断章30

 この世には、諸個人の意思や願望によっては動かすことのできない法則が存在する。

 

 今、日本人が享受している平和、自由、所得、福祉が、永遠に続くものと信じてはいないだろうか。それらは、いつも当然のようにあるものと考えてはいないだろうか。

 日本列島には、古典的な景気循環論のキチン循環、ジュグラー循環、クズネッツ循環、コンドラチェフ循環のように、およそ400年毎、100年毎とかで、列島を揺るがす大震災が必ず襲来する。

 

 「1995年1月17日、兵庫県・淡路島北部を震源にした地震が起き、兵庫県を中心に大きな被害が出た。戦後初めて大都市を直下からおそった地震で、神戸市などで震度7が初めて適用された。

 約25万棟の住宅が全半壊し、6434人が犠牲になった。古い木造住宅に被害が集中し、地震そのもので“直接死”した人の約8割が建物や家具の下敷きになったと言われている。時間がたって亡くなる“災害(震災)関連死”もあった。避難生活で体調をくずしたり、入院中に治療が中断したりして、900人以上が命を落とした。大けがで後遺症が残った震災障害者と言われる人も少なくとも約350人」(朝日新聞デジタル)。

 

 東日本大震災は、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による災害およびこれに伴う東京電力・福島原子力発電所事故による災害である。

 「人的被害は、死者 1万9475人、行方不明者 2587人、負傷者 6221人。建物被害は、全壊 12万1744棟、半壊 27万9107棟、一部破損 74万4328棟。地震に伴い 330件の火災が発生した。鉄道や道路、港湾、空港が広域で損壊し、東京湾埋立地などでは液状化が起こった。福島県東京電力福島第一原子力発電所と同福島第二原子力発電所は、地震後に原子炉が冷却できなくなる事態に陥り、周辺地域に避難指示が出された。福島第一原発では炉心溶融メルトダウン)が起こり、周辺地域には放射性物質が飛散、水道水や農水産物を汚染した。停電、ガス供給停止、断水、電話不通などライフラインへの被害も多大であった」(コトバンク)。

 

 「世界で発生する地震の10分の1が集中する日本・・・明治期までさかのぼれば、ほぼ10年に一度の頻度で、千人以上が犠牲になる震災が発生しています」

 「2013年に内閣府がまとめた首都直下地震による被害想定では、・・・M7.3の地震が都心南部直下のフィリピン海プレート内部で起きた場合、最大で2万3千人の死者が出るとしています。直接・間接の経済的損失は約95兆円以上・・・これは国家予算並みの金額です」(平田  直)。

 

 “備えあれば憂いなし”である。

 「先の東日本大震災でも・・・他の自治体に比べて、格段に死者・行方不明者の少なかった村がある。普代村。(中略)普代村の事例にはいくつもの教訓が含まれる。和村(ワムラ)元村長のように、献身的に地元のために働くことをいとわないリーダーがいること。自然は想定外と考え、防災設計では、過去の災害の強度を参考にして、お金や人間の都合で安易な妥協はしないこと。人工の防災設備を運用する人間の技や志が維持されていること」(『天災から日本史を読みなおす』磯田 道史)などが必要である。

 

【補】

 「政府の地震調査委員会は24日、将来の発生が懸念される南海トラフ地震で西日本から東日本の各地を襲う津波の確率を公表した。太平洋側や瀬戸内の352市区町村のそれぞれについて、3~10メートル以上の津波が押し寄せる確率を『30年以内に26%以上』などと計算した。これまでは最も高い津波への警戒を呼びかけており、高さごとに地域別の確率を示すのは初めて。行政や企業、個人の備えを強く促す狙いだ」(2020/01/24 日本経済新聞)。