断章304

 この世の真実は、平時ではなく有事の際に明らかになる。

 コロナ禍の始まりにおいて、マスクの生産が完全に中国頼みだったことが明らかになった。続いて、ワクチン製造において、欧米頼みであることが明らかになった。どこにも“備え”がなかったのである。

 

 各地で地震が頻発している。先週は、全国で最大震度4を観測した地震が5回、最大震度3を観測した地震が 21回発生した。期間中に発生した主な地震は、トカラ列島近海。和歌山県南部。長野県北部。さらに、この18日には、広島県北部で震度4。岩手県宮城県で最大震度4を観測した。

 コロナ禍に収束の兆しは、ない。18日午前、国内感染4802人、解除後で最多である。複合危機の足音が聞こえる。“備え”は十分だろうか?

 

 そして、また新たな危機が明らかになった。

 「防衛産業から撤退する大手企業が増えている。戦闘機選定が混迷した末に、F-35Aが選定されたことで、横浜ゴム住友電工が戦闘機生産から撤退、その後、戦闘機などの射出座席を生産していたダイセルは完全に防衛産業から撤退した。コマツは装甲車製造から撤退を決定。同社は砲弾も製造しているが、これも戦車や火砲の数が前防衛大綱から現防衛大綱になって半減することが決まっており、同社の撤退は時間の問題と見られている。

 そして最近、自衛隊に機関銃を供給している住友重機械工業(住友重機)が、現在の陸自次期機銃選定の途中で辞退、機関銃の生産をやめると見られている。〈中略〉

 複数の業界関係者の情報によれば住友重機の機銃生産撤退は決定事項だという。事実、防衛省の機銃調達も大きく減っている。この背景にはいくつかの理由がある。まず防衛省しか顧客がいないのに、小規模な小火器メーカーが乱立し、それぞれを維持するために発注が少単位、高価になってきたことがある。高価だから調達数が減るという悪循環に陥ってきた。〈中略〉

 防衛予算が大きく伸びることがなく、装備の高度化によって維持整備費用が装備の調達費を上回っている。しかも少子高齢化で将来の自衛隊の縮小は明らかだ。厳しい国際市場で戦うことなく、国内の自衛隊、海保、警察などが顧客である国内火器メーカーは価格が海外の製品の5~10倍であり、性能的にも劣ることが多い。〈中略〉

 今後も外国よりも高いコストで、低性能、低品質の装備を作り続けた揚げ句に、防衛産業から手を引く企業は増えていくだろう」(2021/04/15 東洋経済・清谷 信一)。

 つまり、マスクやワクチンと同じようなことが、日本の防衛産業、防衛技術に起きているのだ。

 

 なぜ、こんなことになったのか? それは、戦後左翼のファンタジーな「非武装中立」論 ―― モナコリヒテンシュタインのような極小国でしかありえないこと ―― が蔓延した戦後平和主義の「空気」のなかで、日本国政府が《国防》《国益》のプリンシプルに反する「武器輸出3原則」という誤った“原則”を採用してきたからである。そのために日本の防衛産業は市場を拡大できず、市場競争にさらされないので技術的にも低下して、この事態に至ったのである。

 

 ところが、ことここに至っても、世界の現実から目をそむける「学者」バカ、例えば、池内 了は、「軍事研究との訣別を誓ったはずの日本で、軍学共同が急速に進んでいる。悲惨な結果をもたらした歴史への反省を忘れ、科学者はいったい何を考えているのか。『科学は両義的』『戦争は発明の母』『国への協力は世界標準』などの「論理」を批判する。科学者は戦争への応用に毅然として反対し、真の社会的責任を果たすべきである」(『科学者と戦争』岩波新書)と言っている。彼らは、平和を守るためにも、自国の防衛産業・防衛技術を守り育てることが大事であることを無視する。

 スウェーデンを見てみたまえ。戦闘機・戦車を自主開発して輸出努力をし、カールグスタフ無反動砲などを売りまくった。スイスは、エリコン社の開発した航空機関砲を売りまくり、一部は現代でもなお使用が継続されているベストセラー兵器である。隣国の韓国は防衛産業・防衛技術を育て、武器輸出に力を入れている。

 誇りのない国は滅びる。防衛産業・防衛技術を育てない国は、圧迫され後退する。