断章247

 15兆円以上を運用している世界最大の債券マネジャーであり世界最大のヘッジファンド創立者であるレイ・ダリオは、「わたしたちは、1930年代的危機に際会している」と言ったが、いわゆるパンデミック・バブルを除けば、その他の情勢に大きな変化はみられない。

 しかし、日本をめぐる情勢の基調は悪化しているといってよい。

 例えば、「中国海軍は21日、同国の最新空母『山東』を核とする艦隊が20日に、南シナ海での定期訓練に向かう途中に台湾海峡を通過したと発表した。台湾は通過を監視するために軍部隊を動員した。台湾の国防部(国防省)によると、山東は4隻の護衛艦を伴い、17日に北部大連市の港を出港した。台湾は監視のために艦艇6隻と戦闘機8機を配備したという。『山東』は中国で2隻目となる空母で、1年前に就役した」(2020/12/21 ロイター)。

 あるいは、「ロシアの東部軍管区は12月1日、長距離対空ミサイルシステム『S300V4』を千島列島と北方領土に実戦配備したと発表した。具体的な配備場所は明らかにしていないが、第18機関銃・砲兵師団が展開する択捉(えとろふ)島か国後(くなしり)島の可能性が高い。ロシアは2016年、地対艦ミサイル『バスチオン』を択捉島に、同『バル』を国後島に配備し、対艦戦力を向上させた。2018年から新鋭戦闘機『スホイ35』を択捉島に常駐させているのに続き、『S300V4』の配備で対空能力の向上に動いている」(産経新聞

 そして、韓国は、終わりのない「反日」である。

 「すでに韓国で差押え中の日本企業資産は、約5億7400万円。そして、3件だけではない。『元徴用工裁判』は、韓国最高裁で9件、地裁で20数件が係争中であり、原告人は約1,000である。〈中略〉

 徴用工への『賠償』は1965年の日韓協定で解決済との立場に立つ日本企業は、韓国の最高裁判決は『日韓条約にも、国際法にも反する』として支払いを拒否。このため韓国の裁判所は日本企業の韓国内資産を差し押さえ、現在現金化への法的手続きを取っている。

 外務省の滝崎アジア大洋州局長がソウルに乗り込み、会談パートナーの金丁漢アジア太平洋局長に絶対に現金化しないように強く迫ったようだが、金局長は『大法院の判決を尊重せざるを得ない』との立場を崩さなかったようだ。〈中略〉

 現在、韓国の裁判所から支払いを命じられている日本企業は日本製鉄、三菱重工、富山の機械メーカー不二越の3件である。日本製鉄は元徴用工4人から、三菱重工は元徴用工6人から、そして不二越も元徴用工及び遺族ら23人から訴えられ、一人当たり1億ウォン前後の支払いを命じられている。〈中略〉

 仮に全ての裁判で全面勝訴し、日本企業から補償を手にすることができれば、元徴用工予備軍及びその被害者らの訴訟は後を絶たないだろう」(2020/10/30 辺 真一)と予想されている。

 

 コロナ・ワクチンは大々的な接種準備に入りつつあるが、一方、イギリスでより感染力が高い「制御不能」な新型コロナウイルスの変異種によるものとみられる感染が拡大している。それを受け、欧州各国がイギリスからの渡航を禁止し始めている。もしも、この流れを断ち切ることができなければ、コロナ禍の初期に危惧されたこと ―― 貿易の大々的な“途絶”もあり得るのではないだろうか。

 それは、「エネルギー安全保障や食糧安全保障などのリスクも増大しているということです。第二次大戦後の日本は、エネルギー供給や食糧供給の大半を海外に依存しながら、経済的な繁栄を享受してきましたが、〈中略〉日本の食糧自給率はきわめて低く、穀物の大半をアメリカからの輸入に頼っているのが現実です。現在までのところ、深刻な事態には至っていませんが、もし、物理的な供給が制限されるようなことになれば、食糧危機に陥ることになります。

 しかも、気候変動、水不足、人口増により、世界的な食糧不足が危険視される状況にあります。実際、アース・ポリシー研究所所長のレスター・ブラウンも『食糧を巡る新たな地政学』という論文で、食糧を巡る世界的な争奪戦が激化すると警鐘を鳴らしています。そして、食糧供給を巡る競争の激化で、第二次世界大戦後の国際協調の時代から、食糧ナショナリズムの時代へと移行したと述べているのです。現在のコロナ禍によって、世界中の国々が『自国中心主義』にならざるを得ない状況に陥っています。国連やWTOが、コロナ危機により食料の供給が寸断されるリスク」(中野 剛志)なのである。

 そして、お決まりの地震である。「21日午前2時23分ごろ、青森県東方沖でマグニチュード6.5の地震があり、岩手県内陸北部で震度5弱の揺れを観測しました。この地震津波はありませんでした」。南海トラフ巨大地震にも備えなければならない。

 

 1930年代。世界の、政治の、経済の、社会の混乱・疲弊・混沌・危機から成長したのは、ファシズムという黒い怪物であり、マルクス・レーニン主義という赤い怪物だった。色は違えど、ともに「全体主義」の怪物だったのである。