではない。既に世界では、数百万人が様々なスーパー耐性菌に感染しており、カンジダ・アウリスの感染拡大はその危機をさらに悪化させる恐れがある。19年、CDCはカンジダ・アウリスを米国の薬剤耐性菌のなかでも最大級の脅威と位置付けた。今年は8月末までに、米国内で1364件の感染が確認されている。18年全体の感染者数と比較して4倍強だ。〈中略〉

 2019年、世界保健機関(WHO)は薬剤耐性菌を人類の健康に影響を与える10大脅威のひとつに挙げ、今や簡単に治療できるようになった結核や淋病すらも制御できない世界へ逆戻りしてしまうのではとの懸念を示した。世界的に家畜や人間の医療現場で抗菌薬を乱用したことが、スーパー耐性菌を誕生させたといわれている。だが、ワシントン特別区にある疾病動態経済政策センター(CDDEP)の設立者で代表者のラマナン・ラクスミナラヤン氏は、気候変動によって真菌感染症が将来さらに拡大するだろうと予測している。〈中略〉

 『抗生物質が効かない細菌が増えているように、抗菌薬が効かない真菌も人類を脅かすようになるかもしれません』とラクスミナラヤン氏は警告する。多剤耐性結核菌や、北米を中心に症例が急激に増えているクロストリディオイデス・ディフィシルなどの強力な細菌は、米国で年間280万件というスーパー耐性菌感染症の99%を占め、死者はおよそ3万5,000人に上る」(2020/11/23 日経ナショナル ジオグラフィックから引用・紹介)。

 

 そしていまだに、アフリカなどの後進国、例えば「アフリカ中部のコンゴ民主共和国で麻疹(はしか)が流行しており、今年に入ってこれまでに5,000人以上が死亡した。世界保健機関(WHO)が27日、明らかにした。この数は、同国におけるエボラ出血熱による死者数の2倍以上に当たるという。

 WHOの予防接種部門を統括するケイト・オブライエン氏はスイス・ジュネーブで記者らに対し、同国での麻疹の流行規模は『世界最大』であり、『われわれがこれまでに経験した中でも最大規模』だと述べた。

 WHOによると、同国で記録された症例数は11月17日の時点で25万270件。うち5,110人が死亡したという」(2019/11/29 AFP)。

 

 先進国といえども、麻疹(はしか)といえども、警戒を怠ってはならない。というのは、「風疹(三日はしか)は皆さんもご存じの通り、妊娠初期に妊婦さんが感染してしまうと胎児へウイルス感染が起こり、難聴や白内障、心疾患、発育遅延など先天性風疹症候群といわれる赤ちゃんが生まれる可能性があります。日本では2003年から2004年に局地的に風疹が流行し、つらいことに先天性風疹症候群と診断された赤ちゃんが10名もいました。

 報道機関や医師、患者会による啓蒙活動もあり、風疹と妊娠に関しては世間の理解も進み、妊娠前に抗体価を確認される女性も増えています。〈中略〉

 では、麻疹ですが、昨年末も沖縄や大阪で局地的な流行がありました。

 麻疹は非常に感染力が強く、風疹が飛沫感染(唾液のしぶきなどで感染する)するのに対し空気感染します。空気感染とは、感染者と同じ空間にいるだけで感染し、マスクなどでは予防できません。妊娠中に麻疹に感染すると、症状は重症化することが多く、また流・早産の頻度が上昇すると報告があります」(IVFなんばクリニック)。

 さまざまなパンデミックが連続する時代に備えよう。

断章282

 「これほど絶え間なく、歩けば歩いたで、口を開けば開いたで、自分の運命を訴え、自分の屈辱を、自分の苦悩を、自分の受難を嘆いている民族は、世界中を探しても他にはいない」とは、さる国(日本ではない)で韓国について言われたことである。

 

 「『マルロマン』。韓国語で『言葉だけ』『口先ばかり』を意味する。韓国の保守層が文在寅ムン・ジェイン)大統領を批判する言葉で、最近の対日外交を評するときにも使われる。

