断章39

 中国についての長いメモ

 

 「中国の新疆ウイグル自治区は、・・・何百万人ものイスラム教徒のウイグル民族にとって故郷だ。人権団体は、何十万人もが裁判を経ずに複数の収容所に拘束されていると指摘する。一方で中国政府は、入所者たちは“自発的”に『過激思想』の撲滅を目指す施設に入っていると説明する。

 これまでは、走る車の中から、鉄条網と監視塔をちらちらと目にするのがやっとだった。私たちの車の後を私服警官たちがぴったりとつけてきて、それ以上近づかないように目を光らせていた。それが今回、(ウイグルの)収容所の中に招待されたのだ。

 招きに応じて取材することには、もちろんリスクがつきまとう。私たちは、念入りに外見を整えたと思われる場所に、連れて行かれようとしていた。(以前)そこにあった警備設備の多くが最近撤去されたことを、衛星写真は示していた。

 私たちが収容所内で話を聞くと、入所者はそれぞれに(何人かは見るからに緊張した様子で)、同じような話をした。

 入所者たちは全員、新疆ウイグル自治区で最大の、イスラム教徒主体のウイグル民族だ。自分たちのことを、『過激思想にかぶれていた』と言い、自発的に『考えを改めよう』としていると話した。

 これは、中国政府が選び抜いた入所者たちに語らせたストーリーだ。

 私たちが質問を投げかければ、入所者たちを大きな危険にさらしかねない。入所者がうっかり何か、口を滑らせたらどうなるのだろうか? 

 私たちはどうすれば、プロパガンダ(政治的な宣伝)と現実を間違わずに区別できるのだろうか? (中略)

 1930年代と40年代には、ナチス・ドイツ政府がゾネンブルクとテレージエンシュタットの収容所で、メディアの取材ツアーを開催した。収容所がいかに“人道的”かを示すのが目的だった。

 こうした取材機会では常に、記者は世界的に極めて重要な出来事の目撃者になる。だが、現地で最も影響を受けている人々に対して、ごく限定的な、または高度に統制された取材しかできず、それをもとに報じざるを得ない。(中略)

 ところが、新疆ウイグル自治区では大きな違いが一つある。当局は、収容所内の環境が良好なことを示すだけでなく、入所者たちが囚人などではまったくないことを明らかにするため、取材を許可したのだ。

 私たちは、照明の明るい教室へと案内された。ずらりと並んだ学習机に向かって大人たちが座り、声をそろえて中国語を学んでいるところだった。

 伝統的な民族衣装を着て、見事に演出された音楽や踊りを披露してくれた人たちもいた。机の周りを回る間、その顔には笑顔が張り付いていた。

 私たちに付き添った中国政府の職員たちが、目の前のストーリーを心から信じ切っていたのは明確だった。何人かは入所者たちを見て感動し、いまにも泣きそうだった。

 入所者たちは生まれ変わったのだと、私たちはそれを認めるよう求められた。かつて危険なほど過激化し、中国政府への憎しみに満ちていた人々が、その同じ政府からタイミングよく“慈悲深い干渉”を受け、いまや安全に自己改革への道に戻ったのだと。

 西側諸国はここから多くを学べるというのが、私たちへのメッセージだった。

 再教育の方針が開始された日づけについて話しながら、政府高官の1人が私の目をじっと見つめた。『この2年8カ月、新疆(ウイグル自治区)ではテロ攻撃が1件も起きていない』と彼は言った。『これは私たちにとっての愛国的な責務だ。』(中略)

 私たちは取材の招待に応じた。それだけに我々の仕事は、公式メッセージの裏側を凝視し、それをできる限り調べることだった。

 撮影した映像には、ウイグル語で書かれた落書きがいくつか映っていた。私たちはあとでそれを翻訳した。『ああ、我が心よ折れるな』と書かれているものがあった。(中略)

 政府職員には長時間をかけて取材した。その中には、この制度の本質をかなり示す答えがあった。

 収容所にいるのは“犯罪者”だと職員たちは言い、入所者たちが脅威なのは、犯罪を犯したからではなく、“犯罪者になる潜在的な可能性”があるからだと説明した。

 また、ひとたび過激思想の傾向があると判定された人たちには、選択権(とは言えないようなものだが)を与えられるのだと認めた。

 選択肢とは、『司法の審問を受けるか、非過激化施設で教育を受けるか』だ。

 『ほとんどの人が学習を選ぶ』という説明だった。公正な裁判を受けられる可能性がどれほどかを思えば、不思議ではない。

 別の情報源によると、過激思想の定義は昨今、きわめて広義なものに拡大されている。例えば、長いあごひげを生やしたり、単に海外の親族に連絡を取ったりすることも、過激主義に該当する。(中略)

 質問を慎重に重ねることで、何を言えるかではなく何を言えないかを通じて、多くを明らかにしてもらった。

 私はすでに8カ月間入所しているという男性に、ここから何人が『卒業する』のを見たか聞いた。少し間をあけてから、男性が答えた。『それについては、まったく分からない』。

 民族と信仰を理由に100万人以上を拘束しているとされる大量強制収容所の巨大システムの内部から出た、一つの声に過ぎない。

 どれだけ弱く、か細い声だろうと、その声は何かを言おうとしているのかもしれない。その内容は何なのか、私たちは注意して耳を傾けるべきだ」 (c) BBC News。

 

 「倫理性に最も疑問がもたれているのは、中国では、適合するドナーが現れるまで、数日から数週間しかかからないことだ。他の臓器提供システムが確立している国で通常、数年~十数年かかる。この問題を追及する複数の海外のメディアや研究者が、臓器移植病院に問い合わせると、わずか数日で“健康な臓器”が入手できるとの回答を得ている。

 公聴会で議員から、強制臓器摘出の主な標的について質問があった。李氏は、法輪功修煉者が中国全土で弾圧を受け拘禁されているため、最も被害を受けていると述べた。

 人権弁護士デービッド・マタス氏は、2016年発表の報告書で、『法輪功は酒やタバコをせず、気功を通じて健康な身体を保っている。受刑者はしばしば不摂生な生活習慣により内臓が健康な状態ではない場合がある。収監者のなかでも、法輪功学習者は“ドナー”に適している』と書いている。

 人権団体『脅かされた人々のための社会』代表でアジア問題専門家のウルリッチ・デリウス氏は、中国で法輪功学習者は20年にわたり残忍に弾圧されており、確認できているだけで、4300人あまりが迫害で死亡したと述べた」(2019年5月8日、ドイツ連邦議会の人権人道支援委員会・中国で行われている少数民族と宗教団体への迫害に関する公聴会)。

 

 「1999年、当時の江沢民国家主席法輪功に対する迫害を発動した。法輪功のほか、地下教会のキリスト教信者、ウイグル族チベット人など、いくつかの信仰文化に関連する活動は厳しく統制されている。中国当局からみれば、信仰を持つ者を共産党イデオロギーに従わせることは難しい。党は彼らを体制維持の不安定要素とみなし、拘束や連行、洗脳など強制的な手段で信仰を放棄させようとしている」(文・明慧ネット/翻訳編集・佐渡道世)。

 

 数少ない反ナチ運動家の一人だったマルティン・ニーメラーの言葉から生まれた詩を借用すれば・・・

 

中国共産党が最初、法輪功学習者を攻撃したとき
あなたは声をあげなかった
あなたは法輪功学習者ではなかったから
中国共産党ウイグル人を連行して行ったとき
あなたは声をあげなかった
あなたはウイグル人ではなかったから
そして中国共産党があなたを攻撃したとき
あなたのために声を上げる者は誰一人残っていなかった