断章417

 「今回の戦争は多くの戦訓を日本に提供するが、ドローンもまた例外ではない。ドローンがあれば勝利できるわけではないが、もはやドローンなくして勝利はない。ドローンを軽んじ、いまだに武装ドローンも自爆ドローンも保有せず、研究も対策もない自衛隊は新時代の戦闘には耐えられない。このままではドローン大国の中国に必敗するだろう。

 少なくともロシア軍よりもドローン対策が遅れ、ミサイル弾薬も少なく、訓練も研究もなく、はるかに兵站の脆弱な自衛隊が、中国軍のようなドローンを前提とする軍と対峙すれば、生身(なまみ)の自衛官やそれが搭乗する兵器、そして兵站がドローンに一方的に殲滅される悲惨な結果になりかねない。

 認知領域における戦いでも、中国軍は映像メディアとしてのドローンの使い方に秀でており、有事の際には自衛隊を撃破する映像等を投稿して“善戦”と“正当性”を印象付けようとし、それはかなりの効果を発揮してしまうだろう。

 期せずして、今年は国家安全保障戦略と防衛大綱の改定が予定されており、これは自衛隊を脱皮させる最後のチャンスだ。これを逃せば5年後まで本格的なドローンの導入・技術産業戦略・ドクトリンの策定は遅れ、ますます自衛隊は時代遅れの武装集団に堕していく。

 もう残された時間はない」(2022/03/23 文春オンライン:安全保障アナリスト・部谷 直亮)。

 

 あなたは覚えているだろうか? 

日本で武装ドローンや自律型戦闘ロボット開発の必要性が論じられたとき、「左翼」インテリがこぞって“絶対反対”の金切り声をあげたことを。

 

 「左翼」インテリとは、経済好況期にはもっぱら“人間疎外”を、経済停滞期にはもっぱら“格差拡大”をキャンペーンして、社会に暗いムードをかもし出し、そうすることで「左翼」政党の伸長と自著の拡販をもくろんできた輩(やから)たちである。

 “昭和元禄”や“平成宝永”(なお宝永4年には、巨大な宝永地震があった)と呼べる時代には、彼らは放置された。

 というのは、韓国・台湾・中国からの急速な経済的追い上げはあったが、戦後の順調な経済成長でそれなりに豊かになった日本国民は、それほどモノを欲しいとは思わなくなるし、それほど激しく働かなくなるし、企業はリスクを覚悟で冒険しようとはしなくなり、日本政府も民間もまるっと“幻想の平和”にまどろんでいたからである。

 

 しかし、「アジアが奇跡的な経済発展をとげられたのは、軍事的な圧力にさらされていなかったからだ。そしてそれは、軍事覇権国アメリカによって平和が保障されていたからにほかならない」。けれども、「アジアの経済力の高まりは、軍事力の高まり」、すなわち、軍拡をもたらした。「ユーラシアの沿岸地帯が、アメリカだけでなく、野心を果たそうとする中国やインドなどの艦艇でますます混み合い、また北極海航路の利用可能性がかつてないほど拡大して、ユーラシアと北米の距離が縮小しているなか、世界規模の覇権争いは速度と激しさを増すばかりである」(以上、『地政学の逆襲』ロバート・D・カプラン)。

 そして、ロシアのウクライナ侵攻は、あらためて、「国際社会は、・・・法と秩序を守る中央権力のない社会」(ニコラス・ J ・スパイクマン)、「いいかえれば、世界は無法状態にあるということ」(『地政学の逆襲』)を明らかにした。

 ということは、「左翼」インテリが、武装ドローン・自爆ドローン・自律型戦闘ロボットなどの研究に反対して妨害することは、彼らの“主観的意図”がどうであれ、客観的には自衛官だけでなく日本国民全体の生命と財産を危険にさらしていることになるのである。

 「左翼」インテリたちの「反日プロパガンダとの戦いもまた、急務である。残された時間は少ない。