断章91

 「英BBCによると、英中部バーミンガムの裁判所は29日、昨年の英保守党党大会で党員を平手打ちにして暴行罪に問われた中国中央テレビのロンドン駐在女性記者(49)に有罪判決を出し、慰謝料などの支払いを命じた。

 党大会では『香港の自由』について討論が行われていた。記者はその会場で発言者を批判し、退場を求めた党員を平手打ちにした。

 在英中国大使館は『報道と言論の自由にもとる』と判決に反発している」(2019/11/30 読売新聞オンライン)。

 どあつかましい! どの口が言うか!

 「近年の中国では、反スパイ法(2014年)、新国家安全法(2015年)、反テロ法(2016年)、外国NGO管理法(2017年)と相次いで監視のための法律が施行されており(引用者注:密告も奨励されている)、警察が強力な権限を持つようになった。警官がインターネットに接続した『顔認識メガネ』を使って、視界に入った人々の顔を秒単位でスキャンし、データベースに登録されている容疑者を照会し瞬時に特定することが可能になるといった監視や統制の技術の開発や利用も進んでいる。(中略)

 公安の情報化を目指す『金盾』もこの一環で、『金盾』には主に3つの機能があると推測される。1つは外から来るものをブロックし、西側の情報は入らないようにすること。これは『サイバー万里の長城(Great Fire Wall)』と呼ばれている。2つ目はメールの検閲。3つ目は世論操作だ。これは、政府にとって都合の悪い情報をネット上から消すだけではなく、都合の良い情報をネット上に拡散することも行われているようだ。警察署で行われる『インターネットの正しい使い方講習会』で、政府を褒めるとお金が貰えるという中国国内の一般報道もあった。

   国際NGO団体の『Freedom House』では、中国はインターネットの自由度が非常に低い国だと報告している」(伊東 寛)。

 スウェーデンでも。

 「中国共産党政権を批判する『禁書』を扱っていた香港の書店関係者、桂民海氏に国際ペンクラブスウェーデン支部が賞の授与を決め、スウェーデンのリンド文化・民主主義相が15日、式典に出席した。

 駐スウェーデン中国大使は、大使館公式サイトに『必ず報復する』と警告を掲載した。

 スウェーデン国籍を持つ桂氏は今も中国のどこかで拘束中とみられる。受賞が決まった『クルト・トゥホルスキー賞』は、迫害を受けた作家や編集者に贈られる。

 中国はスウェーデン通信(TT)に対し、式典出席者は中国では歓迎されなくなると警告していた。これに対し、テレビ出演したロベーン首相は『この類の脅しには絶対に屈しない。スウェーデンには自由があり、これがそうだ』と強く反発。リンド文化相も『ペンクラブが誰に賞を授与しようと自由だ。桂氏を今すぐ解放すべきだ』と要求した」(2019/11/16・ストックホルムAFP)。

 

【補】

 AIを活用する“独裁者”はいっそう強くなる。

 「中国のAI技術革新には目ざましいものがあります。現在のAI化の核心は深層学習、ビッグデータ、高速演算能力ですが、中国はその技術を国内の治安対策に導入し、大きな成果をあげています。画像認識処理能力の向上によって、潜在的反政府勢力の弾圧が容易になったのです。

 中国国内の社会管理や言論統制など、独裁体制を維持するための活動に応用されるうえ、個人のプライバシー保護など眼中にありませんからね。勝手に10億人以上ものビッグデータを活用できる中国共産党の独裁体制は、いっそう強化されるでしょう」(宮家 邦彦)。