断章181

 金儲け、大いに結構。立身出世、上等だ。必ずいつか、たとえ少しでも、「世のため、人のために」働こうという志を忘れぬ限り。

 「世のため、人のために」を忘れた金儲けは、守銭奴であり、「世のため、人のために」を忘れた立身出世は、餓鬼である。人として生まれたからには、「世のため、人のために」という、魂に宿る光を守りたい。

 

 出世をしたが、魂に宿る光を失くした者。

 極(きわ)まれば、次のようなことになる。「100万の大軍を擁した南方軍総司令官の寺内 寿一元帥。前線で部下の兵士が餓死しているというのに、自分は『東洋のパリ』といわれたサイゴンの旧フランス総督の大邸宅で、日本から軍用機で呼び寄せた芸者をあげてどんちゃん騒ぎ。あるいは、特攻作戦に専念した第4航空軍司令官の富永 恭次中将。『君たちだけを行かせはしない』と言って特攻隊員を送り出し、自分は台湾へ敵前逃亡」(小室 直樹)。

 

 ところで、「厚生労働省は30日、新型コロナウイルス感染拡大に関連する解雇や雇い止めが、見込みを含めて29日時点で4万32人になったと明らかにした。7月1日時点で3万人を超えてから1カ月弱で1万人増加した。政府が緊急事態宣言を全面解除してから2カ月が経過した現在も、失業者がだんだんと増えている実態が浮き彫りになった」(2020/07/30 共同通信)。

 

 「新型コロナの影響で生活が苦しくなった世帯が最大20万円を無利子で借りられる『緊急小口資金』の申請が殺到し、申請総額は約1045億円となり、リーマン・ショックの影響が大きかった2009年度の約80倍に上ることが24日、事務を総括する全国社会福祉協議会への取材で分かった。

 生活に行き詰まる人がかつてない規模で増えていることが浮き彫りになった。申請数は7月以降も週2万~3万件のペースで増加しており、頼る人はさらに増えそうだ。緊急小口資金は、もともとは低所得世帯が対象の制度だが、国はコロナ対応の特例として対象を拡大した」(2020/0724 共同通信)。

 

 その一方で、「国会は規則で議事と無関係な書籍などを読む行為を禁じているにもかかわらず、国会の審議中に、議員が娯楽小説を読んだり、スマートフォンで趣味のウェブサイトを閲覧したりする行為が横行している。毎日新聞新型コロナウイルス対策の審議など国民の関心の高かった5、6月の本会議や各委員会で調査したところ、こうした行為を少なくとも10件確認した」(2020/07/25 毎日新聞)というのだ。

 

【参考】

 「知識労働者は全体として見たとき、支配するものである。したがってリーダーである。それは、知性、価値観、道徳観が要求されるということである。

 今日、道徳教育は人気がない。それは思考や言論や反対を抑圧するために乱用され、権威への盲従を教えるために使われてきた。事実、道徳教育自体がこれまであまりに非道徳的だった。

 しかし、道徳的な価値観を切り捨てたのでは、間違ったものを植えつけるだけである。無関心、無責任、無感動である。もちろん知識社会における道徳教育のあり方については、十二分に論議しなければならない。しかし、教育が道徳を伴い、かつそれを重視するものでなければならないことは変わらない。知識と知識労働者には責任が伴う」(P・F・ドラッカー)。