断章21

 韓国・文在寅政権が掲げる「人権主義」「人道主義」は、ご都合主義の宣伝(プロパガンダ)である。韓国・文在寅政権は、ダブルスタンダードの偽善者である。白く塗った墓である。

 

 だから、朝鮮戦争・天安艦爆沈・西海砲撃戦などの戦争犯罪に次々と手を染め、核とミサイルの開発と核恫喝を繰り返し、おぞましい人権抑圧(拷問・処刑・強制収容所)を行う三代世襲の「北朝鮮」に対しては、口を閉ざし目をつむって熱い抱擁を交わし野合する一方で、日本に対しては「人権」「人道」を盾に謝罪と賠償を強要するのである。

 

 数百万人を殺した北朝鮮への謝罪要求や賠償請求をしないだけではない。今なお執拗に、開城工業団地金剛山観光を再開して北朝鮮に年間1億5000万ドル(約163憶円)の儲けをもたらそうと試みている。「北朝鮮」による最大の戦争被害国が「北朝鮮」に救いの手を差し伸べているのである。

 

 米ブルームバーグ通信は文大統領について「金正恩氏の首席報道官」と皮肉り、ニューヨークタイムズ紙も「金正恩氏にとって文大統領ほどの優れた代理人はいない」と指摘した。

 

 また、アメリ国務省『人権報告書』によれば、「韓国政府は北朝鮮との対話に乗り出す一方で、(韓国内の)各脱北者団体は韓国政府から北朝鮮非難をやめるよう直接・間接的に圧力を掛けられている」「例えば20年続いた脱北者協会への資金支援を取りやめ、北朝鮮へのビラ飛ばし団体の取り組みを阻止し、警察が(これらの北朝鮮人権)団体を尋ねて金融・行政関連情報を出すよう要請したことが分かった」と具体的事例を挙げた。韓国に居住する3万人の脱北者は、金正恩氏ではなく文大統領がいる韓国で息を殺しながら生活している。

 

 米国の北朝鮮人権運動家として知られる北朝鮮自由連合のスーザン・ショルティ代表は4月26日「太陽政策北朝鮮への宥和政策)を行った金大中政権や盧武鉉政権でも一部の北朝鮮人権団体を支援した。ところが、文在寅ムン・ジェイン)政権では脱北者が行う人権関連の活動に対する支援が全て削減された」と指摘した。
 4月28日から来月4日まで米ワシントンなどで開かれる「2019北朝鮮自由週間」を前に、ショルティ氏は書面でのインタビューに応じ上記のように主張した。1996年から北朝鮮の人権問題に取り組んできたショルティ氏は脱北者たちから「北朝鮮人権運動の代母」と呼ばれている。
 これに先立ちショルティ氏は韓国の北朝鮮人権団体に送った電子メールの中で「北朝鮮の人権のための戦いは今ソウルで起こっている」と指摘したが、これについてショルティ氏は「北朝鮮の実情と韓国における自由のいずれも体験した脱北者たちこそ、北朝鮮の人権問題について最も効果的な主張ができる。しかし文在寅政権は逆に彼らの活動を妨害し、逆行している」との考えを示した。

 

 「4月末に米国で開かれる『北朝鮮自由週間』と題するイベントに参加する韓国内の北朝鮮人権団体は最近、紆余曲折の揚げ句、ようやく米国行きの航空チケット代を用意した。毎年4月末にソウルとワシントンを行き交いながら開催される同行事のために費用を支援してきた韓国統一部が、先月突然『支援は不可』との態度を示したことで、ユーチューブなどを通じて辛くも費用を募ったのだ。北朝鮮人権運動の父と呼ばれる自由北朝鮮放送のキム・ソンミン代表に、イベントが『白紙化』される危機を辛うじて乗り切った感想について質問すると、『首の皮一枚つなぎ止めました』と言いながら、政府に対するもどかしさを表現した」(韓国紙)。

 「北朝鮮の人権について知らせる行為を、政府がここまで煙たく思っているとは知りませんでした。金氏政権の暴政を避け、死線を越えてきた脱北者たちは、今後何を頼りに生きていけばいいんでしょうか」と語ったのである。

 

 米国外交協会のスコット・スナイダー氏は4月27日米国のラジオ放送「ボイス・オブ・アメリカ」の対談番組に出演し「韓国で(北朝鮮の)人権問題を取り巻く政治的な状況は本当におかしい」「国際社会がやっていることとは正反対だ」などと指摘した。その上でスナイダー氏は「一般的に国際社会において進歩陣営は人権問題に力を入れる。(ところが韓国では)進歩陣営が政権を握っても北朝鮮の人権問題に取り組まないから、このような(おかしな)現象が起こる」と述べた。
スナイダー氏はさらに「韓国政府が北朝鮮の(人権)問題に最も力を入れていたのは、前政権が北朝鮮人権法を成立させた時だ」「ところが文在寅ムン・ジェイン)政権ではこの法律がまともに機能していない」との見方も示した。「これは北朝鮮人権法に基づいてすでに発足しているはずの北朝鮮人権財団が、与党・共に民主党が理事の推薦を先送りしているため今も活動しておらず、文在寅政権になってからは北朝鮮人権財団に対する様々な支援もストップしてしまった」(韓国紙)。 

