断章34

 「インターネット百科事典“ウィキペディア”を運営する米国の非営利組織、ウィキメディア財団は5月18日までに、中国で全面的にウィキペディアの利用ができなくなったと発表した。これまでも日本語や中国語は利用できなかったが、海外の中国語メディアなどによると、4月下旬までに英語版などのアクセスも遮断された。(中略)

 中国当局は治安維持を目的に“ネットの長城”と呼ばれるネット監視システム“金盾工程”を構築している。2009年にはチベット族ウイグル族の抗議活動などに関する動画などを掲載したとして米動画サイトのユーチューブ、米フェイスブック、米ツイッターの利用をできなくした。

 2010年には検閲を巡って中国当局と対立した米グーグルの検索サービスの利用もできなくなった。中国政府は2017年にビッグデータの持ち出し規制などを盛り込みネット空間の統制を強めたインターネット安全法を施行し、日本のヤフーの検索サービスも使えないようにした。

 中国当局は外国のネットサービスの多くを排除したうえで、中国国内のネットメディアや交流サイト(SNS)の運営企業には24時間体制で掲載内容を厳しくチェックする体制を構築させている。中国共産党や政府への批判を押さえ込み、ネットがけん引する国内世論への統制を強めている」(2019/6/4 日本経済新聞)。

 

 日本人は、「この30年で中国は我々の想像をはるかに超えて、強くなり、豊かになったが、中国の人達にとってそれは幸せなことだったのだろうか。週末の銀座を闊歩する中国人観光客を見るといつも思うのだ。いくらお金があっても、政治的な自由がなく、言論の自由もない国、決して民主化されない国に住むことは苦痛ではないのだろうか」(平井 文夫)と思慮している。

 

 しかし、「中国の50歳以上の人は文化大革命のことをよく覚えている。無秩序と混乱がいかに多くの命を奪ったかを知っている。共産党独裁であっても、『安定』をもたらすならば、それに代わる大事なものはないと考えている。それ以下の世代も、生活が年々良くなってきていること自体は評価している。1978年に改革開放政策が始まってから40年。500万人以上が海外留学をし、300万人以上が帰国したという中国の報道がある。中国から海外に向かう旅行者は2018年、1億4千万人に上った。海外に行って海外の良さを知り、中国は変わらなければならないと思う人の数は“減っている”。中国の生活水準も向上しているし、欧米に昔の輝きはない」(宮本 雄二)のだから、ということだろうか。

 

 あるいは、「彼らには自由への希求が希薄であるということも、もはや否定できない事実となってしまった。第二次大戦後の日本人は、勤労も自由も人間に素質として備わっていると思いがちであるが、世界の多くの人々が“働くのがいやで、長いものに巻かれたい”のである。・・・なんとか勤労してみようという人々は、資本主義はできるが民主主義ができない国民となり、働くのもいやで長いものに巻かれたい人々は、資本主義も民主主義もできない国民となった」(古田 博司)ということなのだろうか。

 

 間違いなく確かなことは、「沖縄県尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域で6月8日、中国海警局の船4隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認した。尖閣周辺で中国当局の船が確認されるのは58日連続。2012年9月の尖閣諸島国有化以降で、過去最長の連続日数を更新した」(読売新聞 6/9)ということである。