断章320

 『暴力の人類史』でスティーヴン・ピンカーは言う。

 ヒトは、「苦しみの数を下げる方法を見つけてもきた。そして人類のますます多くの割合が、平和に生きて、自然な原因で死ねるようにもなってきた。私たちの人生にどれほどの苦難があろうとも、そしてこの世界にどれほどの問題が残っていようとも、暴力の減少は一つの達成であり、私たちはこれをありがたく味わうとともに、それを可能にした文明化と啓蒙の力をあらためて大切に思うべきだろう」と。

 

 しかし、マクロで見れば、(今のところ成功している紅色全体主義として)中国共産党核兵器武装している中国人民解放軍を隷下に置いて14億人に君臨している現実。

 またミクロで、次のような記事を見るとき、「文明化と啓蒙? だから、何?」とつぶやいてしまう、わたしがいるのである。

 

 ―― 「子どもがいるからハジけて遊べない。つまんない」。3歳の娘を餓死させたとして、2020年7月7日に保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕された梯 沙希容疑者(24)は、よく友人にこう話していたという。事件が発覚したのは、6月13日のことだ。沙希容疑者は「彼氏」と呼ぶ男性に会うため鹿児島県まで出かけ、東京・蒲田の自宅マンションを6月5日から8日間留守にした。その間、娘の稀華(のあ)ちゃんに食べ物も与えず一人で放置。沙希容疑者が帰宅すると、稀華ちゃんはすでに亡くなっていた。死因は高度脱水症状と飢餓だった。「沙希容疑者から『娘が息をしていない』と通報があり、救急隊が駆けつけると、部屋はパンの袋や空の弁当箱など大量のゴミが散乱し強烈な悪臭を放っていたそうです。稀華ちゃんはマットレスの上に横たわっていましが、とても3歳児とは思えない痩せ細りよう・・・。老人のようにシワだらけで、体重は11kgしかなかったとか」(全国紙社会部記者)。

 子どもへの暴力も後を絶たない。18年3月に東京・目黒区で船戸結愛ちゃん(当時5)が死亡した事件で、雄大(同33)と優里(同25)の夫妻が逮捕されている。イジメは凄惨をきわめた。「雄大と優里は結愛ちゃんに『ダイエットしろ』などと命じ、一日1食しか与えない日もありました。死亡時は骨と皮だけで、体重は12.2kg。捜索を進めると雄大のカバンから、乾燥大麻数gと液体の危険ドラッグが見つかったんです。雄大は薬物を常用し、結愛ちゃんに殴る蹴るの暴行を加えていたと思われます。逮捕前、雄大は友人たちに『妻やばあちゃん(優里の母親)が甘やかすから、しつけのために厳しくしている。食べ過ぎはよくない。モデル体型が理想』と話していたとか。親から毎日のように殴られ、結愛ちゃんはベランダに放置される日々です。彼女が書き残したノートには、『パパママおねがいゆるして』という悲痛なメッセージがつづられていました」(全国紙警視庁担当記者)。

 「17年頃に引っ越してこられた当初から、『お母さん、怖いよ!』と泣き叫ぶ女の子の声をたびたび聞きました。夜中に『てめぇ、うるさいんだよ!』と男性がわめき、『パン!』と人をひっぱたくような音を聞いたこともあります」。千葉県野田市に住む、40代の主婦が話す。 同市で凄惨な事件がおきたのは、19年1月のことだ。会社員の栗原勇一郎(当時41)が、小学校4年の長女・心愛(みあ)ちゃん(同10)を13時間以上に及び虐待。髪の毛を引っ張り、シャワーで冷水を浴びせるなどしたのだ。栗原の「娘の意識がない」という通報後、心愛ちゃんは自宅浴室で無残な姿で発見された。「心愛ちゃんの胸や腹には、複数のアザがありました。栗原は『早く宿題をやれ!』と怒鳴り、ゲンコツで背中や顔面をたびたび殴っていたとか。『しつけ』と称して食事を与えず、夜中にたたき起こしてスクワットをさせたこともあるそうです」(全国紙社会部記者)。心愛ちゃんが犠牲となったもう一つの要因が、見て見ぬふりをした母親のなぎさ(同31)の態度だ。自身もDVを受けていたため、「娘が叱られれば自分は暴力を受けない」と虐待を黙認。虐待容疑の共犯として逮捕された。「日常的にDVを受けていると思考停止状態になり、正しい判断ができなくなります。だからと言って、娘を守れなかった罪から逃れられるワケではない。虐待はいきなり始まるのではなく、声が大きくなるなど必ず前兆があります。初期の段階で、娘を父親から遠ざけ親族に預けていれば結果は違っていたはずです」(家庭問題に詳しい専門家)。

 2010年にもホスト遊びにうつつをぬかし、50日間に及び家を留守にし、大阪市内で幼児2人を餓死させた風俗嬢がいる。子どもたちは猛暑の中、ゴミだらけの部屋で水も与えられず寄り添うように亡くなっていた。母親は13年3月に懲役30年の刑が確定。

 児童虐待件数は増加の一方で、年間12万件を超えている ―― 『FRIDAY』(2020/07/29)。