断章147

 「株式市場で巨大IT(情報技術)に資金が集中している。米マイクロソフトや米アップルなどアメリカ株式市場での時価総額上位5社の時価合計が、日本の東証1部上場企業・約2,170社の合計を上回った。テレワークやインターネット通販など新型コロナウイルスで変容した生活様式でも勝ち組で、自動車などの次世代技術での投資余力も大きいことから評価を集める」(2020/05/09 日本経済新聞)。

 

 「そりゃそうだ」(バカ殿)

 SNSフェイスブックFacebook)、通販のアマゾン・ドット・コムAmazon.com)、動画配信のネットフリックス(Netflix)、検索エンジンのグーグル(Google)、そしてWindowsマイクロソフトなど、これらアメリカの情報技術やビッグデータ、ネットサービスの覇権を握っている巨大IT企業は、既に世界中の人々の日常生活で、不可欠なインフラのようになっており、さらにこれからも生活や産業構造を大きく変える可能性がある。ところが、こうした新しいイノベーションを次々と起こして産業構造・日常生活を変えるような企業が、今の日本にあるだろうか?

 

 「私の仕事は、すでに大幅にGoogleに依存してしまっています。検索やGmailが使えなくなれば、私の仕事は直ちに立ち往生してしまうでしょう。最も重要な知的作業の基本的インフラにおいて、日本はすでにGoogleやアップルに大きく依存してしまっているのです。

 この先、人工知能の問題として現実にあり得る問題は、第1は、大企業が人工知能を活用し、それを販売戦略に生かすことによって、市場をコントロールしてしまうことです。このため、人工知能を使える大企業と、そうでない中小企業の間に格差が生じてしまう危険があります。第2は、我々の生活が、人工知能を駆使する1部の企業に依存せざるをえなくなることです」(野口悠紀雄)。

 

 しかし、日本企業にもまだ希望が残っているかもしれない。

 というのは、「GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)も、元々は、その業界における最初のイノベータ―ではなかった。・・・グーグルの前に初期の検索エンジンがあり、アップルは最初にPCを開発した企業ではない。アマゾンの前にも、オンライン書店は存在していた。

 ある書籍にはこう書かれています。『ある業界のパイオニアが、うしろから撃たれることはよくある。四騎士たち(GAFA)もまた後発組だ。・・・彼らは先行者の死骸をあさって情報を集め、間違いから学び、資産を買い上げ、顧客を奪って成長した』。

 グーグルは、アルゴリズムの優秀さと『情報の信頼性』を軸にした最初の検索エンジンであり、アップルは『より簡単にPCを使えるインターフェイスを備えたPC』を発売した最初の企業だったのです。

 この点から現在導入が始まっているテレワークを考えると、単にコロナウィルス対策でテレワークを始めた企業は、やがてその習慣を捨てていく一方で、『テレワークのほうが成功できる事業や方法』を発見した企業は、そのノウハウを他社に売るようなビジネスで、新しくできた業界の支配者になる可能性を秘めています。

 一方で『やはりテレワークでは実現できない要素』を発見した企業も、テレワークを一斉に導入した他社に、『テレワークを補完する重要な要素』を広く販売できるようになるでしょう。

 GAFAの成功から学ぶ戦略とは、『新しくできた業界に参入する』のではなく、『新しくできた業界の支配者になるためのカギ』を発見することです。このカギを発見できた瞬間こそが、・・・参入のベストのタイミングだと言えるのです」(2020/05/04 東洋経済・鈴木 博毅を抜粋・再構成)。