断章473

 世界の主だった国々の経済は、完全に資本のシステムになった。だから、熾烈な〈競争〉から逃れるつもりで田舎に個人的に移住したりしても、国家と企業は〈競争〉から逃れることができず、個人は否応なく国家の命運に縛られているのだから、(本当の意味では)逃れることは出来ないのである。好況下でも恐慌下でも平時にも戦時にも、〈競争〉はつづく。いかに厳しくとも、いかなる国も、企業も、個人も、耐えて競わなければならないのである。

 

 困ったことに、日本は先端技術開発〈競争〉で先を越されつつある。

 たとえば、「量子コンピューティングは、次世代情報革命の鍵となる技術とされる。世界の学術界は現在、複数の技術ルートで量子コンピューターを研究しており、超伝導量子ビットは最も有望な方向性の一つとされる。中国科学技術大学の潘、朱、彭各氏らは2021年5月、62ビット量子コンピューターのプロトタイプ『祖冲之号』を開発し、プログラム可能な二次元量子ウォークを実現した。米国は2019年、中国は2020年にそれぞれ量子コンピューターのプロトタイプ『Sycamore(シカモア)』と『九章』を発表し、量子超越性を達成した。

 量子超越性とは一つのハードルのようなもので、特定の問題において、新たに生まれた量子コンピューターのプロトタイプの計算能力が最も優れた古典コンピューターを上回った場合、将来的に多方面で超越する可能性を証明する。「九章」は光学的量子技術を使用している。

 中国科学技術大学の研究チームは、このほど、中国科学院上海技術物理研究所と協力し、プログラム可能な66ビット超伝導量子コンピューターのプロトタイプ『祖沖之(そ・ちゅうし)2号』の構築に成功したと明らかにした。『ランダム量子回路サンプリング』の計算速度は、現在の世界最速のスーパーコンピューターの1000万倍以上だという。『祖沖之2号』の成功により、中国は二つの技術ルートで『量子超越性』を達成した唯一の国となった」(2021/11/04  Xinhua Newsの記事を再構成)。

 あるいは、「中国核工業集団(CNNC)が開発し、独自の知的財産権を有する多機能小型モジュール加圧水型原子炉(PWR)『玲竜1号(ACP100)』は6日、海南省昌江原発基地で上部シリンダーのつり上げが完了しました。『玲竜1号』は世界で初めて着工した陸上の商用化小型モジュール炉でもあります。

 『玲竜1号』プロジェクトは2021年7月13日に着工し、総工期は58カ月を計画しています。出力100万キロワットの第3世代大型原子炉『華竜1号』と比べると、『玲竜1号』1基当たりの出力は12万5000キロワットで、発電のほか、都市部の冷暖房、工業用蒸気供給、海水淡水化、濃化油採掘など、原子力エネルギーの多目的利用が可能です。完成すれば年間発電量は10億キロワット時に達する見込みです」(2022/07/09 CGTN Japanese)。

 

 日本の主力である車産業においても、「ベトナムの複合企業ビングループ傘下の自動車子会社ビンファスト(従業員6000人)は、ハイフォンの電気自動車(EV)工場で従業員を8000人増やすと発表した。同社初の電動SUV (スポーツ用多目的車)の米国輸出をにらみ、増産体制に入る狙い。

 同社のフェイスブック投稿によると、採用するのは組み立て工や技術者やエンジニアなどで、今年8月から9月の間に働き始めてもらいたいとしている。

 本工場の生産能力は年25万台。同社は2026年までの目標として同工場の生産能力年60万台、米国で建設予定の工場分も含め、全体で販売年75万台を掲げている。ベトナムで生産する完全電動SUVも北米と欧州向け都市、年末までに米顧客への納車を見込む。米国では予約が既に8,000台入っているという」(2022/08/08 ロイター通信)のだ。

 ところが、「電気自動車(EV)の競争力を左右する電池材料で日本勢が窮地に追い込まれている。かつて電池部材は日本の素材メーカーのお家芸だった。だが今や中国勢に供給力で圧倒され、価格面でも太刀打ちできない。原材料となる資源もほぼすべてが海外依存だ。電池リサイクルや次世代電池の技術でいかに先行できるかが、日本勢の反転攻勢のカギを握る」(日経産業新聞)。