断章388

 1967年頃の共産党系「学者」先生たち(たとえば横浜国立大学教授・越村 信三郎)は、特権的スターリン主義政治官僚のプロパガンダの受け売りをして、「今日、衰退し腐朽化を深めている資本主義世界体制は、安定的発展をとげつつある社会主義経済との競争のなかにある。社会主義経済は、社会主義的計画経済であるから、社会主義世界体制は、各国の国民経済計画の相互調整、国際分業における専門化や共同化、相互平等の原則にもとづく援助などを通じて、飛躍的な経済発展をとげつつある。帝国主義の支配体制である資本主義社会体制がいちじるしく矛盾を深め、体制的危機を鋭くしているのに比べ、全く対照的な発展をとげている」と述べていた。ドグマに囚われた「学者」の目には、何も見えないのである。

 

 この“社会主義的計画経済”(そのひとつは旧・ソ連の五カ年計画)についての「誤解」は、いまだに流布している。たとえば、「進研ゼミ」は、「ソ連社会主義の国で、五カ年計画によって計画的に経済活動を行っていたため、世界恐慌の影響を受けませんでした。五カ年計画とは、ソ連で、社会主義革命のあと、社会主義国家を発展させるために5年間で達成することをめざしてつくられた計画です。1928年から実施された第一次五カ年計画では,重工業の発展と農業の集団化をめざしました。1929年に世界恐慌が起こったとき、すでにソ連社会主義革命をとげ、国のすべての土地や工場などを国有化して、国の経済活動を統制していました。国が、何をどのくらい生産するかという計画を立てて、その計画にしたがって経済活動を行っていたのです。これを『計画経済』といいます。ソ連は、この計画経済のもと、五カ年計画にしたがって計画的に生産などを行い、経済を発展させていったため、世界恐慌が広がったときも、その影響を受けなかったのです」と書いている。

 こうした見解は、今日の世界基準から大きく立ち遅れていると言わなければならない。というのは、第一に、五カ年計画が根こそぎ的な農民からの農産物収奪を財源としていたこと。第二に、数次にわたる五カ年計画の達成は、実はグダグダで、結局は第二次世界大戦の戦争計画に統合されて終わったことは、すでに明らかだからである。

 

 旧・ソ連の「五カ年計画」の“成功”、その“偽りの繁栄”の真実は、公開された映画「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」において最終的に完全に暴露されている。

 「1930年代、スターリン独裁政権下の旧ソ連に潜入した英国記者がその地で目にした驚愕の真実とは? ポーランドの女性監督A・ホランドが実話をもとに描いた衝撃作。

 1933年。当時、世界恐慌の嵐が吹き荒れる中、スターリン政権下のソ連だけは大国の繁栄を対外的にアピール。イギリスの若き記者ジョーンズは、それに疑問を抱き、自らその謎を解き明かすべく、取材のために単身モスクワを訪問。同地では、NYタイムズの記者デュランティらが安閑とした生活を送っていた。当局の監視の目を盗んでウクライナへと潜入したジョーンズは、そこで人々が飢餓地獄に苦しむさまを目の当たりにする」(紹介文)。

 

 このあたりのことは、「Wikipedia」には、こう書かれている。

ウクライナは拙速な農業の集団化政策などにより2度の大飢饉(1921~1922年、1932~1933年、後者はホロドモールと呼ばれ2006年にウクライナ政府によってウクライナ人に対するジェノサイドと認定された。アメリカ、カナダ、イタリアなどの欧米諸国では正式にジェノサイドであると認定されているが、国際連合欧州議会では人道に対する罪として認定している)に見舞われ、推定で400万から1000万人が命を落とした。

 この『拙速な集団化政策』は意図してなされたものであるという説も有力である。この背景には、レーニンスターリンらによる農民への敵視政策があった。共産党政府のとった土地の共有化を農民は拒むため、多くの住民が農民であったウクライナの統治は共産党政府にとって大きな障壁となっていた。そのため、一説によるとレーニンスターリンらにとってはウクライナの農民の根絶が理想であったともされている」。

 

 ロシア・ウクライナ間の断絶は、今につながっている。

 現在、NATO・ロシア・ウクライナ関係が緊迫の度を増している。

 「ロシアのプーチン大統領は21日、ウクライナ国境周辺からロシア軍を撤退させるよう求める米国や北大西洋条約機構NATO)に対し『緊張の原因は彼らにある』と述べ、緊張緩和の条件としてロシアの安全を保証する条約を要求する姿勢を鮮明にした。NATOの拡大停止など一方的な案を突きつけ、強硬姿勢を強めている。

 プーチン氏はこの日、今年の軍の活動を総括する国防省の会合で演説した。ウクライナ国境周辺の軍備増強には触れず、『米国とNATOがロシア国境付近に軍を展開して演習を繰り返し、深刻な懸念を生んでいる』と主張。『緊張が高まるたびロシアは対応せざるを得ず、状況は悪化する一方だ』と述べた」(2021/12/22 朝日新聞デジタル)。