断章470

 「友人に聞いた話だが、米国の知人が持ち家を売りに出しているという。450平米の中古住宅でプール付き、リフォーム済みのきれいな家を1年前に120万ドルで売りに出していたが、それをいま何と34万ドルに値下げしているとのこと。ところが、それでも買い手が現れず、『買ってくれない?』と相談を持ちかけられたらしい。

 FRB米連邦準備制度理事会)の相次ぐ利上げを背景に、米国10年債利回りは9月28日に4%台をつけたが、米国住宅ローンの30年物固定金利も6.7%(9月29日時点、前週6.29%)と2007年以来の水準に上昇している。これでは住宅市場が冷え込むのも無理はないが、米国では住宅市場の動向が個人消費の趨勢に結びつくだけに、先行きの景気減速が懸念される」(2022/09/29 富田 隆弥)。

 そして、「9月30日のニューヨーク株式市場では、ダウ平均株価の終値が2万9000ドルを割りこみ、前の日に比べて500ドル10セント安い、2万8725ドル51セントとなりました。終値としては2020年11月上旬以来、1年11か月ぶりの安値で取引を終えています。

 市場ではアメリカのFRB連邦準備制度理事会)をはじめ、世界の主要中央銀行の大幅な利上げにより景気後退への懸念が強まっています。また、この日に発表されたアメリカの個人消費に基づく物価指数が市場の予想を上回り、物価の高止まりが警戒されたことなどから売り注文が膨らみ、ほぼ全面安の展開となりました」(2022/10/01 TBS NEWS)。

 

 去る9月25日、日本経済新聞日経ヴェリタスの記事を転載し、警告していた。

 「『物価安定の回復に失敗すれば、後々にはるかに大きな痛みを伴う』。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、米連邦公開市場委員会FOMC)後の記者会見で強調した。

 今回のFOMCでは3会合連続となる0.75%の大幅利上げを決定。政策金利の誘導目標は3.00~3.25%に達した。FOMC参加者の22年末時点での政策金利見通しの中央値は4.4%となり、11月の次回会合でも大幅利上げが継続する可能性が高まった。

 FRBが改めてタカ派姿勢を示したことで、インフレがピークアウトし利上げが早期に止まるとの楽観論は後退した。21日の米ダウ工業株30種平均が3カ月ぶりの安値で終え、米2年物国債利回りは一時4.1%台と15年ぶりの水準まで上昇(債券価格は下落)。株と債券の同時安が進んだ。

 欧州中央銀行(ECB)も9月に0.75%の利上げを決めており、米欧の中銀は競うようにインフレ鎮圧に向けた利上げを急ぐ。8月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.3%上昇と市場予想を上回り、家賃などの上昇が目立つ。ユーロ圏の消費者物価指数も8月に9.1%上がり、インフレが加速している。

 第4次中東戦争イラン革命により2度のオイルショックが発生した1970~80年代には、FRBの不十分な利上げがインフレ加速を招き、米国経済は大きな打撃を受けた。『中央銀行が当時の失敗を強く意識している』(インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジスト)だけに、目先の景気を犠牲にしてでも利上げを推進し続ける可能性は高い。

 ただ、利上げが抑制できるのはあくまで雇用や消費といった需要だ。ロシアのウクライナ侵攻による資源高のような、インフレの元凶ともいえる供給制約の改善には役に立たない。

 高インフレと景気後退が併存する『スタグフレーション』が現実味を帯びる。

 こうした状況下では株・債券の同時安が進行するリスクは高い。世界景気の後退懸念が強まり、MSCIの先進国株指数は今年すでに2割下落。本来ならば株価と逆方向に動きやすい米国債の代表的な指数も、FRBの利上げの影響で1割以上下がった。(中略)

 日本は欧米と比べて物価上昇が緩やかで、日銀も低金利政策を維持している。それでも欧米で物価高と景気後退が同時進行すれば、日本の株価や金利も影響は免れず『日本の資産だけに資金を振り向けている投資家にとってもスタグフレーションは他人事ではない』(ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミスト)。多くの投資家が未知の困難に立ち向かい、資産を守る方法を探る必要がある」(2022/09/25 日本経済新聞)。

 

 同じような雰囲気が漂っている。一度あることは二度ある。

 たとえば、「ロシアのプーチン大統領は現地時間30日午後、ウクライナ東・南部4州の一方的な併合を宣言する見通しだ。2014年のクリミア半島併合に続く暴挙は、戦前の帝国主義の時代を想起させる。

 ナチス・ドイツは1938年、『ドイツ系住民への迫害』を主張してチェコスロバキアズデーテン地方の併合を要求した。英国やフランスは戦争回避の(対ドイツ)融和策として、併合を認めたが、増長したドイツは翌年ポーランドに侵攻し第2次世界大戦が始まった。

 ソ連も直後にポーランドに侵攻し、同国は独ソによって分割された。ソ連リトアニアなどのバルト3国にも軍を進め、ソ連に組み込んだ」(日本経済新聞)。

 だから、1929年世界大恐慌の再来に対しても、「想定外」としないで、備えるべきである。