断章141

 『塀の中の懲(こ)りない面々』は、作家・安部譲二の自伝的小説でデビュー作である。塀の中の懲(こ)りない面々とは、自由が制限される刑務所服役経験があるにもかかわらず入出所を繰り返す累犯罪者達のことを指している。

 中南海塀の中にも懲りない面々がいる。―― 中南海は、北京市の中心部西城区、かつての紫禁城の西側に隣接する地区を指す。中国共産党の本部や要人・秘書の居住区などがある。この中南海という用語は、単なる場所を示すのみならず、権力の象徴としての政治用語でもあり、「中南海入りする」というのは、「党の指導部入りする」ことを意味する。(Wiki

 

 「米ジョンズ・ホプキンズ大学の集計によると、新型コロナウイルス感染症による死者が17日、世界全体で15万人を超えた。16日に14万人を上回ったばかりで、被害拡大の勢いは衰えていない。感染者は17日に世界全体で220万人を超え、増え続けている」(2020/04/18 KYODO)。

 ところが、中国は、コロナ禍の真っ最中にも、まるで火事場泥棒のような動きをみせている。

 

 例えば、「香港の警察当局は4月18日、著名な民主活動家の一斉摘発に乗り出し、昨年の大規模な抗議デモに関連した容疑で活動家ら15人を逮捕した。

 地元メディアの報道によると、香港メディア界の大物で反体制紙『蘋果日報』の創業者、黎智英氏(72)も逮捕者の中に含まれる。黎氏は自宅で逮捕されたという。他にも現職の立法会(議会)議員である梁耀忠氏や、元議員の李柱銘氏や何俊仁氏、梁國雄氏、區諾軒氏らが逮捕された。(中略)

 香港では2019年、中国本土の不明瞭な司法制度に容疑者の身柄引き渡すことを可能にする『逃亡犯条例』の改正案をきっかけとして大規模な抗議デモが繰り広げられ、時には暴力沙汰に発展。逃亡犯条例の改正案は撤回された。

 民主派議員の毛孟静氏は18日、香港政府が『恐怖政治を取り入れることに注力している』と指摘。『彼らは、黙らせるため、住民の反対を取り払うため、できることなら何でもやっている。だがその時われわれは、団結し立ち上がる』と述べた」(2020/04/18 AFP)。

 

 あるいは、「中国の著名な人権派弁護士、王全璋氏(注:政治活動家らや土地収奪の被害者らの弁護を担当していたことで知られる)が約5年の刑期を終えて出所した。

 ・・・王氏が拘束されたのは、習近平国家主席が権力基盤を固める中、弁護士や政府への批判者200人超に対して一斉取り締まりが行われた2015年だった。

 妻の李さんによると、王氏はまだ首都北京の家族の元へ帰っておらず、新型コロナウイルスの予防措置として14日間隔離するため、同国東部山東省にある同氏の所有物件へ連れていかれたという。

 北京で息子と共に暮らす李さんはAFPに対し、王氏は出所したにもかかわらず自宅軟禁となり、監視下に置かれることを恐れていると語った。

 李さんは『(当局は)一つ一つ私たちにうそを積み重ねていると思う』と述べ、『関連する法的指針に従って夫は北京の自宅に戻ることができたはずだったが、(当局は)14日間隔離するという理由で、感染拡大を口実に使った』と続けた。

 AFPは5日、刑務所へ電話をかけたが応答はなく、山東省の司法当局にも問い合わせたが反応はなかった」(2020/04/05 AFP)。

 

 そして、「ベトナム政府は3日、中国などと領有権を争う南シナ海のパラセル(西沙)諸島海域で2日、中国海警局の公船の体当たりを受けたベトナム漁船が沈没したと発表した。乗組員8人は無事だった。

 越主要紙タインニエンは、海に投げ出された乗組員の救助に向かった漁船の僚船2隻も中国側に一時拿捕(だほ)されたと報じた。ベトナム政府は『中国は主権を侵害した』との声明を発表し、再発防止や漁船の補償を求めた」(2020/04/06 読売新聞)。

 

 あるいは、「河野防衛相は4月13日、東京都内で講演し、新型コロナウイルスの感染が拡大する中で軍事的挑発行為を続けている中国について『極めてけしからんと思っている』と強く批判した。『感染拡大の中でも中国が南西諸島に軍事的な圧力をかけ続けていることを、国民にはしっかり認識していただきたい』と述べた。

 今年1~3月、航空自衛隊機は領空侵犯の恐れがある中国機に対して152回の緊急発進(スクランブル)を実施。尖閣諸島沖縄県石垣市)周辺の接続水域では中国公船がほぼ毎日航行している。河野氏は講演でこうした現状を紹介し、国内外への情報発信に力を入れる考えを示した」(産経新聞)。