断章477

 まもなくウクライナにも冬が来る。

 「人を守ってこそ、自分も守れる。己のことばかり考えるやつは、己をも滅ぼすやつだ!」(島田 勘兵衛・映画「七人の侍」)。

 そうだ。わたしは、厳冬期が来る前に、日本からウクライナへの軍事装備品の支援を重ねて訴えたいのだ。

 

 ロシアのウクライナ侵攻の様態は、悪質きわまりないものである。

 たとえば、「赤十字国際委員会(ICRC)は31日、ウクライナ東部ドネツク州の親ロシア派支配地域にある捕虜収容所が攻撃され、約50人のウクライナ兵が死亡した事件を『強く非難する』とツイッターに投稿した。ICRCは負傷者支援のため現地入りを求めているが、まだ実現していない。

 事件は29日、中心都市ドネツク近郊エレノフカの収容所で起きた。ロシア国防省は先に、原因調査のため『国連とICRCの専門家を招待した』と説明したが、ICRCは『(現地入りを)認められていない』と否定した。

 ロシア国防省は『米国がウクライナに提供した高機動ロケット砲システム(HIMARS)で攻撃された』と主張している。ウクライナ側は爆発が収容所の内部で起きたとみており、ロシア側が拷問を隠蔽(いんぺい)するための自作自演だと非難。ゼレンスキー大統領はロシアを『テロ国家』と呼び糾弾している。

 事件前後の衛星画像を分析した複数の専門家のツイッター投稿によると、収容所の敷地内にあらかじめ穴が掘られ、埋葬に使用された形跡があるという」(2022/08/02 時事通信社)。

 あるいは、「国連(UN)の紛争下の性的暴力担当国連事務総長特別代表(SRSG-SVC)プラミラ・パッテン氏は14日、AFPのインタビューで、ロシア軍によるレイプや性的暴行はロシアの『軍事的な戦略』であり、『被害者の人間性を奪う意図的な戦術』だとの認識を示した。

 レイプがウクライナの戦争で武器として使われているのかとの質問に対し、パッテン氏は『ウクライナにはそれを示唆するものがすべてある』と述べた。同氏は『レイプの最中にどのような言葉を投げ掛けられたのかに関する被害者の証言が、被害者の人間性を奪う意図的な戦術であることを明示している』との見解を示した。パッテン氏によると、被害者の大半は女性や少女だが、男性や少年も含まれるという。ただし、『報告されるケースは氷山の一角』であり、戦時下で信頼性のある統計的な数値を得るのは難しいと説明した」(2022/10/14 AFPBB News)。

 

 ロシアは当初、ウクライナ侵攻を「特別軍事作戦」と呼んだが、今ではウクライナの社会インフラすべてを焼け野原にしようとしている。

 「ロシアによるインフラへの攻撃で深刻な電力不足に見舞われたウクライナは、北大西洋条約機構NATO)や欧州連合EU)など国際社会に支援を求めている。同国外務省が20日、明らかにした。発電機や部品、ガスの輸送システムなどが必要という。

 ウクライナでは20日計画停電や公共交通の間引き運行など大規模な節電が始まった。ロシアは10日以降、ウクライナ全土の電力インフラを標的とした攻撃を続けている。米CNNが伝えたウクライナ当局者の話によると、これまでに発電能力の4割が失われた」(2022/10/21 日本経済新聞)というのだ。

 

 「私たちは今、燃え尽きたロシア軍の戦車や、ウクライナのTB2無人攻撃機の動画といった、ぞっとするものの思わず見入ってしまう映像や、ゼレンスキー大統領の感動的な演説などに釘づけになっているが、これほど強い関心をどれだけ長く抱き続けられるだろう? 

 ドイツの有権者の89パーセントは、ウクライナの人々のことが心配だ、あるいは、非常に心配だ、と言っている。だが、エネルギー供給の中断についても66パーセントが、ドイツの経済状態の悪化についても64パーセントが同じように心配している。

 世界は今、1カ月前よりもなおいっそう深刻なインフレ問題を抱えており、国内の日常生活に直結する問題はたいてい、はるか彼方の国々の危機に優先するものだ。

 私たちはあとどれだけ長く注意を向けていられるだろうか? もしキーウの攻囲戦が何週間もだらだらと続いたら? あるいは、停戦が実施され、それから破綻し、再び実施されたとしたら? はたまた、ドネツク州とルハンスク州の境界をめぐる交渉があまりに退屈なものになったとしたら?」(ニーアル・ファーガソン)。

 厳冬期に向かうウクライナに急ぎ軍事装備品を支援すべきである!