断章319

 ヒトは、際限のない欲望に取り憑(つ)かれる動物である。食欲、性欲、権力欲、名誉欲、収集欲、知識欲、金銭欲、エトセトラ、エトセトラ。

 

 ヒトは、遺伝と文化の相互作用・共進によって進化(変化?)してきたという。では、その進化とは、どれほどのものなのか?

 「人間とはいったい、なんというキメラなのか。なんという新奇なもの、なんという怪物、なんという混沌、なんという矛盾、なんという驚異であることか。あらゆるものの審判者でありながら愚かなミミズでもあり、真理の保持者でありながら不確実と誤謬の巣窟でもあり、宇宙の栄光でありながら、その屑でもあるとは」(『パンセ』初版は1670年)と、パスカルは書いた。それからどう進化したのか?

 

 わたしは、凡人である。なので、この現代日本の下級国民であり下流老人として存在している。宿命からは逃れられず、運命は避けがたく、天命は悟り得ず、使命は果たし難く、〈善く生きる〉ことはむつかしい。人間は謎であり、人生は束の間で、智に働けば角が立ち情に棹させば流されることを痛感する日々である。それでも、なお、「生きていくんだ それでいいんだ♪」(玉置浩二)と思っている。なぜなら、人間世界の「変えることのできないものと変えるべきものとを識別する智慧」を探し求めているからである。

 

 日刊ゲンダイ・デジタル版の以下の記事を読んだ日に ―― 。

 「今月9日、和歌山カレー事件・林真須美死刑囚(59)の孫、鶴崎心桜さん(16)が外傷性ショックにより、自宅で変死し、娘の死を知った真須美死刑囚の長女(37)も心桜さんの12歳年下の妹(4)を道連れに無理心中を図り、自殺したことが分かった。

 1998年7月、和歌山市園部で起きた『和歌山毒物混入カレー事件』。自治会の夏祭りで、屋台のカレーを食べた67人が急性ヒ素中毒になり、4人が亡くなった。

 実行犯とされた真須美死刑囚は現在、再審請求中。保険金詐欺で逮捕された夫の林健治さん(76)は刑期を終えている。アエラドットが13日、健治さんの話として『つらい。娘と孫をいっぺんに失うなんて、言葉もない』と報じた。

 真須美死刑囚の孫の心桜さんが倒れているのが発見されたのは、9日午後2時20分ごろ。長女が消防に『自宅に帰ってきたら、子どもが意識と呼吸がない状態で倒れ、血みたいな黒いものを吐いている』と通報している。

 当時、家族が住む和歌山市の集合住宅には長女の夫と心桜さん、4歳の孫がいた。救急隊員が到着すると、長女は取り乱した様子で、救急車には夫だけが乗り込み、病院で心桜さんの死亡が確認された。

 約1時間40分後の午後4時ごろ、長女と4歳の孫が関西空港連絡橋から飛び降り、大阪府警海上に浮かんでいる2人の遺体を発見した。橋の上にはエンジンがかかったままの赤い乗用車が止められていた。

 長女の夫は病院に付き添った後、行方が分からなくなり、午後11時10分ごろ、和歌山港近くの路上に座り込んでいるのを通行人が見つけ、119番。夫は『精神的につらいことがあり、カフェインを服用して首をつろうとしたが失敗した』と漏らした。

 心桜さんの全身には複数のあざがあり、虐待を受けていた可能性があるという。

 長女一家が暮らしていた同じ集合住宅に住む大家がこう言う。『お母さん(長女)と赤ちゃんは知っているけど、亡くなった(16歳の)女の子のことは知りません。本当に高校に行ってたの? ずっと家にいたんじゃないの?』。

 事件直後からメディア関係者の間では、死亡した3人は真須美死刑囚の長女と孫ではないかという情報が駆け巡った。

 日刊ゲンダイは先週11日、関係者を通じて真須美死刑囚の長男に確認したが、長男は長女と10年以上会っておらず、『連絡先は知らない』と答えた。

『カレー事件後、真須美死刑囚の4人の子どもたちは和歌山県内の児童養護施設に預けられたが、イジメに遭い、脱走することもあったそうです。長女は当時、中学3年で高卒後、大阪で就職し、結婚。21歳の時、心桜さんを出産した。その後、離婚し、数年前に現在の夫と再婚した。4人きょうだいの中でも人一倍責任感が強かったそうです。きょうだいは施設から斡旋されて仕事に就けても、身元がバレるとクビになる。その繰り返しだったそうです』(知人)」。