断章67

 世界から「硝煙の臭い」が絶えたことはない。

 「米国とソ連は冷戦期を通じて直接戦火を交えることを互いに思い止まる一方、その敵意は同盟国、属国、代理国家による戦争にはけ口を求めた。それゆえ前例のない大国間の平和の裏で、小国間の絶え間ない熾烈な戦争があり、1948~91年の冷戦期の間に144回もあった」(『戦略論』)のだ。

 北海道のすぐ隣にいる熊さんは、強気である。

 「ロシアは、これまで『強い国家』や『影響力ある大国』を掲げ、同国の復活を追求してきたプーチン大統領が2018(平成30)年3月に再選され、軍の即応態勢の強化や新型装備の開発・導入を推進すると同時に、核戦力を引き続き重視していくものと考えられる。

 歳出の削減が幅広く行われる中においても国防費の確保に努め、軍の近代化を継続しているほか、最近では、アジア太平洋地域のみならず、北極圏、欧州、米国周辺、中東などにおいても軍の活動を活発化させ、その活動領域を拡大する傾向がみられる。 具体的には、欧米などから、ロシアは、自らの勢力圏とみなすウクライナにおいていわゆる『ハイブリッド戦2』を展開して、力を背景とした現状変更を行ったとみられており、欧州諸国が強く懸念するのみならず、アジアを含めた国際社会全体に影響を及ぼし得るグローバルな問題と認識されている。また、ロシアは、シリアのアサド政権を擁護するかたちでシリア内戦への介入を行うなど、国際的影響力拡大を企図した動きをみせている。

 極東においては、新型のフリゲート(ステレグシチー級)や戦闘機(Su-35・Su-34)などの配備が進められ、18(平成 30)年は大規模演習『ヴォストーク2018』も実施予定。

 また、北方領土択捉島国後島)への地対艦ミサイル配備を公表したほか、択捉島の民間空港の軍民共用化や同島への戦闘機の展開を行うなどその活動を活発化。ロシアはわが国周辺を含め軍事活動を活発化させる傾向がみられ、その動向を注視していく必要がある。」(2018/9 防衛白書平成30年版ロシア項目から要約)

 

 「ロシアが米国に対抗する核戦力の拠点とするオホーツク海への敵艦隊侵入を阻むため、北方領土と千島列島で進める2019年の軍備計画の概要が2日、判明した。千島列島で二つの島への新型地対艦ミサイル『バスチオン』(射程300キロ以上)配備を明記しており、極東カムチャツカ半島から北海道に至る『防衛線』を射程に収める計画が近く完成する」(2019/9/2 共同通信)。

 「ロシアのプーチン政権が極東地域への中距離ミサイル配備に乗り出す構えをみせている。米ロの中距離核戦力(INF)廃棄条約の失効を受け、米国が中距離ミサイルのアジア配備に言及したことへの対抗や、日本が米国から導入する地上配備型迎撃システム『イージス・アショア』への警戒が背景にある。中距離ミサイル戦力で優位に立つ中国を巻き込んだ駆け引きが活発化しそうだ。

 プーチン大統領は8月5日の声明で、米国が新たな中距離ミサイルを開発した場合は『ロシアも同様のミサイルの本格的な開発に着手せざるを得ない』と警告した。これに先立ち、リャプコフ外務次官は米国がアジアに中距離ミサイルを配備すれば『脅威に対抗するための措置をとる』と説明した。

 リャプコフ氏は日本のイージス・アショアについて攻撃に転用可能と主張した。中距離ミサイルの配備場所については明言を避けたが、米国の同盟国で多数の米軍基地が立地する日本や韓国を射程に置く極東地域が有力視される」(2019/8/6 日本経済新聞)。

 

 (平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した)「日本国民の多くが善意を持って世界を眺めているつもりでも、世界の現実を理解しようとする努力を怠れば、そのいうところは机上の空論にすぎなくなる。そのために、日本の周辺地域の安定や、日本国民自身の安全をも、きわめて危いものにしている事実を認識すべきである」(崔 基鎬)。