断章302

 「住宅ローンの返済に窮する人が増えている。金融機関から返済猶予などの救済を受けた人は5万人を超え、東日本大震災の際の5倍に達した。新型コロナウイルスの影響で収入減が広がっているためだ。一方、新規ローンの融資額は伸び続け、一部の住宅価格はバブル期以来の水準に。返済困窮者の増加と新規ローンの膨張が同時に進む構図に陥っている」(2021/04/08 日本経済新聞)。

 

 日本の自称「知識人」リベラルが、ほめたたえ盛り立てた民主党政権時に実施されたのが「事業仕分け」である。それは、仙谷 由人行政刷新担当相によって、毎日新聞のシンポジウム「政治は変わったか~民主政権の課題と自民再生への展望」において、「予算編成プロセスのかなりの部分が見えることで、政治の文化大革命(引用者注:文化大革命をプラスイメージで語る愚か者)が始まった」と自画自賛された。そして、この「事業仕分け」が、日本の“感染症研究潰し”に一役買い、コロナ禍対策に立ち遅れた原因のひとつなのである。これらの自称「知識人」リベラルは、この民主党政権時における自らの所業に口をつぐんでいる厚顔無恥な連中である。

 

 そして、自民党政権も褒められたものではない。というのは、その後の経過に明らかである。

新型コロナウイルス対策で、政府が初めて緊急事態宣言を出してから1年が過ぎた。収束のめどが立たないばかりか、大阪で感染者が急増するなど、『第4波』への懸念が高まっている。

 対策の切り札とされるワクチンは、来週から高齢者への接種が始まるが、国民全体へ行き渡る見通しは示されていない。供給を輸入に頼っているためだ。

 世界では、ワクチン製造企業を擁する国で接種率が高い傾向がみられる。日本の接種率は1%に満たない。国内企業も開発に取り組んでいるが周回遅れだ。

 ワクチンは、パンデミック(世界的大流行)対策に欠かせない。だが、各国による争奪戦が激しさを増す中、海外頼みではおぼつかない。

 政府は、国内でのワクチンの開発を支えるために中長期的な戦略を立てる必要がある。

 2009年に流行した新型インフルエンザの際も、国産ワクチンの開発や供給が遅れた。政府の有識者会議は翌年、『可及的速やかに国民全員分を確保するため、製造業者を支援し、生産体制を強化すべきだ』と求める報告書をまとめた。しかし、その後もメーカー任せの状況は変わることはなく、具体的な国家戦略が示されることはなかった。

 一方、海外では官民協調の研究開発が進んだ。その蓄積が新型コロナワクチンに生かされ、迅速な実用化につながった」(2021/04/08 毎日新聞)。

 

 なぜ、日本にはプリンシプルがなく戦略がないのか? 

 それは、戦後日本のエスタブリッシュメントが、「政治的イデオロギーに代わるものとして、繁栄の旗のもとに経済的な階層を結集するというマーク・ハナ流の『利害による政治勢力の結集』に基盤を置いて」(P・ドラッカー)、経済的な利益最優先だけだったからである。

 「1950年以降、日本の政治を担ってきた自民党にも、際立って日本的な特徴がいくつかある。しかしそれは、1930年代のルーズヴェルト民主党1920年代のクーリッジの共和党に極似している。同じような派閥を持ち、同じような地方ボスがいる。利害集団間の離合があり、取引があり、腐敗がある」(P・ドラッカー)。

 なので、日本のエスタブリッシュメントには、「誇り」、プリンシプル、戦略が無いのである。