断章372

 大事なことを覚えるには、繰り返すこと。

 20世紀の共産主義マルクス主義)において、「われわれが見出したのは、第1に『否定主義』。実現されるべき肯定的なものの明確なビジョンよりも『とりあえず打倒』という情念。第2に『全体主義』。社会の理想の実現のために特定の政党や指導組織に権力を集中し、思想言論の統制を行なうことが必要であるというイデオロギー。第3に『手段主義』(引用者注:あるいは利用主義)。未来にある『目的』のために、現在生きている人々のそれぞれに一回限りの生を手段化する(引用者注:利用し使い捨てる)、という感覚である」(見田 宗介)。

 

 1917年のロシア革命後、ボリシェビキ共産党の権威は全世界に広がった。

 つねに清く正しくあろうとはするが、思想的にはヘタレであり、政治的には無能である「インテリ」たちは、共産党に同伴することで、虎の威を借りる狐になった。

 しかも、「桑原 武夫(引用者注:日本のフランス文学・文化研究者、評論家。文化勲章受章。人文科学における共同研究の先駆的指導者でもあった)は、日本のインテリを『大学出身者』と規定した上で、インテリが無力である理由として、『蓄積した知識が現実の生活に結びついていない』弱さがあり、民衆にわかる文章が書けず、民衆に支えられない弱さ」(Wikipedia)があるとした。

 

 旧・ソ連の特権的党=国家官僚は、マルクスロシア革命の“権威”を利用することで、全世界をたぶらかすことに成功した。

 そのために、各国共産党や同伴インテリは、社会主義圏の現実(真実)が「鉄のカーテン」のなかから漏れてきても、「問題もあれば誤りもある。しかし全体としては“社会主義”なのだ」と言って弁護したものである。旧・ソ連の崩壊後には、「1917年のロシアは資本主義経済が根付いていない経済後進国だったから失敗した。マルクスの思想(理論)の敗北ではない」と強弁した。

 しかしそれは、かつて彼らが嘲笑っていたW・W・ロストウ(引用者注:アメリカの経済学者で独自の経済発展段階説を組み立てた。その中の用語である『テイクオフ(離陸)』は広く知られている)まがいの“経済決定論”でしかない。

 旧・ソ連圏の崩壊後は、「中国には問題もあれば誤りもある。しかし中国は社会主義をめざす新しい探究が開始された国だ」と、“天安門事件”後もなお中国を称賛しつづけたが、中国の真実もこれからさらに明らかにされるであろう。

 

【参考】

 「マルクスは、古典派のスミス的な歴史意識を止揚して、資本主義に先行する諸形態から資本主義へ、それを踏まえて社会主義共産主義へという展望を示した。ロストウは、伝統的社会 → 離陸のための先行条件期 → 離陸(テイクオフ)期 → 成熟への前進期 → 高度大衆消費時代への推移を展望して、マルクス主義の発展段階説を批判した」(社会学小辞典から抜粋)。