 新年の記者会見で、日本企業や日本政府に賠償を命じた判決や裁判の手続きに懸念を示し日韓関係修復への意欲を力説してから40日近くたつが、目に見える新たな動きはない。

  19日、ソウルの青瓦台(韓国大統領府)で珍しい出来事があった。韓国メディアによると、文大統領は李洛淵代表ら革新系与党『共に民主党』指導部と懇談した席上、旧日本軍による従軍慰安婦問題について『当事者の意見を排除し、政府同士で合意するには困難がある』と述べ、『日本による心からの謝罪にかかっている』との認識を示した(引用者注:「心からの謝罪」をした後には、賠償(金銭)を求められることは世の常識である)。

 日本政府には受け入れがたい案だ。2015年の日韓政府間合意で、安倍晋三首相(当時)が『日本国内閣総理大臣として、改めて慰安婦としてあまたの苦痛を経験され心身にわたり癒やしがたい傷を負われたすべての方々に対し、心からのおわびと反省の気持ちを表明する』(引用者注:この表明は明らかな誤りだった)と明らかにし、政府予算から10億円(引用者注:日本国民の血税である)を、韓国が設立した基金に拠出した経緯があるからだ。『政府の公式合意』『合意を土台に韓日間で解決策を協議したい』という新年会見での文氏の発言からも外れている。

 この話には続きがある。与党指導部との懇談会から何時間もたたずに大統領府の報道官が『韓日関係正常化の努力が発言の趣旨だった』と文氏の〝真意〟をメディア側に追加説明したという。青瓦台が『日本は心から謝罪すべきだ』から一転、『韓日関係は重要』に変わった背景について、複数の外交専門家は『対日外交のスタンスを整理できず、混乱している』『内政の課題に追われ、検討が後回しになっている』と話す ―― 引用者注:この外交専門家は、まるでシロウトである。日本向けと韓国国内向けを使い分けることは、韓国常套の二枚舌である。

 漂流する文政権のリトマス試験紙がまず3月1日に控える。日本統治下の1919年に起きた最大の抗日独立運動三・一運動』記念式典での演説だ。文氏がそこでも『心からの謝罪』を日本に求めるようなら元のもくあみになる。〈中略〉

 1月8日、ソウル中央地裁が日本政府に元慰安婦の女性12人への慰謝料支払いを命じた判決後、別の元慰安婦20人が日本政府に損害賠償を求めている訴訟の判決日程が1月13日から突如、延期された。その公判が3月24日、同じソウル中央地裁で弁論から再開する。

 原告には元慰安婦女性の象徴的存在である李容洙が含まれている。『日本からお金でなく事実認定と謝罪がほしい』と話している ―― 引用者注:事実認定と謝罪が行われれば、また鬼の首を取ったように世界中で「反日」の宣伝に利用するだろう ―― ことが、文氏の冒頭の発言につながった可能性もある。判決までには一定期間かかる見通しだが、今度こそは、主権国家は外国の裁判権に服さないとする『主権免除』の原則が認められるかが注目される(引用者注:韓国の司法への甘い幻想にすぎない)。原告の主張を全面的に認める判決が続き、文氏がそれを黙認するようなことになれば、『文政権下での関係改善はもはや無理』とのムードが日本を覆うのは避けられない。〈中略〉

 大統領の任期切れまで残り1年余りとなり、政権内で与党強硬派の影響力が急速に高まっているとの指摘がある。夏ごろには、与党内で次期大統領選の候補者が固まる。与党議員や官僚の視線は次の権力者に向かい、現職大統領の求心力は一気に落ちるのが常だ。歴史問題で日本に歩み寄ろうとしても『大統領選に不利になるからやめろ』と与党側から羽交い締めにされてしまう――。韓国の政治学者はこう分析する」(2021/02/26 日本経済新聞・峯岸博)。

 

 「慶北道のパク・ヨンソン議員が日本の歴史わい曲に対する強硬な対応を促した。パク議員は26日、開かれた第321回臨時会第1回本会議の5分自由発言を通じて『周辺国の歴史わい曲をめぐる葛藤は韓国や日本、中国の友好関係と未来を依然として遮っている』として『日本が歴史を歪曲しながらも独島(ドクト、日本名・竹島侵奪への野心を捨てられずにいる理由は大韓民国がいつか“対馬”の返還を主張することに備えた策略』と主張した。

 パク議員は『独島と“対馬”を明らかな韓国領土にするために“対馬島失地回復国民運動”の火種を慶北道が率先して蘇らせ、独島および対馬教育を強化するだろう』と促した」(2021/01/27 韓国・中央日報)。

 韓国には、大勢のパク・ヨンソンがいることを忘れてはいけない。