断章61

 1991年のソ連の崩壊まで、日本のいわゆるインテリは、日本が社会主義になる未来を夢見ていた。

 社会主義の未来とは、共産党(オマケで社会党)が権力を握り、そのなかで、自分たちインテリが共産党に協力する存在として特権階級になる社会である。政治的にも経済的にも特権を享受する立場になることを夢見て、彼らは一所懸命働いてきた。その夢は虚しくついえた。

 だが、「いまだに精神構造のあらゆるレベルにマルクス主義から出る気分が浸透している人たちは、“日本国家をなんとかして恥ずかしめ、弱体化させたい、日本人に誇りを失わせたい”という気持ちに駆られて」(岡田 英弘)行動している(知的で道徳的な良い人と思われたい“朝日的文化人”は、彼らのお友達である)。

 だから、彼らは、“日本国家をなんとかして恥ずかしめ、弱体化させたい、日本人に誇りを失わせたい”という同じ精神構造をもつ韓国にすり寄っていくのだ。

 

 韓国の文在寅政権は、韓国初代大統領・李承晩(イ・スンマン)時代の12年間を「親日独裁」だとして歴史から消した。朴正煕(パク・チョンヒ)時代の17年間は「軍事独裁」だとして追放した。さらに全斗煥(チョン・ドゥファン)・盧泰愚(ノ・テウ)時代の12年間は「監獄に行った大統領の時代」、李明博(イ・ミョンバク)・朴槿恵(パク・クンへ)時代の9年間は「監獄にいる大統領の時代」として否定している。

 金大中(キム・デジュン)、盧武鉉ノ・ムヒョン)時代の10年間も、日本に気を遣っていたので完全ではない。ただ唯一、ロウソク革命から生まれた今の文在寅政権だけが完璧だと自画自賛している。これが、大韓民国の歴史らしい(笑い)。

 

 文在寅政権とその取り巻きは、韓国初代大統領・李承晩をひどく嫌っている。

 例えば、「国営テレビのKBSは『故・李承晩と故・金日成は、米国とソ連韓半島朝鮮半島)を分割統治するために連れてきたカイライ(操り人形)だ』として、『故・李承晩元大統領を国立墓地から掘り出してしまうべきだ』との内容を放送した」し、「文大統領直属の『三・一独立運動および大韓民国臨時政府樹立100周年記念事業推進委員会』は、政府の庁舍がある世宗路交差点のビルに10人の独立運動家の大型肖像画を掲げた。そして、上海臨時政府の初代大統領であるとともに大韓民国の初代大統領である故・李承晩(イ・スンマン)大統領の肖像画だけをこっそりと外した」(韓国紙)のである。

 大事なことだから、もう一度書いておくね。

 故・李承晩(イ・スンマン)は、大韓民国上海臨時政府の初代大統領であるとともに大韓民国の初代大統領。

 文在寅政権は、李承晩を弊履(ヘイリ)のごとく投げ捨てたが、その李承晩の事績である「大韓民国上海臨時政府」と「竹島強奪」は、神棚に大切に祀っている。

 

【参考】

 歴史の改竄(カイザン)は進行中である。『週刊FLASH 2019年9月3日号』によれば、「今年、小学校の社会の教科書から『漢江の奇跡』という文言が消えました。1960年代から1980年代の、韓国の経済成長を表わすフレーズですが、この時代を否定すれば、韓国の経済発展への歩みが理解できなくなりかねないのですが・・・」(木村 幹)。「漢江の奇跡」は長年、韓国人の誇りだった。朴正煕政権で成立した「日韓請求権協定」よって日本から得た5億ドルの経済支援で、韓国経済は奇跡的な高度成長を成し遂げ、今日の繁栄の礎になった。

 だが、文在寅大統領や周囲の人間は、この時代を評価したくない。日本の支援もあって経済成長した朴正煕政権を、最新の歴史教科書では「維新独裁」と否定的に決めつけ、日本統治時代をモデルにしたともいわれる農村振興運動「セマウル運動」も、記述が削除された。

 また、文政権の教科書改訂は、初代大統領の李承晩にも及ぶ。1948年8月15日の「大韓民国樹立」を「大韓民国政府樹立」に変更したのは、この日に政府ができただけ、と初代大統領・李承晩の業績を矮小化するためだという。

 さらに、「朝鮮半島における唯一の合法政府」という記述も削除。これは文大統領が1919年に上海に設立された「大韓民国臨時政府」を評価するからだ。

 一方、日本については、「小学校の教科書には適切でない」として記されてこなかった「日本軍の慰安婦」という名称が記され、“反日色” が濃くなった。

 その反面、北朝鮮には融和的だ。朝鮮戦争は、「北朝鮮の南侵から始まった」とする記述は、2018年から削除された。

 極めつきは、2019年6月、「顕忠日(戦没者追悼のための国家記念日)」での文大統領の演説だ。1919年に設立された、臨時政府の「光復軍」で副司令官を務めた金元鳳を「韓国軍のルーツ」と称えたのである。

 「金元鳳は戦後、北朝鮮に渡って政府要人になった、韓国にとっては “裏切り者” とも言える存在。彼が韓国軍のルーツという発言は、中国の国家主席が、『人民解放軍を作ったのは蒋介石』と発言するのと同じぐらいあり得ないことです」(木村 幹)。

 これも朴正煕ら、旧日本軍や旧満州国軍出身者が多かった韓国軍の本来の創設者たちを、「親日残滓」として否定したいからだ。

 「国内の保守派こそ、文政権がもっとも意識する敵。彼らの否定こそ、文政権が重視する歴史観です。韓国を発展させた保守派を無理に否定し、文政権の歴史観を上書きしようとするので、どこまでいってもフィクションめいてしまうのです」(同前)。

 

【参考】

 「日本の輸出管理強化により“ホワイト国除外”とされた韓国では、いま、“独島(竹島の韓国名)”が熱い。日韓の間で2016年に結ばれたGSOMIA(軍事情報包括保護協定)の破棄まで取り沙汰されているが、そんななか、領土問題は国民を煽る格好の材料となるようだ。

 “独島領有”を今まで以上に声高に主張することで、日本を打ち負かそうという意識が社会を席巻しつつある。

 韓国国防部は、独島の警備をこれまでの警察から海兵隊に移管するよう検討に入った。さらに光復節のある8月中に『独島防御訓練』を行うと発表した。この訓練は毎年二回行われるが、今年は8月に行うことによって、日本に『強力なメッセージを送ることができる』と韓国政府は考えているという。

 自治体レベルでも動きは活発だ。ソウル近郊の京畿道議会は“ホワイト国除外”が発表された2日、独島訪問団を現地に送り込んだ。団長のアン・ヘヨン議員は、ホワイト国除外に対し、『京畿道民をはじめとする韓国国民は怒っている。戦犯国家である日本は独島が大韓民国の領土であるという歴史的事実を否定・歪曲するのをやめ、心を込めて謝罪をしなければならない』と述べた」(2019/8/8 藤原 修平)。