断章479

 一面的なものの見方、あるいは党派性、さらには曖昧(あいまい)な現実認識をよりどころに、「資本主義からの撤退」とか「資本主義の終焉」、あるいは「脱成長」を語るインテリがいる。これは、「競争よりも平等な和諧社会の建設」をうたう中国共産党(習 近平)、あるいは、ひと昔まえの「清貧の思想」の劣化版である。

 日本にとって、この者たちは無責任な貧乏神である。おのれのイデオロギー、おのれの社会的立場だけが大事であって、まじめな読者が彼らの虚言にまどわされても、まったく気にしないのである。彼らの虚言が広がり、「資本主義から撤退」したり「脱成長」すれば、日本は、さらに貧しくなり、国民は困窮するだろう。

 

 グローバル化にともない、世界経済は急速な技術発展と共に成長した。この現代世界で、意図してダイナミズムを避けるものは、衰退し落後する。とりわけアグレッシブ(攻撃的)な世界市場の競争においては、撤退したり「脱成長」すれば、没落は避けられない。後進国は、先進国のような豊かさを目指して、あるいは台湾・韓国・シンガポールにつづけと努力を重ねている。その過程で国内の社会的不平等が拡大したとしても、後進諸国の生活水準は全体として改善したのである。

 

 たとえば、インドネシアは、「ルフット海洋・投資担当調整大臣は24日、ロイターとのインタビューで、今年の輸出が過去最高の2,800億ドルに達する可能性があると述べた。ニッケル鉱石の輸出禁止後にニッケル鋼の輸出が急増しているほか、他の商品も価格上昇で輸出額が押し上げられていると説明した。

 インドネシアは一般炭、パーム油、精製スズの世界最大の輸出国で、ニッケル鋼、銅、天然ゴムなどの天然資源の主要生産国。ルフット氏は、2024年までに輸出は3,000億ドルを超える可能性があると述べた。インドネシア政府は、2020年にニッケル鉱石の輸出を禁止し、ニッケル加工事業への投資を呼び込んだ。

 ルフット氏は、ニッケルの成功事例を踏まえ、ボーキサイト、銅、スズ、さらにパーム油でも下流部門の加工産業育成に取り組んでいると説明。(中略)『下流部門振興がうまくいけば、経済は2024年までに指数関数的に成長するとみられる』とし、『インドネシア国内総生産(GDP)は30年までに3兆5,000億ドルと、21年の1兆1,900億ドルのほぼ3倍になる可能性がある』と指摘した」(2022/10/24 ロイター通信)。

 単なる資源輸出国から、加工産業を育成しての製品輸出立国を目指しているのだ。

 

 日本以外の全ての経常黒字国(中国、ドイツ、韓国、台湾、スイス)は、貿易で稼いでいる。持続的なイノベーションを伴う世界市場・資本制社会の競争システムの下では、他国(他企業)が停滞あるいは後退すれば、ただちにそれに取って替わろうと手ぐすねを引いている国家(企業)がひしめいている。

 おのれの本を売るために無責任な発言をするインテリを、信じるな! その道を進めば、日本は競争に負けてさらに貧しくなり、国民は素寒貧になるだろう。