断章285

 成功した人間は(国家、政党も)、周囲が見えなくなり、歴史の教訓を忘れがちである。

 ヒトラーは、ナポレオンのロシア遠征の教訓を忘れた。アメリカは、アレキサンダー大王や大英帝国アフガニスタン侵攻の教訓を忘れた。太閤秀吉は、白村江の戦いの教訓を忘れた。

 

 中国共産党は、現在(全体主義支配)の成功に酔っている。

 なので、「中国の栗 戦書全国人民代表大会全人代、国会に相当)常務委員長は8日、常務委の活動報告を公表した。報告は、沖縄県尖閣諸島周辺で頻繁に活動する海警局の武器使用権限を定めた海警法を制定した目的として『習 近平強軍思想を貫徹し、新時代の国防と軍隊建設の必要に応えるため』と明記。中央軍事委員会の指揮下にある海警局が、習近平国家主席(中央軍事委主席)が主導する事実上の『第2海軍』であることが鮮明となった。

 海警局は中国の海上法執行機関。活動報告は、海警法をはじめとする安全保障関連法により『国家の領土安全のための法的保護を提供する』と強調した。2月に施行された海警法には『習近平強軍思想』の表現はない。

 一方、活動報告は昨年6月に施行された香港国家安全維持法(国安法)に関して『香港の長期にわたる無防備で深刻な状況を転換した』と指摘。民主派を排除する選挙制度変更などにより『愛国者による香港統治の確保』を図ると主張した」(2020/03/08 時事通信)と、バリバリの強気である。

 

 なるほど、1978年以降の中国は驚異的な経済発展を遂げ、今や先端技術開発や軍事力においてもアメリカを猛追中である。しかし、思い出すべきである。あの旧・ソ連邦 ―― 今では、強制収容所群のあった貧しい軍事大国としか記憶されていないけれども ―― は、表向きの経済統計では、工業部門の成長率(年平均)は第1次5ヵ年計画のときには19.1%、第2次5ヵ年計画のときには14.5%、1950年~1958年には10.9% (国民総生産では7.1%)と急速に成長し、1957年にはアメリカに先んじて世界初の人工衛星スプートニク1号を打ち上げ、アメリカを「スプートニク・ショック」で震撼させた。軍事面でも、1955年には実戦向きの水爆実験をした。ソ連共産党が成功に酔っていた時代だった。全体主義支配は、さらに35年以上続いたが、ある日あっさり瓦解した。

 

 中国(共産党)はどうか? 

 「すでに『人口ボーナス』期は終息を迎え、労働コストは上昇、貯蓄率も減少した。米中貿易摩擦が示すように、過度に輸出に依存した経済成長を続けることも国際環境から困難となった。

 中国の1人当たりGDPはまだ1万ドル。アメリカの6万ドル、日本の4万ドルとの差は大きい。高齢化が急速に進行する中で『豊かになる前に老いる』リスクに直面している。人口増加が見込めない中では生産性を高めるしかないが、生産性(全要素生産性TFP)上昇率は1996年から2004年の6.1%から、2005年から2015年は2.5%に減少したとの推計もある」(2020/09/28 東洋経済/API大矢伸)。