 

 また、韓国統一部(省に相当)が発行する2019年度版の「統一白書」では「南北対話」ばかりが強調され、北朝鮮の人権に関する部分は大幅に減らされていたことが3月21日までに分かった。米国をはじめとする国際社会は北朝鮮の人権問題を深刻に受け止めているが、韓国は北朝鮮の顔色をうかがいこの問題から顔を背けている。

 

 「国境なき記者団」は3月22日、韓国与党・共に民主党が米ブルームバーグ通信の記者を実名で非難したことについて「(かつて人権派弁護士だった)文在寅大統領が公の場で共に民主党の論評を批判すべきだ」とする声明を発表した。この問題で沈黙を守っている文大統領に対し、言論の自由を守るために直接の行動を促した。「共に民主党の議長に相当する文大統領はこの問題でのコメントを拒否している」と批判した。

別の外信記者は、「北朝鮮官営メディアが2017年に共和国の尊厳を冒涜したと韓国の記者達を名指しにし、極刑に処すると報じた。(文在寅政権与党の)共に民主党の報道官はブルームバーグの記者が国家と民族を裏切ったと言った。直接的(北朝鮮)、間接的に(民主党)、他の記者も脅威を感じ自己検閲をするようにさせようということだ」と言っている。

 

 文在寅政権の与党である「共に民主党」には、どんな連中がいるのだろうか?

 「共に民主党のパク・チョン議員や京畿道坡州市のチェ・ジョンファン市長らが3月25日、中国の坡州市内で朝鮮人民軍中共軍の戦死者を追悼する行事に出席していた事実が最近明らかになった。パク議員は3月22日に朝鮮人民軍の軍事挑発で犠牲となった将兵らを追悼する『西海(黄海)守護の日』記念式展には出席しなかったが、一方で朝鮮人民軍の戦死者を追悼する行事には出席していた」(韓国紙)というのである。

 あるいは、文在寅大統領の信頼が厚く、「文氏の口」と呼ばれた韓国大統領府の金宜謙報道官は3月29日、官舎に住みながら投機目的で高額のビルを買い入れた疑惑を受けて辞意を表明した。金氏は28日の資産公開でソウル市内の再開発区域にあるビルの購入が判明。疑惑発覚から1日で辞任を公表し、政権へのダメージを抑えた形だ。

 「最近、このような人々のことを指す『進歩ジジイ』という新語が登場した。辞任した大統領府報道官がその典型だ。口では『正義』『公正』『平等』と言いながら、裏では特別待遇だと疑われてもおかしくない銀行融資を受けて不動産投機をしていた」(韓国紙)。(金氏は左派系新聞社「ハンギョレ」で社会部長などを歴任し、昨年2月に報道官に就任)。

 

 「『韓国における言論の自由のための連合』は4月29日、ホームページを通じて文大統領に送った英文の書簡を公開した。書簡には南北関係や北朝鮮の人権問題と関連する活動に力を入れてきた保守系の識者20人が名前を連ねた。
 書簡には『前政権においても言論機関を名誉毀損で告訴するケースはあったが、今も表現の自由とは両立しない出来事が起こっている』と指摘した。その具体的な事例として昨年10月に韓国与党・共に民主党議員らがグーグル・コリアに104の映像削除を要請した問題、警察が現政権を風刺したポスターと関連して厳しい捜査を行ったことなどが問題視された。

 文大統領が大統領選挙前、自らを『共産主義者』と批判した高永宙(コ・ヨンジュ)元放送文化振興会理事長を名誉毀損で告訴し、損害賠償を求めたことも批判した。2014年に旅客船セウォル号』が沈没した際、朴槿恵(パク・クンヘ)前大統領の動きに疑惑を指摘した産経新聞の元ソウル支局長を検察が名誉毀損で起訴したが、当時野党の政治家だった文大統領が『(検察は)間違っている』と発言した事実も書簡では取り上げられた。米国の識者らは『当時、我々はあなた(文大統領)が正しいと考えた』とした上で『そのため文大統領と現政権が評論家や政治的反対勢力を検閲するため、同じ手段を使っていることに大きく失望している』と指摘した。識者らは文大統領に対し、名誉毀損で有罪判決を受けた人たちを赦免し、国会に対しては事実関係を取り上げたことによる名誉毀損の告訴などをやめるよう求めた」(朝鮮日報 5/6)。

