断章24

 5月2日のCNNは、「中国では昨年8月以来、名門の北京大学の学生を含め、左派系の学生が全土で相次いで拘束されている。いずれも各地で労働運動にかかわっていたと思われる。

 中国政府はデモを組織しようとする動きや反体制的とみなす行動を支持する動きに対して神経をとがらせる。メーデーは他国では労働組合によるパレードやデモが行われるが、中国では一般的な休日とみなされている。

 北京大学マルクス主義団体の代表を務めていたチウ・シャンフアンさんはソーシャルメディアで4月28日、北京郊外にある出稼ぎ労働者の求職の場へ出かける予定だと明らかにしていた。

 チウさんは、メーデーの休日を利用して普通の労働者と一緒に働きたいと説明する一方、政府にはよく思われないかもしれないと述べ、『もしこうした肉体労働をすることによって私が失踪したら、誰の仕業かはみんなが分かっている』と書き込んでいた。

 28日、ほかの4人の学生と一緒に歩いていたチウさんは、6人の私服警官に後を付けられているとして写真を投稿した。これを最後に投稿は途絶え、活動家団体は、メンバー5人が行方不明になったと発表した」と伝えている。

 

 世間知らずのウブな(ナイーブな)人間、あるいは判断力の衰えている人間は、詐欺師のウソを見抜くことができない。羊頭狗肉にだまされ、「オレオレ」にだまされる。

 「言葉、看板、宣伝」が、そのまま「現実、実際、本当」であると思うのだから、詐欺師のいいカモになるのである。

 

 「羊頭狗肉とは、看板は上等でも、実際に売る品物がごまかし物で劣悪であること、転じて、見せかけや触れ込みはりっぱでも、実質が伴わないことをいう」(『日本大百科全書』)

 

 ある国が、「私たちの国は社会主義です」「私たちの国では労働者が主人公です」「私たちの国は地上の楽園です」といえば、コロッとだまされる。

 「美辞麗句」にだまされるのか、洗脳されているのかは知らないが、いまだに、中国共産党北朝鮮金王朝の代弁者になりたい日本人もいる。

 

 それらの国々の「言葉、看板、宣伝」ではなくて、その「現実、実際、本当」を見るなら、それらの国々すべてが、(全体主義的な)「国家」としてはありふれたもの、その経済は統制された(あるいは未熟な)「資本主義」にすぎないことが分かるのである。

 

 それが、共産党が支配する「社会主義国家」で、なぜ、このようなことがまかりとおるのかを理解し、中ソ対立・中越戦争などのいわゆる「社会主義国家間戦争」を理解し、なぜ自称「社会主義国家」で深刻な民族弾圧、宗教弾圧、言論弾圧などの人権侵害があるのかを誤りなく理解するための鍵である。

 

 中国の庶民が又、「お上のことは信用していないが、食えているからそれでよい。エリート学生たちの運動に関わって酷い目にあいたくない」と思えば、この学生たちの運動も潰えてまた長い沈黙の時が続くだろう。香港の自由も危うい。しかし、肌に刻み込まれた自由への渇望があるかぎり、自由のために戦う志士が必ずまた登場することは、歴史の教えるところである。

 

 「広々とした天下を住処となし、天下の正位置に立って、大道を踏み行なう。志を得れば民とともにこれを行い、志を得なければ独りでその道を踏み行なう。富貴も彼を頽廃させることはできないし、貧賤も心変わりさせることはできないし、武威を以てしても屈服させることはできない」(『孟子』)。