断章464

 世界的な大混乱・大波乱・大変化は、間違いなくやって来る。

 「アメリカ資産運用大手GMOの共同創業者兼チーフストラテジスト、ジェレミー・グランサム氏は、7日、世界経済は根強いインフレやタカ派的な金融政策、地政学的緊張を背景にここ数年で最も不安定な状況にあるとし、金融市場は一段の下落に備える必要があるとの見方を示した。

 ロイター・グローバル・マーケッツ・フォーラムで『世界経済は2007年の住宅バブル時の狂気よりも危険に見える局面にある』と述べた。極めて過大評価された“スーパーバブル”資産の一部は昨年にピークに達したとした上で、今後は大幅に膨らんだ成長株の価値下落や物価上昇に加え、利上げによって生じ得る世界の住宅市場の混乱に対処する必要があると指摘。『世界的なファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の悪化は実に衝撃的だ』と述べた。

 経済や市場の動揺により、金融引き締めを通じてインフル抑制を目指す各国中央銀行の決意が試されるとも指摘した。S&P総合500種指数の見通しについては、現在のトレンドを踏まえると、直近の3979.87から1年後には3000前後に下落していると予想。これを容易に下回るリスクもあるとした。

 さらに、気候変動に関連した経済の混乱や世界的な労働力の減少、限られた天然資源などが要因となってインフレ圧力は持続する可能性が高いとし、株式のリターンを一段と圧迫するとの見方を示した」(2022/09/08 ロイター通信)。

 

 「資本制生産様式が支配的に行なわれている社会」の経済の〈運動法則〉 ―― 法則であるから個々の人間の主観や願望によっては絶対に動かすことができない ―― が発現させるものは、〈恐慌〉である。

 ―― ここでは、資本制生産様式とは、「生産手段を資本として私有する資本家が、自己の労働力以外に売るものを持たない労働者から労働力を商品として買い、それを上回る価値を持つ商品を生産して利潤を得る経済構造。生産活動は利潤追求を原動力とする市場メカニズムによって運営される」(デジタル大辞泉)経済システムとする。

 

 イギリスは、1825年以降、1836、1847、1857、1866、1873と循環的に〈恐慌〉に見舞われた。恐慌のたびに、多くの労働者が塗炭の苦しみ(あたかも泥水や炭火の中に落とされたかのような苦しい境遇)に落ちた。

 1873年の恐慌は、5月のウイーン取引所恐慌に始まり、19世紀最大の世界恐慌になった。1873年の〈世界恐慌〉以後、それまでのほぼ10年周期だった循環が変わった。1896年に再び好況になるまでの23年間は、短期の好況と長期の不況が続いた。独占体の形成や国家の経済介入 ―― とはいえ、「自由市場への干渉行為は干渉の立案者やその支持者が求めている目的を果たせないだけではなく、逆に元の状態よりも悪化した結果と状況に至る。さらに、その悪化した状況を是正するために干渉を追加すれば、市場は死んでしまう」(小室 直樹) ―― が通例になると、典型的な〈恐慌〉は発生しなくなったように思われた。

 それでも、経済の〈運動法則〉は形を変えて発現する。それが、1929年世界金融恐慌であり、その後も、度々の通貨危機、あるいは金融市場が大きく上昇しては暴落、を繰り返してきた。

 

 そして、「2008年のリーマン危機で金融資本主義が崩壊した後は、国家管理相場という中央銀行バブルをつくることでバブルは延命してきたが、それは米欧日がQE量的緩和)によって資金を注入し続けたからである。今、金融緩和を続けている国は日本以外に存在しない。(中略)

 FRB米連邦準備制度理事会)はコロナ禍を背景としたリセッション局面が終息した後も2年近くにわたって超緩和政策を続けた。このMMT(現代貨幣理論)政策がインフレを生んだのだ。MMTは政府が自国通貨建ての借金をいくら増やしても財政は破綻せず、インフレもコントロールできるとする理論である。米金融当局は米国経済をソフトランディングできると自信を見せているが、インフレは一度加速し始めると、沈静化させるのが非常に難しい。

 インフレに対処するために非伝統的な政策を段階的に廃止し、政策金利を引き上げれば、大規模な債務危機と深刻な不況を引き起こすリスクがある。しかし、緩い金融政策を維持すれば、二桁台のインフレに陥り、次の負の供給ショックが発生したときに深いスタグフレーションに陥るリスクも高い」(2022/06/16 石原順)。

 大混乱・大波乱・大変化に備えなければならない。