 

 かつて「アメリカの要請を受けて韓国もベトナム戦争に出兵している。兵力は延べ37万人、最盛期には5万の兵力をベトナムに展開した。・・・韓国軍の『猛虎師団』がベトナムの民間人に対していかなる残虐行為を行ったのか、きちんと目をむけるべきだろう」(『ビジネスパーソンのための近現代史の読み方』)。

 ベトナム戦争に派遣された韓国軍兵士によるベトナム人女性へのレイプなどで生まれた「ライダイハン」と呼ばれる混血児の問題を追及するイギリス民間団体「ライダイハンのための正義」は2019年1月16日、英議会内で集会を開いた。参加したライダイハンの男性は、「慰安婦問題で日本を攻撃する韓国政府は、韓国人がベトナムで行った性暴力に頬かむりするな」と述べた。

 

 ベトナム戦民間人虐殺事件の真相究明を要求する声は、民間団体を中心に絶えず続いているが、韓国政府は未だに黙殺しており無返答である。

 

 これらが韓国・文在寅政権の、ダブルスタンダードであり、真の姿である。

 

【補】

 「『私たちは何の武器ももっておらず、何の抵抗もしなかった私たちの家族が韓国軍により殺害されるのを目撃し、韓国軍の銃と手榴弾を避けてかろうじて生き残りました。私たちは被害者であり、同時に目撃者であり生存者です』

 グエン・ティ・タンさん(59)は、韓国軍によるベトナム戦民間人虐殺被害者だ。満7歳の時にベトナムクアンナム省フォンニィ・フォンニャット村で、韓国軍に家族を奪われ左わき腹に銃弾を受けたが生き残った。その日一日だけで74人の村人が虐殺された。韓国軍は1964年9月から1972年までに31万2千人余りをベトナムに派兵したが、この期間の韓国軍によるベトナム民間人虐殺は80件余り、被害者数は9千人余りに達すると推測される。

 4月4日、グエン・ティ・タンさんを含む103人の被害者は、虐殺被害に対する真相調査と公式謝罪、被害回復措置を要求し、韓国政府に請願書を提出した。『数回の契機があったにもかかわらず、韓国政府は依然としてベトナム戦民間人虐殺の事実を認めておらず、謝罪や名誉回復のための措置もまったく取られていない』ということだ。(中略)

 公式回答期限の90日を遥かに過ぎた9月9日、国防部が一歩遅れて請願に対して答弁したが、・・・『韓国軍がなぜ自身の家族を殺したのか、なぜ私を撃ったのかを明らかにしてほしい』という被害者の要求を、韓国政府は公式に拒否した。(中略)

 『日本の植民地時代の不法行為に対して責任を問う中で堅持する被害者中心主義が、なぜベトナム戦争時代に韓国軍により被害をこうむったベトナムの人々には副次的なことになるのか』」(2019/9/27 韓国紙)。

 

【補】

 「国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチHRW)は11日、韓国政府が北朝鮮にビラを飛ばした二つの脱北者団体を刑事告発したことをめぐり、韓国政府は北朝鮮の脅しに『平身低頭』しており、人権派弁護士出身の文在寅ムン・ジェイン)大統領とその政権が北朝鮮人のために全く立ち上がろうとしないのは『恥ずべきこと』だと非難した。

 韓国統一省は11日、北朝鮮に向けて同国政府の人権侵害と核開発を批判する内容のビラを飛ばす行為をめぐり、二つの脱北者団体を刑事告発した。これに対しHRWは、北朝鮮の脅しに『平身低頭』しているとして韓国政府を非難した。HRWのフィル・ロバートソン・アジア局長代理は、『文大統領は、北朝鮮に向けてメッセージや物資を付けた風船を送る行為の全面的禁止を提案するのではなく、言論の自由を尊重し、検閲をやめるよう北朝鮮に対して公式に求めるべきだ』と訴えた。さらに、『文大統領とその同志たちは、韓国で人権を守る闘いにその人生とキャリアの大半を費やしてきた』『文大統領とその政権が、北朝鮮人の権利のために全く立ち上がろうとしないのは恥ずべきことだ』と指摘した。

 青瓦台(韓国大統領府)は今週、ビラ散布に『深い遺憾の意』を表し、そうした行為を『徹底的に取り締まる』方針を示していた。金有根(キム・ユグン)国家安保室第1次長はビラを飛ばす行為について、『朝鮮半島の平和と繁栄を実現する試み』の助けとはならず、違法だと述べた。北朝鮮は、韓国との軍事的・政治的な通信連絡線を完全に遮断すると発表するなど、ビラを飛ばす行為に強く反発している」(2020/06/12 AFPBB News)。